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「攻殻機動隊 新劇場版」独占公開場面カットを交えつつどんな物語か簡単にまとめ


6月20日(土)から公開された映画「攻殻機動隊 新劇場版」のオリジナルガイド映像がYouTubeの作品公式チャンネルにアップされています。GIGAZINEでは、独占公開を含む多数の場面カットを提供してもらったので、このオリジナルガイド映像と合わせることで、あまり詳しくない人でも「攻殻機動隊 新劇場版」が楽しめるように、情報をまとめてみました。また、公開前日の6月19日(金)に行われたオールナイトトークイベントの様子も後半に掲載しているので、すでに映画を見たという人でも、新たな情報をゲットして改めて劇場で楽しめるかも。

映画『攻殻機動隊 新劇場版』
http://kokaku-a.jp/

「攻殻機動隊」は1989年に発表された士郎正宗さんのコミックが原作。1995年に押井守監督によって「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」として映画化され、2002年から2005年にかけて、神山健治監督によって「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」「攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG」という2つのテレビアニメシリーズが制作されました。


この「原作コミック」「押井監督の映画」「神山監督のテレビシリーズ」に続く、「第4の攻殻機動隊」という位置付けで制作されたのが「攻殻機動隊ARISE」シリーズです。アニメーション制作は押井監督の映画のときからプロダクション I.Gが通して担当しており、「攻殻機動隊ARISE」シリーズではそのI.Gで数々の劇場作品を背負ってきた看板アニメーターである黄瀬和哉さんが総監督に就任しました。「攻殻機動隊ARISE」はborder:1からborder:4の全4話構成で劇場上映され、その後、新作エピソード2話を追加&再構成して「攻殻機動隊ARISE ALTERNATIVE ARCHITECTURE」としてテレビ放送され、「攻殻機動隊 新劇場版」に至ります。この新劇場版に「ARISE」の文字が入っていないのは、プロダクション I.Gの石川光久社長によると、1つの新しい作品だと認識してもらうため

「新劇場版」の舞台は西暦2029年の日本。この時代は多くの人が電脳化を行い、脳を情報ネットワークに直接接続できるようになっています。また、身体を人工器官に置き換える義体化もわりとメジャーな存在なので、手・足・目などを義体化することにより元の機能を回復させる・元以上の機能を持たせるといったことも可能になっています。


主人公の草薙素子(左)は全身を義体化したサイボーグ。かつては「陸軍501機関」に所属し、機関を離れた後は荒巻大輔から公安9課への異動を誘われますが断って「独立攻性部隊」を設立して雇われ部隊として活動中。いくつかの事件を解決に導き、政府筋からの信頼を得てきています。そのハッキングスキルは超ウィザード級です。


物語は2029年3月、東亜連合の大使館が襲撃される事件が発生したところから始まります。


素子は首相補佐官の藤本修と会談。独立攻性部隊で突入して、事件の解決を図ることに。


そこで、陸軍501機関の指揮を執るクルツとすれ違います。


クルツと素子はかつて義体化部隊でともに任務をこなしてきましたが、機関を抜けた素子と機関を率いるようになったクルツの見るものは、もはや同じではなくなっています。


独立攻性部隊を手に入れた素子の姿を、冷めた目で見守る公安9課の荒巻大輔。今も“国際救助隊”としての「攻殻機動隊」設立と草薙素子をそこに加えることは諦めていませんが、またもすげなく断られます。


大使館襲撃事件はというと、部隊の突入によって制圧に成功。


しかし、人質たちが突然捕まえたテロリストたちに発砲を開始。この異常な事態を調査していくと、電脳ウイルス「ファイア・スターター」が関わっていることがわかってきます。


一方そのころ、総理は別の場所で会談に臨んでいました。指紋認証式なのか、アタッシェケースに手をあてがう総理。


同席していたクルツは違和感に気付き、総理を止めようとしますが……


次の瞬間、ケースは爆発。


「ファイア・スターター」の件、そして前代未聞の現役総理暗殺事件と、部隊は調べを進めることに。


素子は「お前たちは私のパーツだ。パフォーマンスを発揮できないヤツはパージする」と、部隊のメンバーを鼓舞します。


そんな部隊を構成しているのは、“眠らない目”と呼ばれる義眼を持つ元特殊部隊員・バトー。


元刑事・ほとんど生身・妻帯者で子持ちという、部隊の中でも特に異色のメンバー・トグサ。


元陸軍情報部大尉でハッキングなどを中心に部隊を支えるイシカワ。


左目に狙撃支援システム「鷹の目」を持つ、元海兵隊のエーススナイパー・サイトー。


元陸軍警察の潜入調査員・パズ。


空挺部隊出身で特殊工作に長けたボーマ。


捜査の先に見えてくるのは、義体開発の行く末を左右する「デッドエンド」と呼ばれる技術的障害を巡る政治的取引。


さらに、話は素子の生い立ちにまで繋がっていきます……


2人の少女と素子


幼い日の素子は誰と出会ったのか?


ダイブした先で、素子は何を知るのか?


養護施設で素子が出会ったクリスという少女とは?


手を差し出す2人


戦いの果てにどこへ向かうのか。


「自分のゴースト(魂)に従え」とメンバーに告げて戦場に向かう素子。「攻殻機動隊」がいかにして生まれたのかが描かれます。


◆オールナイトトークイベント
そして、ここからは6月19日(金)に行われたオールナイトトークイベントの様子です。

司会進行・吉田尚記(以下、吉田):
まずは先に登壇されたみなさまに一言ずつ頂きたいと思います。

黄瀬和哉(以下、黄瀬):
総監督をやらせていただきました黄瀬です。今日は雨の中わざわざありがとうございます。おっさんばっかりで色気がないですが、よろしくお願いします。

冲方丁(以下、冲方):
脚本・シリーズ構成を担当させてもらいました冲方丁と申します。本日は多分、僕は後半はお客さんになると思うんですが、皆さんと一緒に楽しみたいと思っています。よろしくお願いします。

石川光久(以下、石川):
Production I.Gの石川です。本日のテーマはですね、「記憶」です。みなさんに疑似記憶を植え付けたいと思っております。よろしくお願い致します。

吉田:
皆さんに疑似記憶を植え付けるというのは堂々の嘘つき宣言とも聞こえるんですが(笑)。

石川:
必ずですね、なるほどと。多分、冲方丁も石川に弟子入りしたくなるような振りだと思いますけどね。

冲方:
この時点でしたくなりますけどね、この無茶振り。

(会場笑)

吉田:
なぜこのメンバーが先に登壇しているかというと、この後控えていらっしゃる方……恐らく日本で一番トーンが低いのに饒舌な監督がいらっしゃいますので、ここで先に「新劇場版」の話を聞いておかないと、このあと「新劇場版」の話が出来なくなってしまう恐れがあるからなんです。まずは公開まで24時間を切ったとも言えますが、公開日を迎えてのお気持ちからお聞かせ頂きたいのですが、いかがでしょうか。

黄瀬:
完成披露の時は「せいせいした」と言い切っちゃいましたが、今は、明日雨なんですけど、お客さんがいっぱい入ってくれるといいなという、甘い期待を抱いています。

吉田:
期待と不安で言うと?

黄瀬:
不安の方が大きいですね。あまり期待するとダメだった場合の落ち込みがひどいので、最初から低めのところにいると、お客さんが入ってくれるとグッと上がるので。それくらいでいましょう、という感じです。

吉田:
この時点で、浮かれた監督が作ってるんじゃなくて、百戦錬磨の監督が作っている感がものすごい出てますが。そして、黄瀬監督の意を受けて「ARISE」シリーズから「新劇場版」まで脚本を担当された冲方さん、今のお気持ちは。

冲方:
ほぼ一緒ですね。完成披露の時は、めっちゃせいせいしてたんですけども、だんだん気持ちが込み上げてきて。「border:1」の開始直前みたいな感じですね。「border:1」の舞台挨拶の前夜なんて、プロデューサー一同よく分からんテンションになって,全然寝ずに朝4時まで飲んでたりとか、大阪で。

吉田:
それ大人のやることじゃないですね。

冲方:
みんな不安で寝れないみたいな。

吉田:
「border:1」の時って、それこそまだ「ARISE」シリーズに関しては制作真っ最中でもあるわけですよね。

冲方:
そうですね。それでもお客さんに観せる段になるとテンション変わりますよね。気持ちが。

黄瀬:
ぼくは大阪では、大人しくホテルに帰って寝てたので。

冲方:
黄瀬さんが一番フラットでしたね。なんとなく初めての座組のスタッフだったので、皆さんは慣れているんだろうと思ってその通りにしてたら、皆さんいつもと違うテンションだったんだって、後になって気付いて。なんで4時まで付き合っちゃったんだろうって。

吉田:
でも、それだけいろんな方が、期するものがあったけれど、その期するものを超える何かになれていたということですね。率直にお伺いしたいんですけど、「border:1」の頃ってもう「新劇場版」の脚本は上がっていたんですか?

冲方:
いやいやいや、上がってないですよ。「border:1」のころはまだですね。

吉田:
ということはその時のお客さま方の反響を受けて、ちょっと影響を受けたこととかがあったりはしたんですか?

冲方:
どうですか?

黄瀬:
僕は全然。自分がやることでいつも手いっぱいだったんで、何も考えてないです。思い入れはありますけど、あんまり何も考えないようにしてますね。

吉田:
ひとつの映画の脚本を書くというのは、完成されたストーリーを組み上げるということだと思うんですけど、ただ、「ARISE」のような前振りがあってっていうのは、なかなか冲方さんのような経験豊富な作家さんでもないと思うんですけど。

冲方:
これはまずないですね、本当に。「オムニバスだけどシリーズにしてね」とかですね、「1話完結だけども前の話数と繋げてね」とか。あとは「50分のイベント上映だけど、劇場だからね」とか。どっちだよと。これは「攻殻」ならでは。どんな形にもなれちゃうんですよね、コンテンツ自体が。そういった意味では本当に勉強させて頂きました。

吉田:
今回「ARISE」として新シリーズを始めて、最後の劇場公開となる「新劇場版」公開前日ですが、今のお気持ちは。

石川:
本当に「キター!!」といった感じですね。観てもらうと、この言葉はピッタリだと思いますよ。

吉田:
ほぼネットの人と同じ感想になってますが(会場笑)、ただお気持ちはすごく分かるというか、先に拝見したんですけど、まあ冲方さんすごいなと思ったんですよ僕。今までのシリーズ、当然ですがリアルタイムで観ていたファンなんですね。その人間が、今回の「ARISE」をドキドキしながら、スゲ—面白いと思いながら観て、「ARISE」の続きとしても観られるし、いままで「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」とか「S.A.C.」しか観てなかったけど、今回劇場版だから観てみようかなと思っても観られるし、なおかつ、たぶん今回「攻殻」どうしようかなと思った人が劇場版だけ観てもいけるんですよね。すごいなと思って、それを社長の言葉を借りると「キター!!」ということになるのかなと。

石川:
その通りですね。

冲方:
いまおっしゃったようなオーダーを、よくまあ平気で出す社長だなと、いま改めて思いましたけど。

吉田:
僕がこれまで聞いた話だと冲方さんが絶対に断れない状況にしておいて、「OK」と言った段階で膨大な資料を渡すみたいなやり方で頼んだと。黄瀬さんに関しても、インタビューなどでお伺いすると、タイトルは教えないがまずOKしろ、そうしたら企画のタイトルを教える、というふうにして、オファーしたと聞いているんですが、これは2つとも真実ですよね?

石川:
そうですね。ただ言わせてもらうとですね、冲方丁のことを口説くのがミッションとしてすごく高くてですね、そこで、総監督はその時点ではまだ決まってなかったんです。

吉田:
え!そうなんですか?

黄瀬:
たぶんそうです。

石川:
ただ、だんだん自分の記憶が蘇ってきたんですけど、ここには芯がどうしても必要だと思った時に、黄瀬が浮かんだんです。でも黄瀬が浮かんだときに、相当黄瀬は暴れん坊っていうか、「(攻殻を)壊す」って言ってたんだよね。正直、横で見ていて、本当に「壊した」っていうのが現実だったんですけど。ただ、この新しい「攻殻」を作ることは壊すことが大事だったんだと。本当に黄瀬が総監督で良かったなってしみじみ思いました。

吉田:
今日は出来上がった物は登壇者の皆さんはご覧になっていて、これから会場の皆さんに観て頂くんですが、出来に関してどう思ってらっしゃるかの感想を。

石川:
不思議だなと思ったのは、黄瀬の壊し方にもよるんです。真剣に壊してもやっぱり失われないもの、全く変わらないものが「攻殻」にはあったことを知らしめてくれたっていうのが「攻殻」のすごさですね。

吉田:
それは一観客としての目線かと思いますが、今度はプロデューサー、社長として、世の中にこの作品が出ていくわけじゃないですか。そうすると、こういったお客さまに来て欲しいとかそういったことがあればお伺いしたいです。

石川:
年齢層も上がっているので、そういう面では、もう一世代、もう二世代くらい下のお客さんが来てくれても分かってもらえるような作りになっているというのが、今回の「新劇場版」の優しいところであり、奥の深さでもあるんですけどね。最初にこの「新劇場版」から入るっていうお客さんにとっても優しいというか、幅の広いというか、そういった作品に仕上がってますね。

吉田:
石川さんが目論んでいた以上の作品に今回なっていると?

石川:
これはですね、自分も「キター!!」っていう気持ちもありましたけど、ここまで作り込んでね、考えて、冲方丁の脚本を読んだときにこれはすごいと思ったんですけど、上がったときに、これはすごいわって身震いしましたね。

吉田:
同じ「すごい」ですが、身震いが付いた「すごい」に変わっていたと。はい、ということで中身に関しては具体的に触れられませんが、ここからでございます。ほぼ歴史に残る瞬間といっても良いと思います。「攻殻機動隊」25周年記念オールナイトだからこそ実現したこの顔合わせ、あのお二人にご登場頂きましょう!「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」「イノセンス」から押井守さん、「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」シリーズから神山健治さんです。どうぞ!

(押井、神山登壇、会場拍手)

吉田:
すっごいなぁ。9課が揃ったときくらい感動しますね!全員が揃うのはさすがに公の場では初めてということでございます。まずは押井さんからご挨拶いただいても宜しいでしょうか。

押井守(以下、押井):
どうもおつかれさまです。突然来いってことで呼ばれまして。人の映画だと気楽で良いなと。自分の映画だと緊張しまくるんですけど、人の映画だとこんなに楽なのかと今思っているところです。よろしくお願いします。

吉田:
続きまして神山さんお願いします。

神山健治(以下、神山):
神山です。僕も押井さんと同様、人の映画なので、少し気楽にと思ってたんですけど、今日、社長と押井さんと被りましたね、服装。

吉田:
デニム率高い!

神山:
はい、今日は長丁場になると思いますが、よろしくお願いします。

吉田:
それでは皆さんお揃いになったところで、まずは押井さんに「攻殻機動隊」が25周年イヤーで「新劇場版」も公開されるんですが、まずは「攻殻機動隊」が25周年だよと、こう言われて今どんな感想や考えをお持ちですか?

押井:
この25年間何やってたんだろうって感じですね。中身はあんまり変わってない気がするんだけど、25年も経って、変わったことっていえば髪の毛がなくなったことくらい。あまりピンと来ないですね。

吉田:
裏を返すと、25年前の原作、そして押井さんが映画化してから20年間経ってるわけですけど、20年間、「攻殻機動隊」の未来感やテクノロジー感は揺らいでいないっていうことでもあると思うんですが。

押井:
現実の方が追いついて来ているところがあったりして、さすが攻殻の世界ほどではないですけど、スマホとかね、こんなに普及するとは思わなかった。これ(『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』)をやってた時、そもそもインターネットがまだ始まったばっかり頃だったんですよ。僕もインターネットを知らなかったですし、「インターネットってなんだ」っていう話になったんですよ。もう全くの妄想でやってたんで、そういう意味で言えばネットっていうのが一番変わったといえば変わった。こんなになっちゃうとは夢にも思わなかったというか、僕も長いこと携帯とか持たなかったけど、3年前かな、ついにスマホを持ち始めたので、持ってるんですよ。実はあまり現実と関係ないところでモノつくってるんで、インターネットがどうこうじゃなくて、ほとんど妄想ですよ。

吉田:
その押井監督の想像力の外に僕らはまだ出られていないのかもしれない。というふうに思う瞬間なんですが、同じ質問を神山さんにお伺いしたいと思いますが。

神山:
僕も「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」を原作10周年のときに作り始めて、15年経ったんですけど、まだつい最近のような気がしてますね。25年も経っちゃったのかな、という気はしますね。ただ、僕が始めたころは、押井さんはインターネットが分からないくらいの時と言ってましたけど、僕の時は携帯メールが、それこそ100何文字打てるようになったとか、そんなレベルだったと思いますね。その頃にスタートして、僕はなんとか「攻殻」を分かりやすくして、みなさんに届けようというような思いで作ってましたからね。携帯電話が頭の中に埋まっている時代、みたいなイメージでやってましたけど。そういう意味で言えば現実が追いついてきたんだなと思いますね。

吉田:
そして、15年、10年、この地球上で最も変わったものといえばネットかもしれない、と言える時代を経て、今作らなければいけなかったわけですよね、「新劇場版」のメンバーは。黄瀬さんはテクノロジー感や25年の時の流れとか、意識されてました?

黄瀬:
いや、意識はしてないですね。物語が前の時代に戻るので、かえって変に新しくしちゃうと、前の物語を飛び越しちゃうんで、あまりそれは考えてなかったですね。

吉田:
以前の「攻殻機動隊」の基準がしっかりあったからこそ。

黄瀬:
そこから先に行くことをやっちゃうと、物語が繋がらなくなるので。

吉田:
それに関しては冲方さんもほとんど同じマインドですか?

冲方:
「攻殻機動隊」の名シーンって、背景に必ずテクノロジーがあるので、このバランスを崩すと大変だなと思ったので、脚本的には色々と調整しましたね。ここはやる、ここはやらないとか。

吉田:
それこそ、押井さんと神山さんが作られた世界に関しては、十分に理解した上で、今の人たちの理解度も解釈して、尚且つストーリーになってなきゃいけなかったわけですよね。

冲方:
かいつまんで言うとそういうことなんで、とても大変でした。

吉田:
それを一言「頼む」と言って任せたのが石川さんだったと思いますが、石川さんは25年間「攻殻」が続いていることに関してはどう思われていらっしゃいますか?

石川:
25年前って実は、士郎正宗さんの原作が発売されたときなんですけど、25年前のI.Gって「機動警察パトレイバー the movie」をつくるときで、もうそのコンテを見たときに、「新劇場版」を観たときのように痺れましたね。こういう監督がいるんだなと。今度は「機動警察パトレイバー2 the movie」にいったら、漫画からアニメにまたガンとレベルが上がったなと思ってね。そして次に「攻殻」じゃないですか、もうI.Gは押井守のためにあるんじゃないかって思ってたんですけど、だんだんそれが怪しくなってくるんですよね、「イノセンス」あたりから。いま言いたいのはね、押井さん、借金返して欲しいって。

(会場笑)

吉田:
まあ25年間、それだけ続くコンテンツのベースを作ってくれてるんですから、もう借金とかじゃないよと僕なんかは思いたいんですけど、ここで、今日このメンバーがそろったからこその質問ということで、あえてお伺いしたいんですが、一番最初にProductionI.Gが制作をして、押井さんが監督を務めた「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」は、今回の総監督黄瀬さんが、アニメーターとしてご参加になっているわけですよね。覚えてらっしゃることってどんなことがありますか?

黄瀬:
ゲームセンターで捕まったことですね。制作のスタッフが来たり、押井さんが来たりとか……。1回、2回どころじゃないですね。しょっちゅう「バーチャファイター」やってましたね。

押井:
飯食いに行ったら帰ってこない。だいたいゲーセンにいて何時間もやってるわけだよね。たぶん間違いなく駅前のゲーセンだろうと。たまには僕も行ったりして、勝負した。

吉田:
待って下さい、そこはちょっとおかしいですよね。アニメーターさんが、仕事しないで休憩している、監督が来る、呼び戻すのが普通ですけど、監督がくる、横の席が空いてる、座るっていうことですか。

押井:
帰ってこないから。

黄瀬:
負けたら戻るって。

押井:
俺が勝ったら戻って仕事しろっていう。けっこうやった。

黄瀬:
けっこうやってましたね。

吉田:
どちらが強かったとかおありなんですか?

黄瀬:
あんまりね、大差ないです。

押井:
私はラウ使いだったんですが、ラウ専門だったので、攻撃がワンパターンになっちゃって読まれるんですよ。汚いことに待ちをかけてくるので、あんまり勝った記憶がない。

吉田:
よくそれで映画が完成しましたね。冷静に。

押井:
なぜか知らないけど、「攻殻」やってる時って、スタッフがみんなゲーセンにいたんですよ。夜も食事に行ったら帰りにゲーセンに寄って、3時間くらい遊んで、10時過ぎるじゃないですか。そしたらスタッフはそっから戻ってまた仕事して、僕は家に帰るっていう。そういう繰り返しだった。

吉田:
すみません、もう少し作品の中身についてお伺いしたいんですけど(会場笑い)、具体的な作業で言うと、まず原作があるじゃないですか。これは石川さんが選ばれて、押井さんにお渡しになられたんですか?

石川:
いや、逆ですね。社員旅行でスキーをやったときに押井さんが「攻殻」の漫画を持ってきましたね。それが初めてですね。

吉田:
それをご覧になったときに、もう映像化したいというお話はあったんですか?

石川:
クライアントさんから押井さんに話があり、講談社さんからもそういった話がちょうどあって。

吉田:
これは出来るぞとなって、映画業界で言うとグリーンライトが灯るという、作ることになるぞ、ということになった経緯というか、押井さんが一番最初に「攻殻機動隊」映像化のGOサインが出たときどんな感じだったとか覚えてらっしゃいますか?

押井:
バンダイに呼ばれて、僕は自分の企画書持って行ったんですよ。ちょうど熱海に引っ越したばかりでお金がなかったんで、仕事しなきゃと思って、企画書を用意して持って行ったんですよ、それは後に『人狼 JIN-ROH』になったんですけど。その時に、近所の寿司屋に連れて行かれて、なぜか寿司屋の2階の座敷に通されて、絶対何かあると思って。その時にいきなり机の上にポンと出されたのが士郎さんの原作だったの。だから引き寄せられたというか、そういう感じですよね。向こう(バンダイの人)は最初から読んでたみたいで、僕が企画書を出す前にバーンと原作本出して「あんたこれやらない?」っていう。原作は読んでたので、何となくね、いつかやるような気もしてたの。いつかこれを自分がアニメにすることがあるのかなと思いながら読んでた。自分だったらどうやるかっていうのを考えながらいつも読んでるんで、だからあんまり驚かなかったけど、どうしようかなというか、大変な原作なので、難しいじゃないですか。多分バンダイの偉い人たちも分かっちゃいないんですよ。でもなんとなく売れそうなニオイがしたからだと思うんですよ。僕の使命は士郎さんの超難解な原作を、さっき神山も言ってたけど、分かりやすく映画にするっていう、それがテーマだったんですよ。

吉田:
「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」のテーマって「分かりやすく」だったんですか?

押井:
そうです。言葉が全然分かんないし、状況も設定もよく分からないし、「電脳」っていったって「電脳ってなんだ?」という時代だったから。「義体って何だ?」とかね。サイボーグくらいは分かってるかなっていうくらい。だから、まずスタッフにそれを説明するっていうよりも、まず自分が分からないとしょうがないんで、原作を20~30回読んで、そこから始めたんです。

吉田:
それを、それこそ黄瀬さんたちスタッフに伝えなければいけないわけですよね。

押井:
たぶん、誰も気にしてなかったと思う。黄瀬がこれを理解して描いてたとは到底思えないから。

黄瀬:
具体的な説明をしても意味がないっていう前提もあったので、こういう世界なんだっていうことだけ分かってればそれで良いっていう感じでしたね。描いている方もそこまで分からなくても良いよと。逆に技術的なものを表現するほうが少なかったので、ジャックイン、ジャックアウトくらいしか技術的なことを見せてないので、それがいったいどうなっているかって説明は一切無いんですよ。だから描いている方としては、繋ぐとそういうデータが入ってくるんだね、くらいの感じでしか入ってなかったですね。

吉田:
ユーザーとして、ものすごく新しいものを観たという衝撃をはっきり覚えているんですが、神山さんって「GHOST IN THE SHELL」の時は「攻殻機動隊」に対する距離はどうだったんですか?

神山:
業界で仕事はしてましたけど、まだ本当に駆け出しの演出ぐらいの頃でしたかね、美術もやってた頃なんで。押井さんともまだ出会ってなかったです。なので、お金を払って映画館に観に行きましたね。押井監督のことが大好きだったので、「パト1」「パト2」も何度も劇場に足を運んで観てましたので、押井監督の最新作ということだし、原作も大好きだったので、押井さんがやるのはぴったりだなと思ってたし、押井さんもさっきやるだろうと言ってましたけど、素子がネットにダイブして天使を見るカットとかが(原作に)あった段階で、これは押井さんがきっといつか監督するんだろうなと思ってました。なので、それをどう映像化したのかなという興味もあったので1ファンとして観に行ってました。

吉田:
気持ちが分かりすぎてちょっと泣きそう。冲方さんもほぼ同じ世代ですよね。

冲方:
もう完全に70年代生まれの「攻殻」第三世代ですから、「GHOST IN THE SHELL」が公開されたときにまだ10代ですからね。これから勉強するぞ仕事するぞ、っていうときですから、教科書ですよね。ものすごい栄養分で、そのインスピレーションをどんどん吸収しちゃいますしね。特にその頃ってSFの冬の時代じゃないですか。SFって本の帯に書くだけで売れなくなるから書くなと言われていた酷い時代だったんですけど、そこで「GHOST IN THE SHELL」が風穴をバーンとぶち抜いて、こちらとしては、教科書であり、道しるべであり救世主でしたよね。高校卒業時期、デビュー時期にど被りでしたね。影響を受けざるを得ないですよね。

吉田:
実際にそれが世界的な大ヒットとなって、これがなかったら『マトリックス』が生まれてなかったみたいなことに、よく言われますよね。そういう現状を石川さんはどうご覧になられていたんですか?

石川:
そのとき考えたのは、押井さんに「2、3、8、9」って言ったんですよ。押井さんに会ったときに、このタイミングだなと思って、「押井さん、実は2と3と8と9、この中で1つ選んで欲しいなって言ったのがそのタイミングですね。

吉田:
「2、3、8、9」って何なんですか?

押井:
確か「攻殻」の2か、「ルパン三世」(3)か、「009」(9)。8は石川じゃなくて、俺が「八犬伝」をやりたいんだと言ったんだよ。それで、2、3、8、9のうちどれやるっていう話になったの。「どれかやりなさい、どれかやらないとあんたと縁を切る」って言われたんで。だから一番お金を使いそうな「攻殻2」をやろうかって、「イノセンス」になったんだけど。それぞれ因縁のあるタイトルなんだけど、全部。要するにちょっと引っかかってるとか。でもストレートに、パート2まではやる主義なので、やるのもありかなと思ったんです。お金もいくらでも使えそうな雰囲気だったので。じゃあやろうかっていうふうに。

吉田:
この話を聞いて今「ガルム」を作ってるって熱いよね。そして、今このストーリーがある中で、神山さんが「S.A.C.」シリーズ担当をされるわけじゃないですか。すごく今更な話だと思いますが、これだけビッグタイトルになった「攻殻機動隊」を、しかも自分が観客として観ていたものを、担当するとなったときのお気持ちってどうだったんでしょう。

神山:
本当にわくわくしました。石川社長にやっぱり呼ばれて、別の企画を石川さんに持って行ってたんですけど、「神山、それじゃなくてね、『攻殻』をやらない?」って言われて、割と即答だったと思います僕は。やりたいなと思いましたよね。原作はすごい読んでたし、押井さんの攻殻も観て、これはあまり言ったこと無いんですけど、僕もいつか「攻殻」の監督をするんじゃないかなと思ってたんですよ、原作読んだとき。それが石川社長に呼ばれてやらないかって言われた時に、不思議だなと思いながら、やることになるのかもなと思って。それで是非やらせて下さいという感じで。だからすごくわくわくしてました。

吉田:
そして、そちらのシリーズの方も大ヒットとなって、「2nd GIG」があって「SSS」があって、3D版も作られてみたいな。本当にいろんなことがあったわけなんですけど、ここで世界は広がりに広がっていて、全ての作品がものすごい完成度で、ちゃんと完成しているっていうところで、普通だったら、もう1回「攻殻」やろうとはなかなか出ない発想だと思うんですけど、「ARISE」シリーズがありますね。考えたのは石川さんになるんですか?

神山:
そうですね、石川さんが次もう1回「攻殻」をやろうってお考えになったんだと思いますね。

吉田:
どうしてそう考えられたんですか?

石川:
ここで疑似記憶が出てくるんですね。

吉田:
えっ!?ここから嘘つくってことですか?

(会場笑)

石川:
いや、さっき神山さんも言ったけども、偶然か必然かって世の中にはあるんですよ。何かっていうと、みなさんの名前の頭文字を並べ替えると「記憶」になるんですよ。黄瀬の「K」でしょ、石川の「I」でしょ、押井さんの「O」、神山の「K」、そして冲方の「U」で、記憶(KIOKU)。

吉田:
ヤベェ、本当だ。

石川:
全て、こういう偶然と必然は必ずあるんです。

吉田:
よくできたあいうえお作文ですけど。

冲方:
控え室でずっと黙ってたのってそれ考えてたんですか?

石川:
「2、3、8、9」とか考えてた。

吉田:
キャッチフレーズ考えるのすごい上手いなと思いましたけど、なぜ「ARISE」シリーズを始めたのかをお聞かせ下さい。

石川:
黄瀬がいたから始まったんじゃないかなっていうのはあると思うんだよね。やっぱり、押井守がきて、神山健治がきて、誰が来たって嫌ですよ、正直。誰だってやりたいかって言われたらやりたくないですよ。一番考えたのは、多分黄瀬も自分に回って来るとは絶対考えていない。でも、みんなにとって、黄瀬がきたらしょうがないなと、もうやるしかないなとみんなが思うのは黄瀬なんですよ。だから黄瀬が総監督っていうのは、必然だったと言いたい。

吉田:
本当にゴーストに呼ばれた人たちがそこに揃っていたからこれが始められたってことを感じますよね。黄瀬さんはプレッシャーとかは。

黄瀬:
全くなかったですね。最初から関わってちゃってるので、作品自体にそんなに僕は、最初からやってるからこそ何もプレッシャーもなく、1人ふわーっとフラットでいましたね。周りのスタッフがガチガチでしたけど。

吉田:
そうですよね、冷静に考えてここに「新劇場版」の野村監督がいないのは何故かというと、今日このメンバーにボッコボコにされたら若い有能な監督にトラウマが残るからという。分かるでしょ?このメンバーに叩かれたらもう二度と立ち上がれなくなる気持ちは分かるじゃないですか。で、その野村監督が今回「ARISE」シリーズの締めとなる作品を作って、ここです。今日一番聞きたかったのは。押井さん、神山さんは「新劇場版」はもうご覧にならたんでしょうか?

神山:
はい、観させていただきました。

押井:
観ましたよ。

吉田:
率直なご感想を。

神山:
「ARISE」シリーズがあっての「新劇場版」ではあるんですけど、どういうふうに「S.A.C.」よりも前の時代を描くわけですね、素子のエピソードを描いてきて、さらにその後、ということで、時代感とか、テクノロジーは進んじゃってるから、僕や押井さんが描いてた頃は携帯電話もトランシーバーみたいにでかかったですけど、スマホが登場しちゃってね、そういう時代に2人はどういうふうに描くのかなとか、いろいろ大変だなと思ってたんです。「スターウォーズ」もエピソードを遡るごとにテクノロジーが新しくなっちゃったじゃないですか。そういう難しさとかが絶対あるだろうなと思ってた。そういう苦労をどう回避していくんだろうとか、興味を僕も同じ作り手として持ちながら観てたんですけど、
なるほどと、こういうところで時代感を出してきたかというのをね、黄瀬さん冲方さんに拍手ですね。そう思って観てました。

吉田:
こう来たかということに、素直に感心なさっているという感じですね。

神山:
本当にお疲れさまでした。

(黄瀬、冲方会釈)

吉田:
そして、押井監督は「新劇場版」どうご覧になったのか。

押井:
本当のこと言っていいんだよね?想像したよりも全然面白かった。

冲方:
だいぶ褒められた。

吉田:
そうですよね、最大級の褒め言葉だと思います。

押井:
全体にテンポがよくて、お話がよく出来てるんで、表現もなかなか良いんじゃないでしょうかね。私に言わせれば、黄瀬がやってるんだから、絵はよくてあたりまえだと思ってたの。黄瀬がやってて絵がだめだったらやる意味がないじゃんと思ってたから、それ以外に画面のつくりとか、思ったよりスッキリしてて良かった。あまりよけいなことをやってないから、よけいなことをやるとどんどんダメになる。

吉田:
抑制が利いていたと。

押井:
そうそう。ちゃんと映画になってました。なかなか無いことなんですよ。それは、想像してたよりもちゃんと出来てるじゃんと、それはちょっと感心した。思うに、やっぱり冲方さんの脚本が良かったんだろう、きっと。

冲方:
なんでそこで身内を褒めないんですか。

押井:
黄瀬がやってるんだから、絵が良くてあたりまえなんですよ。絵が良くなかったら怒るからさ。あとシリーズのときから思ってたけど、素子が良い。

吉田:
実は押井監督のコメントご覧になっているかもしれないですけど、「いままでで最もパッショネートな素子」というようなコメントを出されていらっしゃいますよね。パッショネートというのはすごく具体的だなと思ったんですが、これは冲方さんたちが作ったからこその何かなのかなと。

押井:
たぶん素子に関して言うと、黄瀬のオリジナルだと思う。キャラクターは基本的に作る人間の想いが入ってくるんで、デザインからやってるわけだから、今回の素子に相当想いがあったんだろうなと。僕がやった素子と、神山がやった素子も全部違うんだけど、今回の素子はさらに違う。デザインも良いなと思ったんだけど、前髪を思いっきり切っちゃう潔さ、あれ実は難しいんですよ。ああいうキャラクターはね、たぶん相当難しい。前髪切るって勇気いるんですよ。

吉田:
これは神山さんもお分かりになるんですか?

神山:
前髪パッツンキャラって現実でもなんとなくキャラが立っちゃうじゃないですか。(これまでの)素子のイメージが付いちゃってますから、それを根底から変えるわけですからね。それは勇気がいったんじゃないかと思いますね。

吉田:
それをご覧になって、その決意を押井さんは観てきて、まさに黄瀬さんのキャラクターだと。黄瀬さん、今のお言葉を受けて。

黄瀬:
人前では初めて褒められましたね。滅多に褒めないですよ。

吉田:
それはネット中の住人が知っていることですね。実際に最大級の賛辞というものが聞こえてきたわけですね。

押井:
多分ね、黄瀬が良い感じに年を取ったんだと思う。10年とか20年前にやってたらね、多分こうなって無いと思う。それは年取ったことが大きいんだよね、すごく。バランスが良くなったっていうかね、多分、こうやって今ニコニコ笑ってるけど、昔は酷かったからね。とにかく生意気だったからさ、生意気っていうんじゃないな、我が強いっていうか、人の言うことはだいたい聞かないし、それはね、良い感じに歳とって、監督ってそれがすごく大事なんですよ。ひとりで作っているわけじゃないし、それは最近つくづく。今、(髪の毛は)真っ白になっているけど、昔はムキムキでやたら腕力も強かったし、それが良い感じで変わったのかなって。キャラクターとの良い距離感が出てると思った。別に素子だけじゃなくて、9課の連中というか、素子が集めたパーツたちだよね、あのおっさんたちもなかなか良いんじゃないですか。良いような感じで、何か諦めている部分があったりね、そういう感じって出せないんですよ。どうしても俺が俺が、になっちゃうんだけど、それがね、キャラクターのバランスがとても良かったと思う。ここでバラしちゃうとまずいんですけど、ある方のキャラクターも大変良かったので、それは観てのお楽しみだけど、全体的にキャラクターの表現が地に足が着いていて、大人になっている。そう感じた。それは黄瀬がうまい感じで歳を取ったからですよ。いろんなことがあったんだろうけど。

吉田:
黄瀬さんのガチ照れが見られますねいま、冲方さんもある意味同時に最大限の賛辞を受けているわけですが、あの「GHOST IN THE SHELL」をご自身で映画館で観たわけですよね?あの押井守にそう言われる気持ちとは。

冲方:
いままさに仰ったとおり、素子の一番最初の最初デザインですね、「ARISE」のデザインを黄瀬さんが仕上げて僕が拝見したときに、始まるという気はしました。いままでにない、表情が全部見える素子っていう。この路線で行けば良いんだって。僕も正直ガチガチだったので、そういう意味で黄瀬さんに最初に壊してもらいましたよ。「過去の作品は観なくて良いよ」って、もうたいぶ見てるよって思いながら。

吉田:
それを壊すことが出来るのは全ての関係者の中で黄瀬さんだけだと見込んだ石川さんの眼力がとても正しかったということでしょうか?

石川:
まあその通りですね。

吉田:
これが明日からスクリーンでかかるわけですよ!そしてここにいる皆さんはこれから映画をご覧になるわけですよ。ということで、お時間もなくなってきましたので、最後にみなさんから一言ずついただけますでしょうか。

黄瀬:
公開は明日なんですが、本日この後観て頂くことになると思います。スタッフも頑張ってやってましたので、是非楽しんでいって下さい。

冲方:
この果てしなく重たいバトンを渡されてから早くも数年が経ち、ようやくここまで辿り着けました。ぜひこの作品と「攻殻機動隊」コンテンツ、全シリーズ、これがまた新たなシリーズを迎えながら発展していって欲しいなと、本当に心から思います。本日はこれから9時間、たっぷりと「攻殻」の世界をお楽しみ下さい。

押井:
まさかこんな日がこようとは夢にも思わなかったですけど、予感があったというか、先月三鷹の飲み屋で(黄瀬、神山と)3人でばったり会ったときにこういうこともあるんだなと。この間、3人の間でいろいろありましたから。けんかもしたし、でも結果良ければいいやっていうか。25年続いた作品ですから、もしかしたらまだあるのかと、そんな思いもちょろっとしたりして、そうすると一周してまた戻るのかなと、それも悪くないなと。いろんなこと考えたりしましたけど、とにかくそれだけ長く続いいたってことはきっとなにかあるんでしょう。素子は年取らないし、いくらでも描けるんですよね。僕らは望まれたらやるだけなんで、望まれれば、さらにそういうことがあるかもしれないし。
そういう思いで9時間ちょっとつらいかもしれないですが、最後まで楽しんで下さい。

神山:
「新劇場版」がいよいよ公開になるということですね、しかも「攻殻機動隊」コンテンツがスタートしてから25年という節目に、僕もこの場所立っていることが出来たというのは光栄だなと思いますし、これからも末永くこのコンテンツが生き延びてくれると良いなと思います。今日、沢山の人が来てくれて、この作品がいかに愛されているかを、また新たに実感として分かりましたので、押井さんも言っていたように、作品が長く続いていくといいなと思うし、まずは「新劇場版」がですね、大ヒットしてくれるのを応援していますので、よろしくお願いします。

石川:
今回の「新劇場版」はですね、公安9課、素子が誕生するまでの話。スタートラインに立つまでの話をしようと思って企画から5年かけてここに辿り着いたんですけど、実際に試写を観せて頂いてですね、ゴールに辿り着いたというよりも、新しい種が生まれたんだなとつくづく思いましたので、どうかこの種を皆さんが温かく見守って育てて頂きたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

吉田:
ということで、1時間以上の長い時間になりましたが、ありがとうございました!

映画「攻殻機動隊 新劇場版」は全国の100を越えるスクリーンで現在公開中。これが「攻殻機動隊」誕生のエピソードなので、これまでのシリーズをまだ見たことがないという人は、新劇場版を見てから「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」や「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX」を見るというのもアリです。

「攻殻機動隊 新劇場版」大ヒット公開中!!オリジナルガイド - YouTube

©士郎正宗・Production I.G/講談社・「攻殻機動隊 新劇場版」製作委員会

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in 映画,   アニメ, Posted by logc_nt

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