家庭用プリンタのビジネスモデル転換に挑むエプソンの大容量インクモデル戦略とは?


家庭用プリンターのビジネスモデルは、赤字覚悟でプリンター本体を販売して「血液よりも高い」価格の交換用インクで回収する、といういびつな構造で、格安のサードパーティ製交換インクの登場によりビジネスモデル自体がゆらぎつつあります。そんな中、業界大手のエプソンは、いびつなプリンタビジネスモデルを改革するべく、新たにメーカー純正の「大容量インクモデル」を投入しています。大容量インクモデル戦略とは何か、そこに勝算があるのかは、プリンター業界のみならずユーザーからも大きな注目を集めています。

Epson Transforms Printer Category with EcoTank
http://www.multivu.com/players/English/7221854-epson-ecotank-printers/

Review: Epson Kills the Printer Ink Cartridge - WSJ
http://www.wsj.com/articles/review-epson-kills-the-printer-ink-cartridge-1438683871

エプソンだけでなくキヤノン、HP、ブラザーなどのプリンターメーカーは、交換式カートリッジを売ることでプリンター本体を安価で販売することによる損失を回収し、さらに利益を上げるというビジネスモデルを採っていますが、サードパーティ製の格安交換式カートリッジやリフィル(詰め替え)技術の開発によって、近年、交換用インクから利益を回収できない事態に陥りつつあります。


プリンターメーカーは純正品以外のカートリッジを使えないようにする技術的手段を講じてきましたが、すぐにこれらの技術を回避するサードパーティ製カートリッジが現れ、また、特許侵害を訴えた法廷闘争でも敗れたため、サードパーティ製の格安インクの台頭を抑え込むことができなくなり、いびつなビジネスモデルの限界がささやかれつつあります。

中でもエプソンはプリンターヘッドにマイクロピエゾ技術を用いており、他メーカーのように熱を使わないため、プリンターヘッドの耐久性が高いという利点のため、非純正品の大容量交換インクを搭載する改造品が、新興国を中心に大人気となることで純正品インクの需要が落ち込むという、利点があだとなる事態に直面したとのこと。

このような状況に対して、なんとエプソンは、従来モデルよりもはるかに大容量のインクカートリッジを搭載した大容量インクモデルを投入して「交換インクの価格を劇的に下げる代わりにプリンターの本体価格を大幅に上げる」という従来のビジネスモデルを根底から覆す戦略を2010年にインドネシア市場で敢行しました。



従来品に比べるとランニングコストが良いとはいえ、大容量インクプリンターのインク代はサードパーティ製の格安インクに比べると約2倍であることや、プリンター本体の価格が従来品の2.5倍と高価なため、果たして売れるのかという疑問があったところ、当初の予想を覆して大ヒット。その理由は、インドネシアではビジネス用途でも家庭用プリンターが使われており、大容量インクプリンターはランニングコストが下がるだけでなく、非純正プリンター使用時のような故障のリスクが減り、交換回数を大幅に減らした上で大量の印刷が可能になったため。

インドネシア市場での成功を皮切りに、エプソンは本体価格は高いもののランニングコストが安くインク交換の回数も劇的に減る大容量インクモデルを新興国を中心に販売し、2014年には販売地域を世界140カ国以上にまで拡大させました。なお、ヨーロッパ諸国を含む先進国でも大容量インクモデルは販売されており、主要な市場で販売されていないのは日本とアメリカだけになりました。

そして、2015年8月4日、エプソンは北米市場に向けて大容量インクモデル「EcoTank」シリーズ5機種を投入することを発表しました。


EcoTankシリーズがどのようなプリンターなのかは以下のムービーで確認できます。

Introducing the All-New EcoTank All-in-One Supertank Printers - YouTube


これがEcoTankプリンター。側面に大きく出っ張った部分がインク充填部分です。


家庭用


SOHO


ビジネス用のモデルがあります。


EcoTankは2年間分のインクが付属している点が大きな特長。


白黒、カラーを問わず、A4サイズで数千枚の印刷が可能です。


インクが切れた場合、付属のインクでリフィル(詰め替え)が可能。


大容量モデルの場合、ビニール容器に入った詰め替え用インクに取り替えればOK。


EcoTankシリーズの家庭用モデル「ET-2550」は本体価格が400ドル(約5万円)、「ET-4550」が500ドル(約6万2000円)で2015年9月に発売予定。なお、EcoTankシリーズは詰め替えインクや詰め替えビニールボトルのパッケージは2年間分が52ドル(約6500円)で販売予定とのこと。プリンター本体を大切に使えば、毎年のようにプリンターを買い換える必要もなく、結果的にランニングコストは従来よりも安くなりそうです。

エプソンの大容量インクモデルプリンターならば、インクのためにプリンターを必要以上に買い替えることもなく、高品質な純正インクを長い目で見れば低価格で使えるため経済的と言えそうです。大容量インクモデルが日本市場に投入されるかどうかは、アメリカでのEcoTankシリーズの販売状況が大きく影響しそうですが、ランニングコストの低さもさることながら「純正品」の安心感を得られることから、日本でもビジネスチャンスは大いにありそう。他社がエプソンの戦略に追随するのかも含めて、今後のプリンター市場の動向には要注目です。

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