水についてまだよく分かっていない5つのこと

By Janet Ramsden

生き物が生きていく上で必要な「水」は、あまりにも身近過ぎる存在のため、水についてじっくりと考える機会は意外と少ないものです。しかし、誰もが当たり前の存在に感じる水について、まったく解明されていない代表的な5つのものをまとめるとこうなります。

Five Things We Still Don’t Know About Water—Richard Saykally Takes Us Inside Waters’ Mysteries
http://nautil.us/issue/25/water/five-things-we-still-dont-know-about-water

◆1:いくつも種類がある「氷」
水が凍ると「氷」となるのは誰もが知るところ。このような固体状態の水である氷は、極めてめずらしいことに、液体状態よりも体積が増加することが知られています。これは水素結合という原子同士の特殊な結合を原因とするもので、水はセ氏4度(以下、温度はすべてセ氏で表記)の時に最も体積が小さくなる(=密度が高くなる)事が知られています。

しかし、「水の固体状態の氷が1種類ではない」ということは学校では教わらず、知らない人も多いはずです。現在、知られているだけでも氷は17種類あり、一般的に私たちが氷と呼んでいる「Ih」以外にも自然状態でごく微量の「Ic」が存在することや、その他にも高圧下の宇宙にのみ存在し得る15種類の氷が見つかっています。

水素結合が整っていて密度の低い「一般的な」氷の状態(右)から圧力を加えて最密充填構造の限界に到達するまでに、氷はさまざまな形状をとると考えられており、今後、既知の17種類以外の状態の氷が発見されるかもしれません。


◆2:水の蒸発メカニズム
物質が液体から気体へと変化することは「気化(蒸発)」と呼ばれており、水が蒸発して水蒸気になることも気化によるものです。この水が蒸発する割合は、大気の雲の発生に大きく影響するので気象を予測するのに非常に重要なものの一つとなっています。

By Mervi Eskelinen

しかし、水が蒸発するメカニズムについてはいまだに完全には理解されていません。水に塩を加えると表面張力が上がり、表面張力波が抑制されるため理論上は蒸発率は下がるはずなのに、実験ではほとんど蒸発率に変化が見られないなど、蒸発メカニズムは解明されていないとのこと。

◆3:水の表面は酸性か塩基性か
ナイアガラの滝が作る霧の表面のpHは、水酸化物イオンのため7より大きな塩基性であると考えられてきました。

By MATAVI@

しかし、近年の実験やシミュレーションでは実際には液体の水の表面には水酸化物イオンよりも水素イオンが多く、pHは7未満すなわち酸性であることが分かっています。

◆4:アモルファス氷
水は温度が下がっていくと0度以下で固体の氷になりますが、ゆっくり冷却すると0度以下でも凍らない過冷却という現象が起こります。なお、どんなにゆっくり冷却したとしても-38度では凝固してしまうことも分かっています。

しかし、水をゆっくりと冷却し続けると、-38度より低い低温領域では分子の結合に規則性がないアモルファスな状態の「アモルファス氷」と呼ばれる結晶をとり得ることが知られています。

固体は分子構造に規則性があり、液体は分子構造に規則性がないのが一般的ですが、水の場合、固体でありながら分子構造に規則性がない状態が生じ得るという点で特殊性を持ちます。つまり、固形で流動性がないのでアモルファス氷は「固体」ですが、分子構造に規則性がないという点では「液体」と同じで、極低温状態ではガラスのように「固いけれど液体」とも言えるというわけです。


なお、ガラスが液体状態か固体状態かそれとも独立したガラス状態なのかについては争いがあり、従来の学説を覆す「ガラスは液体ではない」という京都大学の研究も発表されています。そのためアモルファス氷が固体か液体かそれとも別の状態なのかという点も意見が分かれそうです。

◆5:量子サイズの水
カーボンナノチューブや陽子交換膜を作り出せるようになって以来、水分子を量子サイズに閉じ込めるというチャレンジが進められています。実験上も計算上も水を分子数百個レベルと極少量を狭い空間内に閉じ込めると、量子効果を示すことが分かっています。

By Geoff Hutchison

これらの量子効果を示す水の特性が、生物学から地質学に至るまであらゆる領域に影響を与えると考えられており、例えば、より効果的に海水から純水を作り出す淡水装置を設計できると予想されています。しかし現時点では、水を閉じ込めることさえうまくいっておらず、この分野の研究は解決すべき問題が山積みだとのことです。

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