メモ

TPPの著作権関連の改変でアクセシビリティが著しく損なわれることになるとEFFが声明を発表

by GlobalTradeWatch

アジア太平洋地域において高い自由化を目標とし、非関税分野や新しい貿易課題を含む包括的な協定」として現在12カ国で交渉が行われている環太平洋パートナーシップ(TPP)協定。その交渉の最終段階として、ハワイで閣僚会合が始まりましたが、TPPで著作権に関する決まり事が変わることで、コンテンツへのアクセシビリティが大きく損なわれると電子フロンティア財団(EFF)が懸念を示しています。

TPP Undermines User Control and That's Disastrous for Accessibility | Electronic Frontier Foundation
https://www.eff.org/deeplinks/2015/07/tpp-undermines-user-control-and-thats-disastrous-accessibility


TPP交渉では貿易・医療・環境などの分野のほか、「著作権(知的財産)」の分野でも話が進められています。今は各国で著作権が親告罪か否か、保護期間は何年かという部分で差がありますが、これを統一しようという話です。

すでに交渉は大詰めで、著作権保護期間は著作権者の死後70年になること、著作権侵害は著作権者の訴えなしに捜査当局や一般人でも訴えられる非親告罪になること、という方針であることが報じられています。

TPP:「著作権」決着へ 「死後70年」と「非親告罪」 - 毎日新聞
http://mainichi.jp/select/news/20150728k0000m020060000c.html

こうした動きは著作権の保護強化を目指すものですが、EFFによると、保護強化によって身体障害者が大きな被害を受けることになるとのこと。

本・映画・ソフトウェアなどの制作・販売をしている会社は、コンテンツを身体障害者が扱えるかどうか、代替フォーマットはあるかという点をあまり考慮していません。本の場合、世界盲人連合が「本不足」と表現するように、世界で出版されている本のうち、視覚障害者や読字障害者(印刷物・印刷された字を読むことができない)でも読める、アクセシブルなフォーマットで作られている本はわずか5%に満たず、それらのうち貧しい国でも手に入るものは1%未満しかありません。また、アクセシブルなフォーマットであったとしても、統一形式が存在しないため、海外のものは利用できないということも多々あるそうです。

映画だとDVDやBlu-rayで字幕がついていれば聴覚障害者でも話がわかるようになるのですが、「文字が小さいから大きくしたい」と思っても、DRMによって出力が制限されているため、目的を果たすことができません。

そこで、世界知的所有権機関では、障害者が知識にアクセスできなくなるということのないように、2013年6月に「盲人、視覚障害者及び読字障害者の出版物へのアクセス促進のためのマラケシュ条約」を採択しました。これは「本のバリアフリー化」に向けての歴史的な条約で、個人および認可組織は、条約のもと、著作物をアクセシブルな形式にするための必要な変更を行うことができ、受益者のみが活用できることを前提に、著作者の許可なしでも複製が認められることになりました。

[プレスリリース] 歴史的な条約を採択。世界の視覚障害者の書籍へのアクセスを加速。
http://www.wipo.int/about-wipo/ja/offices/japan/news/2013/news_0036.html


しかし、強力なロビー活動が展開され、マラケシュ条約では映画やゲームなどの「オーディオビジュアル」関連が対象から省かれました。言い換えると、聴覚障害者はコンテンツへのアクセスをブロックされたということです。TPPの成立は、それに追い打ちをかけるようなものだというわけです。

TPPの真に危険なポイントは、より著作権者寄りな環境が作られることと、それによって公益から遠ざかることであるとEFFは指摘。マラケシュ条約は「著作物の変更を行える」というアクセシビリティの例外を勝ち取るために、視覚障害者以外が犠牲になるような形になっていますが、著作権が生み出す障壁から人々の権利を守るにはマラケシュ条約だけでは不十分なのが実情です。

TPPの著作権分野の内容が、ここまで来てひっくり返ることはなさそうですが、非親告罪化によって韓国では「謝罪金ビジネス」が生まれたという話もあり、コミケを含む二次創作物の扱いも気になるところ。

著作権法違反をネタにした「謝罪金請求」が多発、告訴爆弾に歯止めをかけろ!《趙 章恩「Korea on the Web」》
http://pc.nikkeibp.co.jp/article/column/20090306/1012908/


障害者のためのアクセシビリティが考慮されないままに話が進められているという点も含めて、しばらくニュースからは目が離せません。

・関連記事
TPPで著作権の保護が20年延長されると何が失われてしまうのか? - GIGAZINE

TPPの資料がまた流出、アメリカが著作権に関する戦慄の提案を推し進めていることが明らかに - GIGAZINE

「星の王子さま」や「叫び」など2015年に著作権が消滅してパブリックドメインになる作者まとめ - GIGAZINE

「ミッキーマウス」の著作権を守るため、これまでどのような著作権法の変更が行われてきたのか? - GIGAZINE

「サルによる写真には著作権は存在せず」との判断、カメラマンは窮地に - GIGAZINE

in メモ, Posted by logc_nt