取材

富士山でもスマホでネットを可能にするLTE対策の現場最前線を登って見に行ってきました


例年7月になると富士山では山開きが行われ、日本はもとより世界中から多くの観光客や登山者が富士山を訪れます。多くの人が集まれば、いまやほとんどの人が手にしているスマートフォンや携帯電話の通信需要もおのずから増大することになるもの。今回は、KDDIが富士山の登山道や山頂で実施しているエリア対策がどのようになっているのか、また環境保全のために行われている取り組みはどんなものなのか、実際に自分の足で山頂を目指しつつその実態を見てくることにしました。

富士山頂における受信最大150MbpsのLTE対応について~日本一高い場所で日本最速のLTE通信が可能に~ | スマートフォン・携帯電話 | au
http://www.au.kddi.com/information/topic/mobile/20140701-01.html

富士山に登り始める前に、静岡側・御殿場ルートの拠点となる御殿場口新五合目に開設されている「Mt.FUJI TRAIL STATION(マウントフジ トレイルステーション:トレステ)」に立ち寄りました。唯一マイカー規制がない富士山の登山口である御殿場口新五合目にオープンしているこのトレステでは山の情報を仕入れたり、登山の際に重宝するチョコレートモバイルバッテリーをゲットできるキャンペーンを実施しているとのことです。


トレステは、富士山の山開きが行われている期間中のオープンということで、2015年は7月10日(金)から9月6日(日)まで利用することができます。


エリア内にはいくつかの小屋やコンテナを利用した建物が設置されています。


御殿場のわらじ祭りで、みこしがわりに使われる巨大なわらじも展示されていました。


◆「富士山保全協力金」を支払ってスマホに使えるモバイルバッテリーをゲット
トレステでは、窓口で富士山保全協力金として1000円を支払った人を対象に、KDDIの提供のもとスマートフォンなどの充電に使えるモバイルバッテリーを配布しています。これは、美しい富士山を後世に残すためにのスローガンのもとに富士山の環境保全や登山者の安全対策等を目的として、2014年より実施されている制度とのこと。


ということで1000円を窓口で支払い、係員さんから領収書とガイドブック、バッジなどを受け取ります。


ゲットしたのは、保全協力金支払いを証明する布シールと缶バッジ、そしてスタンプ帳にもなる「構成資産めぐりガイドブック」。


ガイドブックには、各ポイントに置かれているスタンプを押していくことが可能。


そして、受け取った領収証をトレステの窓口で渡すと……


乾電池式のモバイルバッテリーと、接続用のケーブルをゲット。乾電池式なので、新しい電池さえ入れればいつでも充電が可能なほか、特にiPhoneユーザーの場合は協力金と引き替えにlightningケーブルをゲットできるので魅力的なハズ。


さらに、auスマートパスの会員を対象に、窓口でガーナチョコレートをゲットできるキャンペーンも実施されているので、該当する人は訪れておいたほうが良さそうです。


◆「TRAVEL JAPAN Wi-Fi」サービス
世界文化遺産に登録されたこともあり、富士山には海外からの訪問客の姿を多く見ることができます。そんな訪日客の利便性のために、トレステおよび富士山頂では専用のアプリを使うことで無料でWi-Fiを利用することができるTRAVEL JAPAN Wi-Fiの提供が行われています。


海外旅行に行った事がある人ならば、渡航先での無線Wi-Fiのありがたみは身にしみて感じている人も多いハズ。TRAVEL JAPAN Wi-Fiは訪日外国人向けのサービスということもあり、日本人ユーザーにはどうしてもなじみが薄いものですが、旅行先で感じられるありがたさを訪日客向けに提供しているという意味で日本の魅力を後押しするサービスということができそうです。


専用アプリを使うメリットは、面倒なSSIDなどの設定を一切気にすることなく、日本全国にある24万か所のWi-Fiスポットを無料でカンタンに接続できる点にあります。さらに、アプリには以下のようにスポット周辺の観光情報を表示する機能も搭載されているので、情報収集にも役立つとのこと。もちろん「情報は自分で探すよ」というユーザーでも、アプリでWi-Fiに接続すればネットを使い放題になるのでデメリットはないとのこと。


なお、TRAVEL JAPAN Wi-Fiの利用には専用アプリをインストールしておく必要があるということで、一部には「アプリを落とすのに、まずネット接続が必要じゃないか!」という矛盾を指摘する声があるのも事実。しかしそんな場合でも、トレステでは全国20万か所以上のWi2のWi-Fiスポットを利用できる「Wi2 300 ワンタイム(1Day)」チケットを無償で配布しているので、まずアプリを落とすためにWi2のWi-Fiを利用し、アプリをゲットした後はTRAVEL JAPAN Wi-Fiに乗り換えるという使い方ができるようになっています。


2段階で設定する必要があるので少し手間がかかる側面があることは否めませんが、訪日客の利便性を整えるための取り組みということになりそうです。


という説明を聞いていたら、まるで事前に仕込んでいたかのように訪日客がトレステに立ち寄り、なんとTRAVEL JAPAN Wi-Fiの申し込みを始めたので思わず写真をパチリ。中東方面から訪日した皆さんのようでした。


このトレステを設置した狙いについて、富士山ツーリズム御殿場実行委員会の山口氏と御殿場市・観光課の中村氏にお話を伺うことに。このトレステは2013年からスタートしており、当初は駐車場とトイレ、売店しかなかったところから年々内容をパワーアップしてきているとのこと。トレステでは「安全啓発」「情報発信」「環境保全」「教育活動」という4つの柱と、登山客のおもてなしをメインに活動を行っているそうです。


トレステ内には、下山してきた人の手や足、装備品などを洗うための水場や……


コンテナを利用した建物の上に、展望台を設置。


当日はあいにくの天候でしたが、晴れた日には箱根方面を一望することができるそうです。


◆富士山登頂を開始・富士宮口五合目からスタート
今回の登山では、静岡側にある富士宮口五合目からスタートするルートを設定。トレステから富士宮口までは車で移動しました。


登山開始に備え、まずはスタート地点の食堂で腹ごしらえをします。


食堂へ降りる階段には、木の枝を組み合わせた案内板が。


カウンターで料理を注文。うどんやそば、カレー、ハンバーグなどのメニューが用意されています。


今回は、ライスが富士山のようにそびえる「富士山カレー」(税込1100円)を注文してみました。奇をてらわない、オーソドックスなカレーでまずはエネルギーを蓄えます。


窓際には、屋外に届いたKDDIの電波を増幅して屋内に中継するためのレピーターが設置されていました。


登頂開始にあたり、メンバー間の通信用にLTEトランシーバーが配布されました。携帯電話とは異なる仕組みを持つこの端末は、端末どうしが電波で直接つながる従来のトランシーバーとは異なり、KDDIの4G LTE網を使ったIPトランシーバーとなっています。これにより、LTE網さえあればネットを経由することなく日本中どこにいても通話が可能なもの。また、同時通話が可能で、無線局の免許申請や取得は不要、さらにスマートフォンアプリやIPビジネスホンとも通話が可能となっています。使い方は一般的なトランシーバーと同じで、本体横のスイッチを押している間のみ送話するようになっています。


自動販売機のドリンク類は、500mlのPETボトルが300円、小さいサイズの缶ジュースなどが160円と、ふもとに比べると高めになっているのは仕方のないところかも。


栄養をとるためのカロリーメイトに加え、お菓子なども売られています。


準備を整えたところで、いよいよ登山を開始。富士宮口五合目はスタート地点の標高が2400メートルと最も高い地点になっており、比較的登りやすいルートであると言われています。


霧に包まれた登山ルートをてくてく登頂開始。ここから山頂まで、約1370メートルの登山のスタートです。


今も活動する火山である富士山らしく、そこら中に軽石が転がっています。土や石の色も黒や赤茶色が多くなっています。


ほどなくして、山小屋「雲海荘」に到着。スタートして最初の休憩ポイントで、服装や背負っているザックの調整を行います。


雲海荘の前でスマートフォンの電波状況をチェックすると、画面には4Gのピクトが表示されています。KDDIでは4つある登山ルートでLTE環境を整えるために、富士山のふもとに登山道専用の基地局を設置してエリア対策を実施しているとのこと。全長約3メートルという巨大な平面アンテナを登山道に向けて設置し、鋭い指向性で5km~12km先の登山道を麓から狙っています。


ここで、スマートフォンの電波について興味深い話を聞くことに。基地局から登山道に向けて強い電波を照射することにはなんの問題もなさそうですが、パワーの限られるスマートフォンから遠く離れた基地局に向けて電波を届けるのは難しいハズ。どんな仕組みで何kmも先の基地局に電波を飛ばしているのか尋ねてみると、実は指向性の強いアンテナは受信側の指向性も強くなるので、遠くからの電波を拾うことができるようになるとのこと。そのため、数km離れた場所にあるスマートフォンから発されたそれほど強くない電波でも、遠く離れたアンテナで問題なく受信することが可能なのだそうです。

雲海荘を後にして道中を急ぎます。このあたりはまだ比較的傾斜が緩やかで、ハイキング気分で登ることが可能。


登ること約30分で、標高約2700メートル地点にある「宝永火口」に到着。江戸時代の宝永大噴火でできた火口で、非常にスケール感あふれる光景が広がっており、ぜひ1度は自分の目で見てもらいたいレベル。ここから先は、向こう側の斜面に見えている「く」の字状のルートを上り、てっぺんの「馬の背」と呼ばれる地点を目指します。


ここでは、KDDIが持参したテスト機を使って緊急速報メールの受信テストを実施。地震や火山の噴火情報など、緊急を要する事態が発生してもすぐに情報を受け取れる体制が整えられていることがわかります。


もちろんLTEの電波も問題なく受信中。この後、宝永火口を登る間に一瞬だけ感度の落ちる場所がありましたが、それ以外は問題なくスマートフォンを使うことができました。


LTE網が使えると言うことで、もちろんLTEトランシーバーも問題なく利用が可能。「あんなに遠くの相手とも通話ができます!」と書くところでしたが、よく考えるとLTE(IP)トランシーバーを使うと日本中のほとんどの地域と通話できるのだから当たり前のことでした。


富士宮口からスタートした登山ですが、今回は御殿場ルートにつながるプリンスルートを通ります。


プリンスルートに達したところでしばし休憩。トレステでゲットしたチョコを食べて栄養を補給します。


ついでにApple Watchで脈拍を測定。脈拍数は142と、さすがに高めの数値が出ています。このあと、最も登りの厳しい地点で測定したときは160程度の高い数値に達したこともありました。


ふと眼下に目をやると、雲の切れ目から河口湖が見えました。


御殿場ルートに合流後、ひたすら頂上を目指して登り続けます。高度が上がってきたため、斜面の植物もかなり姿が少なくなってきました。


登ること約3時間で標高3000メートルに到達。


このあたりまで来ると、ルート沿いに立てられた山小屋「わらじ館」の看板が登山者を誘惑してきます。あと30分で「すいか」が食べられるという誘惑や……


焼きたてのワッフルで「ちょっとお茶してかない?」と誘われたり……


わらじ館限定という「埋蔵金どら焼き」など、どれもこれも疲れた体においしそうな単語が波状攻撃をかけてきます。


ほどなくして、七合目に到着。


ここにある山小屋は閉鎖されていました。


七合目でふと目をやると、眼下に広がる雲海の上に富士山の影が映るという雄大な景色が広がっていました。この時は夕方の17時45分頃だったのですが、時間、雲海の具合、天候の全てがうまくそろわないと見られない光景ということでテンションの上がった瞬間。


ついにわらじ館に到達。


看板の誘惑にはあらがえず、カップヌードル(800円)とスイカ(300円)を注文してしまいました。


確かに値段は安くはありませんが、標高3050メートルの地点で食べるカップヌードルはまた格別。疲れた体にスープが染みこみます。なお、標高の高さからお湯の沸点が低くなるため、調理には通常の3分より長い5分が必要です。


甘いスイカも疲れを癒やしてくれました。


なお、この地点でもいわゆるバリバリのLTE状態が確保されており、メールやSNSはもちろん、その気になればYouTubeを滑らかな画質で見ることだって全く問題なし。


わらじ館を出てすぐ、本日の宿となる山小屋「砂走館」に到着。


山小屋に入る前に、ブラシでパンツや登山靴についた砂を払います。


山小屋の中は、木でできた簡易ベッドが並び、その前に食事スペースをかねた広間が広がっていました。


ベッドは上下2段で、みんなで雑魚寝するタイプ。


標高が3000メートルを超えるということで夜間は完全に真冬の冷え込み。7月だというのに小屋の中では炭火が焚かれていました。


併設されたトイレは、微生物の働きで便を分解するバイオトイレ。利用するには1回300円の料金を支払いますが、宿泊客は無料で利用することが可能。


空に目をやると、さきほどよりさらに素晴らしい景色が。地平線の向こうに広がる地球の大気に、なんと富士山の影が投影されるという地球レベルの雄大な光景を目にすることができました。このあと数分で影は消えてしまったので、この光景を撮影できたのは非常にラッキーでした。


景色に目を奪われた後は夕食のスタートです。砂走館の宿泊客はおかわり自由のカレーを好きなだけ食べることができます。


まるで給食に出てくるような、お手本のようなカレーをいただきます。


甘めのカレーは疲れを癒やしてくれつつ、明日の山頂アタックに備えて英気を養ってくれそうな気がします。この日はカレー2杯を食べて夕食は完了。人によっては3杯目を軽く平らげる猛者もいました。


夕食が終わる頃になるとあたりは真っ暗。西側の静岡方面に目をやると、雲の切れ目からとてもキレイな夜景が見えていました。


反対側の東側、小田原方面を見ても夜景が広がっています。手前の雲海の下から漏れる街の光がとても幻想的でした。


そして9時に山小屋は消灯。翌日は山頂でのご来光をターゲットに、早朝1時半ごろから頂上アタックを開始する予定です。


◆山頂アタックを開始・ご来光は拝めるのか
午前1時半ごろ、まだ真っ暗な中で登頂に向けた準備を開始。気温は1桁台のうえ、風があるので体感気温は氷点下といってもいいレベル。とにかく非常に寒いので、薄手のダウンジャケットなどを服装の中に着込まないと間違いなく寒さにやられてしまいます。


防寒対策を施し、頭にはLEDライトを装着して準備は完了。


真っ暗な中での登頂となるので、連絡用のLTEトランシーバーは不可欠。


午前2時、頂上に向けてアタックを開始。


見えるのはLEDライトが照らす範囲のみ。気をつけて足場を確認しながら歩を進めます。


約40分で、山小屋「赤岩八号館」に到着。


標高は3290メートル。八合目には少し届かない七合九勺(しゃく)です。


しばし休憩の後、再び登り始めます。3000メートルを超えると大気が薄くなるため、呼吸がキツくなってきます。肺の底に感じる鈍い痛みに耐えながら、高山病にかからないように無理をさけつつゆっくりとした足取りでとにかく歩を進めます。


午前3時9分、八合目に到達。


足元はゴツゴツとした岩が多くなってきました。


出発時は良好だった天候も、次第に霧が多く立ちこめて来ました。後ろに目をやると、まるで未知の惑星を探査するような光景が広がっていました。


午前4時を過ぎると次第にあたりが明るくなってきました。この日のご来光予定時間は4時30分頃。このままではぎりぎり間に合わない計算です。そもそも、この霧の中でご来光を拝めるのか??


時おり目にする山頂を示す看板。急がなくては……。


しかし、無理がたたってバテてしまっては元も子もありません。前日にゲットしたチョコレートをかじりつつとにかく進みます。


次第に視界が開けてくると……


鳥居が見えてきました!あそこがとりあえずのゴール地点のハズ。


記念写真を行う人たち。この時点で時刻は4時35分。ご来光予定時刻を少し過ぎてしまっていますが……。


とにかく鳥居をくぐって山頂に到達。しかしここではご来光を見ることができないので、近くにあるスポットに移動します。


多くの人が集まる「頂上富士館」の前に移動。この前にある小高い岩の上でご来光を見られるハズでしたが……。


残念ながら、霧で真っ白。自然が相手では、どう頑張っても仕方ないと諦めるしかありません。


午前5時を過ぎると、頂上富士館の営業が始まりました。


中は休憩する人や温かいものを買い求める人でごった返しています。


おみやげコーナーも発見。


食事の注文口には行列。


カップラーメンやカップうどん、スープ類に紅茶、みそ汁など、冷えた体を温めるメニューが用意されていました。


厨房に積み上げられたカップ麺の数々。無言の誘惑を登山客に投げかけてきます。


なお、頂上でもKDDIのLTEは問題なくエリアをカバーしていました。


休憩の後、建物の外に出ると霧の晴れ間から太陽の姿が!ご来光(のようなもの)を見たことにして、次の目的地である富士吉田ルートの山頂にある「山口屋」を目指します。


富士山頂の火口周囲を回る「お鉢巡り」を半分だけ進んで反対側の山口屋を目指していると、あれだけ立ちこめていた霧が晴れてきました。


ほどなくして周囲は晴れ渡り、眼下には裾野と雲海が広がるという絶景に。


思わずiPhoneのパノラマ機能で撮影。地上と宇宙空間の間にいるような、おそらく日本ではここでしか見られない風景が広がっていました。


歩くこと約30分、富士吉田ルートの頂上に到着。規模の大きな山小屋の姿が見えてきました。


道中では、火口の反対側に見える富士山の最高地点「剣が峰」が見えています。斜面のところどころにはとても小さな人の姿が見えており、高さ数百メートルはあろうかという切り立った崖の様子と相まって富士山の巨大さが実感できそう。


◆山頂のLTEエリア対策の実態を見てみた
富士吉田ルート山頂の山小屋エリアに到着。画像の右手には、頂上からの大パノラマ風景が広がっています。


エリアに入るところに、物資などを運搬するブルドーザーが停まっていました。クローラー(キャタピラー)を装備し、最大で傾斜45度にも及ぶ斜面を麓から1時間かけて登ってくるブルドーザーは重要な運搬手段となっており、物資の重さに応じて運搬料がかかるとのこと。山上の食べ物の値段が高くなる理由の一つがコレ。


山頂エリアの中に目的地の山口屋がありました。訪れた目的はいくつかありますが、まずは最初の目的である……


ラーメンを食べることにしました。価格は900円。


見た目からお察しのとおり、味はオーソドックスな味噌ラーメンでした。メンマやわかめ、ネギがトッピングされている以外はさほど特別な味付けがされているわけではなさそうですが、なぜか頂上で食べる食べ物は格別な気がしてきます。


山口屋を訪れたもう一つの重要な目的は、KDDIが設置している4G LTE用機材など、山頂のエリア対策を見学するためでした。電波を届けるルートには2種類の方法があるのですが、その一つが以下の写真のように富士山の麓から強い指向性で電波を飛ばし、受信用のアンテナで受け取った電波を1度中継機を介してから屋根の上に設置した山頂エリア用の送信アンテナから飛ばしてエリアをカバーするというもの。


そしてもう一つの方法が、通常の電波とは異なる26GHz帯という高い周波数を使った電波で剣が峰に電波を届け、そこから富士吉田ルート山頂に向けて再び電波を飛ばすことで増加したニーズにふさわしい通信容量を確保しているそうです。


このようにして麓から受け取った2種類の電波は、山口屋の店内に設置されている山頂専用の基地局設備に入ります。KDDIでは富士山頂でも2GHz帯と800MHz帯の電波を組み合わせるキャリアアグリゲーションを使って山頂のエリア対策を施しているほか、機材ラック上に置かれたアンテナからWi-Fi用の電波が出されることで建物内のエリアもカバーしています。


屋根に設置されたアンテナはこんな感じ。建物の端から山小屋周辺の人が多く集まるエリアに向けて電波を出すようにセッティングされていました。なお、このエリアは富士山でも有数の「ご来光スポット」であることから、他の通信各社のアンテナも設置されて重点的なエリア対策が行われていることがわかります。


山口屋の店先にある広場で速度を測定したら、下りで80Mbpsという下界と変わらない速度が出てビックリ。他の参加者の中には120Mbpsという速度を記録したケースもありました。


また、山頂では記事冒頭に触れた「TRAVEL JAPAN Wi-Fi」の環境も整えられており、このように無料でのWi-Fiを利用することもできるようになっています。


もちろん、災害発生時に送信される緊急速報メールの受信も問題なし。今後の発生が予想される災害の際にも、すぐに情報を入手できる体制が整えられていることがわかります。


登山のあとに必ず待ち構えているのが下山。山頂での時間を過ごした後は、数時間かけて麓の登山口を目指して山を下りて行きます。下りでは須走ルートを通りました。


須走ルートの一部はブルドーザーと同じ道を通ることになります。何度か物資やスタッフとおぼしき人を載せて斜面をぐいぐいと登るブルとすれ違いました。


ルートの途中にある山小屋で休憩を挟みつつ、麓を目指します。


ルート中でも何度か速度測定を行ってみましたが、ほぼ30Mbps以上は確保できている状態。こんな山の上でも高速通信が確保されているとは、じつにすごい時代になったものだとしみじみ実感した瞬間。


下山の道中には、富士山で遭難した人の慰霊碑がいくつか置かれていました。なお、このように鈴をささげる人が多いのですが、本当は何も残さないで欲しいというのが関係者の本音だそうです。


下山途中で、Googleストリートビューのカメラにも遭遇。この作業をする人がいるからストリートビューを利用できるのかと思うと、いかにも重そうな機材を担いで急斜面を降りる姿には頭が下がる思いですが、果たして霧に包まれて真っ白な風景が使い物になるのか心配で仕方がありません。


斜面を下り続けること約5時間、標高2000メートル地点にまで帰ってきました。須走ルートの下部は木々が穏やかに生える樹林帯となっており、夏の日光を適度に遮ってくれるそうです。このように、富士山ではいろいろな光景が楽しめるのも魅力の一つ。


鳥居のある古御岳神社にまで戻れば、下山はほぼ終了。


最後は軽く舗装された道を進むと……


ついに下山のゴール。登山道入り口のお茶屋で一服して富士山登山の感触をかみしめたのでした。


実は、今回の登山に参加した編集部員は登山初心者だったため、果たして山頂にたどり着けるのか最後まで心配の尽きない登山でしたが、事前に整えた装備と経験豊かな同行者のおかげで大きな問題もなく行程を終えることができました。下から見上げても見えない頂上や登山中に足元に感じる地面の感触、山頂からの眺めを振り返ると、たとえ「そこに山があるから」というセリフが実は誤訳であったとしても、山の魅力はその言葉に要約されているのだろうとしみじみ実感させられる富士登山でした。

また、富士山には毎年30万人前後の登山客が訪れているとのこと。今回の登山では、そんな登山客の利便性のためにKDDIをはじめとする通信各社では基地局を増設したり、麓から電波を送出するなどの対策が採られている実態もよくわかりました。世界文化遺産に登録され、信仰の対象と芸術の源泉として人類の遺産になった美しい富士山を後世に残すために、登山者を中心に全ての人が心がけていく必要があると心に残る富士登山体験でした。

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in 取材,   モバイル,   ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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