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宇宙開発競争から火星有人飛行まで、膨大な写真と映像でNASAが宇宙飛行の歴史を振り返るムービー「Suit Up」

by NASA Goddard Space Flight Center

アメリカの宇宙飛行士が初めて宇宙で船外活動を行ってから50年がたったということで、NASAが50周年を記念して、宇宙開発競争から月面着陸・宇宙遊泳など、これまでの宇宙に関する活動のドキュメンタリー「Suit Up - 50 Years of Spacewalks」をYouTubeで公開しています。

Suit Up - 50 Years of Spacewalks - YouTube


ドキュメンタリーはさまざまな宇宙飛行士やスタッフのインタビューとともに進行していきます。以下の画像に写っているスニータ・ウィリアムズさんは、女性としては世界最長の宇宙滞在195日という記録を持つ宇宙飛行士。「宇宙服を来て船外に出て、辺りを見回すのは本当にすばらしいこと」と宇宙飛行について語ります。


アポロ17号の船長だったユージン・サーナンさんは、「ハッチを開けた時、目の前に宇宙が広がっているんだ。壮観だったよ」と語りました。


リチャード・リネハンさんは宇宙に行った時「孤独とは何か」ということがハッキリ分かったとのこと。


宇宙飛行士たちは宇宙に行く前、宇宙服を着た状態で水の中に入り、船外活動のトレーニングを行います。


実際のトレーニングの様子はこんな感じ。


宇宙服を身につけ、船外で物を直したり何か活動をしたりというのは多くの人にとってめったにない経験であり、冒険です。


人類の宇宙飛行の歴史を振り返ってみると、世界初の人工衛星スプートニク1号がソビエト連邦によって打ち上げられたのは1957年のこと。この時、宇宙の探査をまだ行っていなかったアメリカは大きな衝撃 受けます。


「アメリカよりも先に宇宙に物資を送ることが可能な国が世界にある」ということに恐れを抱いたアメリカは、全ての技術を結集し、宇宙へ人間を送る計画を立て始めます。


「明らかにモチベーションは競争……ソビエト連邦に勝つことでした。我々は国家の威信をかけてやり遂げなければなりませんでした。そしてその後十年以内に人間が月へと送られたのです」と語るキャスリン・C・ソーントンさん。


アメリカとソビエト連邦の宇宙に関する競争は、時代と共にヒートアップしていきます。


1961年、ソビエト連邦の宇宙飛行士であるユーリイ・ガガーリンはボストーク1号に単身乗り込み、世界初の有人宇宙飛行を成功させます。


そして、ガガーリンの宇宙飛行を追う形で、アメリカは海軍の軍人だったアラン・シェパードを宇宙に送り出します。


当時の状況について「アメリカはヒーローを必要としていた」とサーナンさんは語りました。


そしてアメリカとソビエト連邦の双方が有人飛行に成功すると、今度は宇宙遊泳を行い、船外活動を行うことに焦点が当てられていきます。ソビエト連邦の軍人であったアレクセイ・レオーノフさんは1965年に世界で始めて宇宙遊泳を行った宇宙飛行士。


「地表から500kmも上の空間に立ち、世界の半分を見渡した」と語るレオーノフさんが実際に船外活動した時の様子がこれ。


サーナンさんは「船から出るときは宇宙に吸い込まれて行くから比較的楽だけれど、膨らんで硬くなった宇宙服は船に戻るのを邪魔するため、空気を抜く必要があったはず」と、当時の宇宙飛行の難しさを解説しました。


その後、アメリカではジェミニ計画を実行。ジェミニ計画は月に人間を送るアポロ計画において必要とされるランデブーやドッキング、宇宙遊泳などのより発展的な技術を開発することが目的でした。


訓練の様子は以下のような感じ。


そして、以下が実際に行われた船外活動の様子です。


ジェミニ計画での船外活動時間は20分にも及びました。


ジェミニ計画では計10回の有人飛行が行われたのですが、無重力空間での作業は難しく、宇宙飛行士たちは最初の船外活動で簡単な作業にさえ失敗していたのとのこと。しかし、実地で学び、地球で訓練を重ねることで上達していったそうです。


そして、ジェミニ計画に続いて行われたのが、人類初の月への有人飛行を目的としたアポロ計画


ジェミニ計画までは宇宙服がカスタムメイドではなかったのですが、月への飛行は腕や膝の可動性が重要になってくるということで、アポロ計画に参加した宇宙飛行士たちには、それぞれの体に合わせた宇宙服が作られました。


スリー、ツー、ワン……と多くの人が見守るなか……


アポロ11号が発射していきます。


歓喜に湧く人々。


この時、月に降り立ったのが「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」という有名な言葉を残したニール・アームストロングさんとバズ・オルドリンさん。


当時高校生だったソーントンさんは、テレビで月面着陸の中継を見ていたそうです。


実際に月面着陸を行ったオルドリンさんは「大きなバックパックを背負い、大きな宇宙服を着た状態だと、カメラの方向に歩こうとしても全く別の方向に行ってしまうんです」と宇宙での体の動かしづらさを語りました。


実際に月面で歩く宇宙飛行士たちの様子は、まるでウサギが地面を跳ねているかのような動きです。


「人間がかつて踏んだことのない『月面』を歩くという経験は、本当にすばらしいこと」だと語るのはNASAの副局長であるデーバ・ニューマンさん。


探査機を使った月面探査も行われました。


その後、NASAは宇宙ステーションを建設するスカイラブ計画を開始します。


宇宙飛行士目線で見てスカイラブ計画がアポロ計画と大きく違うところは、バックパックが宇宙服と一体化した点でした。


アポロ計画では背中に背負ったバックパックからホースを通して空気が送られていましたが、スカイラブ計画では生命維持装置が宇宙服の胴体に取り付けられていたのです。


これがスカイラブ計画で使われていた宇宙服の構造。シンプルでスッキリしたデザインに改良されています。


宇宙飛行士にとって宇宙服とは本番の時にだけ着る一張羅的な存在ではなく、訓練の時からずっと着続ける、いわば友だちのようなもの、とのこと。


そして宇宙服は進化を続け、1984年、ブルース・マッカンドレス2世が世界で始めて命綱なしの宇宙遊泳に成功します。


地球の上をふわふわと浮かぶマッカンドレス2世。


その後、宇宙を旅する人々にとって、船外活動は重要なタスクでありながら大きな楽しみとなっていきます。


1984年、スベトラーナ・エフゲニエヴナ・サビツカヤさんは宇宙船の外に3時間35分滞在し、女性としては史上初めて宇宙遊泳を行いました。


サビツカヤさんに続き、キャサリン・D・サリバンさんもアメリカ人女性として初めて宇宙遊泳を行いました。サリバンさんは合計3度のスペースシャトルのミッションで532時間も宇宙に滞在。


このような動きの中、宇宙での船外活動はNASAにとって非常に重要な位置を占めていきます。


船外活動のための道具の開発もどんどん行われました。


宇宙服も改良が進み、デザイン面でも機能面でも、日々進化を遂げています。


また、地球にあるNASAのコントロールセンターでは25~100人の職員が宇宙から送られてくるデータをチェックし、日々、宇宙飛行士の活動をチェックしています。ヒューストンやコロラドの宇宙センターでもデータはチェックされるため、ツールの開発から活動のサポートまで含めると、1つの船外活動を行うために毎日何千人もの人々が力を合わせるという状況になっています。


しかし、サポート体制が万全でも、突如ハプニングが起こることももちろんあります。オルドリンさんによると、宇宙飛行士が最も避けるべきことは「パニックになる」こと。パニックになると状況が悪化するためです。


限られた時間内で多くの人に見られながら作業を完遂しなければならない、という状態になると、「ミスしたくない」という気持ちが強くなり、恐怖を感じるとソーントンさんは語りました。


欧州宇宙機関で働くイタリア人のルカ・パルミターノさんも宇宙で恐怖に直面した宇宙飛行士の一人。パルミターノさんは船外活動中、後頭部に冷たい水の感触を感じたそうです。


パルミターノさんは地球にいるセンター職員とコンタクトを取り、「何か予想していなかったことが起きている」と伝えました。しかし、地上にいる職員は宇宙服の中で何が起こっているのかを把握できなかったそうです。


パルミターノさんは「どのように水がヘルメットの中で増えていっているか」ということをうまくセンター職員に伝えられなかったのですが、最終的にセンターからは「船外活動を中止するように」という指令が下されました。


その間にもパルミターノさんのヘルメットの中の水は増え、目や耳にまで入ってきたため、かろうじて呼吸はできたのですが、何も見えず聞こえない状況になったとのこと。


幸いなことに、地球上で水中訓練を行っていたパルミターノさんは、知識と経験を駆使して宇宙船まで移動。視界を奪われていたパルミターノさんですが、宇宙船の気密式出入口には明かりが灯っていたため、明かりを目指して何とか船内へと戻れたそうです。


船内で待っていた仲間たちの助けにより、パルミターノさんは無事スーツを脱ぐことができました。


これらの恐ろしい経験も踏まえて宇宙技術は日々開発されており、現在は火星への有人飛行にフォーカスが当てられています。火星への有人飛行は、ただ火星に「行く」だけではなく「滞在する」ことが目的とされているのが注目すべき点。既にNASAは火星に無人探査機を送って調査を始めており、民間会社でも火星に人間を移住させる計画が立てられています。


重力が小さかったり、そもそも重力がない地域での滞在を想定しているため、活動の方法や、技術や処置そのものが研究・開発されています。


地球からの脱出から月面着陸、船外遊泳などをたどり、人間の向かう次なる舞台は火星。そのためのツールや新しい宇宙服などテクノロジーが開発され、着実に準備が進んでいるというわけです。


なお、「Suit Up」の特設サイトもオープンしており、過去のNASAの活動に関するさまざまな写真やムービーが見られるようになっています。

#SuitUp with NASA for the Journey to Mars | NASA
http://www.nasa.gov/suitup

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in ハードウェア,   乗り物,   動画, Posted by darkhorse_log

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