IBMの「脳」を模した超省電力チップ「TrueNorth」が着実に進化、ネズミの脳レベルに到達


IBMは人間の「脳」が持つ仕組みのニューラルネットワークをトレースするという、従来のコンピューターとはまったく違うメカニズムを持つプロセッサー「TrueNorth」を開発中です。このIBMの革新的コンピューターチップが持つ超高効率性能がスマートフォンやIoT端末に搭載されれば、モバイルコンピューティングの世界が一変しそうです。

IBM Research: Brain-inspired Chip
http://www.research.ibm.com/articles/brain-chip.shtml

IBM's 'Rodent Brain' Chip Could Make Our Phones Hyper-Smart | WIRED
http://www.wired.com/2015/08/ibms-rodent-brain-chip-make-phones-hyper-smart/

IBM has built a digital rat brain that could power tomorrow’s smartphones - Quartz
http://qz.com/481164/ibm-has-built-a-digital-rat-brain-that-could-power-tomorrows-smartphones/

現在のコンピューターはノイマン型と呼ばれる基本アーキテクチャを持ち、演算装置とメモリー間にデータ移動が必須となる構造で、このデータ移動が性能上のボトルネックになります。このノイマン型のボトルネックを解決するために、IBMはニューロンシナプスと呼ばれるシグナル伝達回路を持つ人間の「脳」に着目。ノイマン型コンピューターよりもはるかに省エネルギーで計算できる仕組みをトレースするように「脳模倣型」のまったく新しいコンピューターチップ「SyNAPSE(シナプス)」を開発し、2014年8月に発表しました。

これはSyNAPSEチップを搭載する開発ボード「NS1e」


2012年に公開された以下のムービーではSyNAPSEの技術的な着想について解説されています。

Cognitive Computing: The SyNAPSE Project - YouTube


その後、2014年に脳型コンピューター構想について公開したことは以下のとおり記事化済み。

IBMが人間の脳と同じ構造を持つプロセッサーの開発に成功 - GIGAZINE


2014年に発表された脳型チップは「TrueNorth」と名づけられ、チップ1個内にプログラム可能な100万個相当の「ニューロン」と2億5600万個相当の「シナプス」の性能を内包。2011年当初はシングルコアだったニューロシナプティックは、チップ1個内に4096コアを搭載し、「昆虫の脳」に匹敵する規模に達していました。


このTrueNorthを16個連結させることで「カエルの脳」相当に到達するとのこと。


そして、TrueNorth発表から約1年が経った2015年8月17日、IBMは最新の開発状況を公開。なんと、NS1eを連結させることで、約4800万個のニューロン、約123億個のシナプスを持つ「ネズミの脳」にまで進化させることに成功したことが報告されています。


TrueNorthを使うことで、例えば画像認識、言語翻訳、ディープラーニングなどの処理を高速かつ超省電力で実行できると期待されています。現在開発済みのTrueNorthは54億個のトランジスタを含み70mWで動作し、これはIntelのCPUはもちろんARMチップよりもはるかに省電力性能に優れているとのこと。人間の脳をヒントにした新たな構造のチップ「TrueNorth」によって、スマートフォンやIoT端末に劇的な進化がもたらされることになるのか、IBMの今後の開発動向には要注目です。

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