サイエンス

親から受け継いだ遺伝子は試験の結果にどう影響するのか?

by Jessica Lucia

学校における子どもの成績には遺伝子が関係していると知られていますが、では、実際にどのような科目について、どのような点で遺伝子が影響を与えているのか、新たに研究結果が発表されました。一般的には「親から遺伝した子どもの知能が成績に影響を与える」と考えられがちですが、今回の研究では知能以外の、親から遺伝した「やる気」や「性格」が成績に大きく影響することが判明しています。

Pleiotropy across academic subjects at the end of compulsory education : Scientific Reports : Nature Publishing Group
http://www.nature.com/srep/2015/150723/srep11713/full/srep11713.html

Your inherited genes control your IQ, and may affect how well you do at exams, too | Ars Technica UK
http://arstechnica.co.uk/science/2015/07/your-inherited-genes-control-your-iq-and-may-affect-how-well-you-do-at-exams-too/

今回の研究は双子を対象とした非常な大規模なもの。同じ環境で育った「双子」は、一卵性双生児であっても二卵性双生児であっても環境が結果に影響を与える割合が少ないため、行動遺伝学の分野ではよく被験者に選ばれます。この時、もし試験の結果について一卵性双生児の方が二卵性双生児よりも似通っていれば「遺伝子の影響が大きい」という意味になるのですが、「一卵性双生児の双子は二卵性双生児の双子に比べて扱われ方が似通っている」という批判も存在するため、今回の研究は、双子に加えて赤の他人のDNAも調査の対象としました。

研究者らは一卵性双生児の双子を2245組、二卵性双生児の双子を4071組、赤の他人7432人を被験者として調査を実施。イギリスの全国統一試験制度(GCSE)の結果に環境と遺伝子がどう影響したのかを調べました。

by Eddy Van 3000

調査の結果、双子の場合、試験の結果に遺伝子が影響する割合は54%~65%で、環境による影響は14~21%、その人特有の経験や特殊な環境による影響は14~32%であることが判明。科目によって影響の度合いは異なりますが、全ての分野において遺伝子による影響がかなり見られた、とのこと。「数学は芸術よりも遺伝子の影響が大きい」といった傾向も判明しています。

また、試験結果は高い割合で生徒のIQスコアと関係していることが判明したため、研究者らは生徒の知能が試験結果に与えた影響の大きさについても調べました。そして本人の知能が成績に与える影響を結果から排除したところ、遺伝子全体が与える影響は少し変化したものの、本質的には大きな役割を果たしていたとのこと。つまり、親から遺伝した知能は子どもの成績に影響を与えていましたが、知能以外の「遺伝による要素」も子どもの試験の成績に大きく関わっていたというわけです。

by alicejamieson

総合して見ると、知能以外の、親から遺伝したやる気や性格、心の健康さといった要素が、成績の差の45~58%を説明できると考えられています。環境を共に育ってきた双子の場合、英語や数学など特定の教科について言えば、この割合はさらに大きくなります。一方、赤の他人を対象とした調査の結果は、双子を対象としたものよりも関連性が小さくなりましたが、数学・英語・科学といった科目に対する遺伝の影響は確認されました。

今回の研究で注目すべき点は、過去の研究で主張されてきたように、「知能だけが勉強の成績に影響する遺伝的特性」ではないということ。知能以外の、やる気や性格などに見られる遺伝的な要素が重要な役割を果たしているわけです。何かを選択するに当たって、子どもたちがなぜそれを選び、世界で起こることをどう解釈するのか、という点に遺伝による要素が大きく現れるのです。

また、「ある子どもは十分な栄養を取って育ち、別の子どもは飢えながら育つ」といった環境の場合、子どもが将来的に高身長になるか低身長になるかは環境によるところが多くなります。しかし、全ての人が十分な栄養を取って育っていった場合、各個人の身長差は遺伝子の影響するところが大きくなります。つまり、子どもの成績において遺伝子の影響が大きい、ということは、裏を返せば子どもの育つ環境が全体的に整っていると言えるわけです。よって、今回の研究はイギリスで行われたわけですが、この結果が全ての国の子どもたちについて適用できるわけではないことに注意。国によって子どもたちが育つ生活環境はさまざまだからです。

by {bathe in light}

今回の研究による発見は教育プログラムの改良に役立つものと見られていますが、研究者の中には「この結果は興味深いが、決定的なものではないし、今回のデータをもとに教育的決定を行うのはばかげている」と語る人も存在します。また、キングス・カレッジ・ロンドンで遺伝疫学を研究するティモシー・スペクター教授は「残念ながら、遺伝子の影響を示す研究は拡大解釈されやすく、運命は変えられないという誤った認識を生み出します」と懸念を示しました。

・関連記事
IQを向上させる方法 - GIGAZINE

家庭環境が子どものIQを押し上げることが研究で明らかに - GIGAZINE

IQテストでは決断力や意志決定に影響する合理的思考力は測れないことが判明 - GIGAZINE

不安や心配は高いIQとリンクしているという調査結果が明らかに - GIGAZINE

職業別のIQの分布はどうなっているのか - GIGAZINE

人間の知能は昔と比べて本当に進化しているのか? - GIGAZINE

知能を高める5つの方法 - GIGAZINE

家計収入によって脳の構造が変化して学業成績に影響することが明らかに - GIGAZINE

長男・長女が優れた成績を残しやすい理由かもしれない6つの理論 - GIGAZINE

学校のスマホ禁止が学力向上に影響を与えることが判明、週1時間の学習時間にも匹敵 - GIGAZINE

22カ国の学校を回った僕が日本の教育現場ですべきたった1つのこと - GIGAZINE

1万時間勉強するより効果的な学習方法とは? - GIGAZINE

勉強中にスマホが鳴ったらチェックするべきなのか無視するべきなのか - GIGAZINE

学習するときにとても大切な6つのこと - GIGAZINE

ひとりで勉強するには本当はどうすれば一番効果的なのか? - GIGAZINE

in サイエンス, Posted by logq_fa