メモ

「高温環境下でSSDのデータが数日で消える」という騒動は正しいのか?


半導体技術協会(JEDEC)が公開した「(PDFファイル)JEDEC SSD Specifications Explained」というSSDのデータ保持性能に関するプレゼンテーション資料の中に、SSDのデータ保持力と気温の間に相関関係があるというデータがあり、それをとらえて「SSDを高温で放置するとデータがわずか数日で消えてしまう」と多くのメディアが報道し、ちょっとした騒ぎになりました。SSDの信頼性に疑問を投げかけるこれらの報道内容が真実なのかについてAnandTechが考察しています。

JEDEC SSD Specifications Explained - Alvin_Cox [Compatibility Mode]_0.pdf
(PDFファイル)http://www.jedec.org/sites/default/files/Alvin_Cox%20%5BCompatibility%20Mode%5D_0.pdf

The Truth About SSD Data Retention
http://www.anandtech.com/show/9248/the-truth-about-ssd-data-retention

プレゼンテーション資料にはSSDのデータ保持力の目安についてまとめられていました。これによると、一般ユーザー向けのSSDは、「気温30度の環境下で、1日に平均8時間使いそのときのSSDが置かれる環境の温度が40度である」という条件では1年間はデータを消失することなく保持できるよう設計されていると説明されています。つまり、ごく一般的な利用条件下では、電源OFFから1年間はデータを失う心配は不要ということです。


この結論は、Intelが公表しているデータ保持力を試す加速劣化試験によるデータから導かれています。下の画像の赤枠が一般ユーザー向けのデータテーブル。


データテーブルは、左に「電源をOFFにした状態の温度(すなわち気温)」、下に「電源ON時の温度(使用時のSSD周辺温度)」を示しており、それぞれの環境における電源OFF時のデータ保持期間が「週」で数値化されています。例えば、気温30度、使用時のSSD周辺温度が40度の場合は緑色の「52」、すなわち52週間はデータを保持できるということです。


そして、このデータシートの「1」という数値を見つけて、「条件次第ではSSDのデータ保持力は1週間しかない」と各種メディアが騒ぎ立てたのが今回の騒動というわけです。


しかし「1」を示す条件はといえば、「使用時のSSD周辺温度が25度/30度」で「気温が55度」というもの。このような条件は、「水冷クーラーでSSDを冷やした上で温度55度の環境に放置する」というような、一般的にはあり得ない特殊な環境であることは明らかです。

一般的なPCが空冷方式の冷却システムを採用していることを考えれば、このデータテーブルでは使用時のSSD周辺環境温度が室温以上の部分、つまり白地の部分のみを見ればOKです。さらに、気温45度以上の部分は無視してもよさそうです。


なお、室温が高いほどSSDのデータ保持力が弱まる傾向にある理由は、SSDの採用するNAND型フラッシュメモリが浮遊ゲート内に電子を取り込んだり逃がしたりすることでデータを記録するところ、温度が高いと浮遊ゲートから電子が逃げやすくなってしまうから。反対に、使用時の温度が高いほどデータ保持力が高い傾向にある原因は、高温環境であるほど電子の伝導性が高まり劣化の原因となるトンネル酸化膜へのストレスが小さくてすむからです。

いずれにせよ、HDDや磁気テープに比べて容量単価が圧倒的に高いSSDは、主にシステム用ストレージとして利用されることが多く、データ保存用として使われることは少ないはず。そのためデータ保存用途で長期間、電源を一切いれない「塩漬け」状態にするケースはほとんどないため、電源OFF時にデータが消える心配は不要と言えそうです。

・おまけ
株式会社フィックスターズは2.5インチサイズ(9.5mm厚)では世界最大容量となる6TBのSSD「Fixstars SSD-6000M」を発売するとのこと。2.5インチサイズのHDDの最大容量が東芝の3TBモデル「MQ03ABB300」であることを考えれば、すでにSSDは容量拡大競争でHDDを追い越したようです。

フィックスターズ – ニュース – フィックスターズ、2.5インチ9.5mm厚 SSDとして世界最大容量の6TB SSD「Fixstars SSD-6000M」を発売
http://www.fixstars.com/ja/news/?p=894

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