ニセモノでいかにして富を生み出すかという芸術作品の「贋作」の知られざる実態


偽物の意味である「贋作」というと、芸術作品のコピー品という印象を受けますが、完全なコピー作品は偽物だとバレやすいため、実際には本物そっくりのコピー作品が作られることは珍しく、贋作の多くは「有名作家の画風を真似た作品」です。これらの贋作は科学的な検証を行わない限り偽物だと判断するのは難しいもので、歴史上で有名な贋作にまつわる逸話をBloomberg Businessがまとめています。

Here’s How to Make Millions as an Art Forger - Bloomberg Business
http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-05-21/here-s-how-to-make-millions-as-an-art-forger



◆双子のゴーギャン作品
ニューヨークでギャラリーを経営していたEly Sakhai氏は、正規の芸術作品を数十万ドルで購入して自室に持ち込み、部屋に住まわせていた中国人移民たちにコピー品を作らせていました。そして階下の自分のギャラリーで、オリジナル品を西洋へ、贋作をアジアへ売っていたとのこと。誰も気づかないだろうという仮定のもと贋作を売りさばいていたSakhai氏でしたが、ゴーギャンの作品「Vase de Fleurs(花の生けられた花瓶)」が2000年5月にサザビーズクリスティーズの両競売に登場したことから逮捕に至り、2005年7月には1210万ドル(当時の相場で約13億円)の罰金と3年半の懲役を宣告されています。

◆フェルメール作品とナチ党
ハン・ファン・メーヘレンは、1920年代にヨハネス・フェルメールや他のオランダ人画家の贋作を作って巨額の富を得ました。その額は今日の価値にしておよそ6500万ドル(約80億円)とも言われています。しかし、第二次世界大戦後、ファン・メーヘレンがナチ党の政治家・軍人であったヘルマン・ゲーリングに売った「フェルメール作品」がゲーリングの持ち物の中から見つかり、ファン・メーヘレンはオランダの絵画を国外へ流出させた疑いでナチの協力者とみなされて裁判にかけられることになります。裁判でファン・メーヘレンは、「その作品は自分の作った偽物だ」と主張しましたが信じてもらえず、贋作者であることを認めてもらうためにフェルメール風の作品を生涯に渡って作り続けたそうです。

左がフェルメールの作品「天秤を持つ女」で、右がファン・メーヘレンの作った、初期フェルメール風の贋作。


◆贋作の大量購入により美術商が閉鎖
2009年には、ニューヨークの有名な美術商ノドラーにて贋作が見つかったことが話題になりました。ある日Glafira Rosalesという女性がギャラリーにやってきて、館主のAnn Freedman氏に芸術作品の購入を迫り、Freedman氏は40以上の美術品を数百ドルで買い取り、数年後に作品を鑑定してみるまで贋作であることは分からないままでした。ギャラリーに出資していたヘッジファンドの役員が返金を求めたことからギャラリーは2011年に閉館し、贋作を売却したGlafira Rosalesと夫は、中国人移民に贋作を作らせていた罪で懲役99年の刑に処されています。

◆ゲティの立像
ロサンゼルスのJ・ポール・ゲティ美術館は、美術品収集のために巨額の予算を確保している「世界一裕福な美術館」と言われています。予算的な余裕があったことから、世界中で12体しか現存していないヘレニズム時代の立像が見つかった際には、ゲティ美術館は700万ドル~1200万ドルを投じて立像を購入。しかし、髪に飾られた組みヒモのデザインがヘレニズム風でなかったことや、大理石に多数の傷がついていたことから、複数の時代のデザインを組み合わせた贋作であることが分かりました。ゲティ美術館では今でも館内に贋作を展示していて、説明文には「紀元前およそ530年頃の作品か、近代の贋作」と記されています。

左が紀元前560年頃にギリシャで作られた本物のコロウス(若い男性の裸体立像)で、右がゲティ美術館の購入した贋作のコロウス(通称、ゲティの立像)。


◆下書きの贋作
多くの画家は作品を描く前に下書きを作っており、作品の完成後は下書きを捨てていました。現存する下書きは非常に少なく、ボロボロで汚れたものばかりです。そのため、完成作品を真似て下書きの贋作を作るのは非常に簡単で、イギリス人画家のエリック・ヘボーンは、絵画が作られた時代に合わせた古い紙を使って何百枚から何千枚もの下書きの偽物を作りましたが、1991年に出版した自叙伝の中で贋作制作を公表するまでバレることはなく、何の刑にも処されることはありませんでした。

左はアンソニー・ヴァン・ダイクの作品、右はエリック・ヘボーンが描いた、同作の下書きを模した偽物。


芸術作品の贋作についてはさらに何十もの逸話があり、以下の本に詳しくまとめられています。

Amazon.co.jp: The Art of Forgery: Noah Charney: 洋書
http://www.amazon.co.jp/dp/0714867454/

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in アート, Posted by darkhorse_log