顧客の心理を突く有効な価格戦略あれこれ

By Daremoshiranai

スーパーや家電量販店で買い物をしていると「199円」や「2980円」といった価格設定は地域を問わず見かけられます。それらの価格には消費者の認識や行動に基づいた心理学の効果が応用されているのですが、販売業を営む人からオークションへ私物を出品する時まで、幅広く役立ちそうな「価格設定の心理学」を使った価格戦略がイラスト付きでまとめられています。

Psychology of Pricing: A Gigantic List of Strategies
http://www.nickkolenda.com/psychological-pricing-strategies/

◆1:価格を決定する
製品の価格を決定するにあたって、さまざまな要素を考慮するコンジョイント分析という調査方法がありますが、他にも製品の適正価格には心理学における「認知」「行動」の研究結果を当てはめることができます。

過去2~30年間にわたって、販売業界は「9.99ドル」または「95ドル」のような価格設定を採用してきました。これは実績を伴っていることから長年にわたって使われている価格決定の手法ですが、単に1セント値引きすれば良いわけではありません。例えば、「3.80ドル→3.79ドル」というような1セントの値引きではさほど効果は期待できませんが、「20ドル→19.99ドル」や「3.00ドル→2.99ドル」のように、左側の桁が変化するように1セントを値引くことが効果的。

「3.00ドル→2.99ドル」の場合、価格を目にした時に脳が最上位桁(左端の数字)を無意識にエンコードして「3ドルより安い」と認識するため。たった1セントの値引きでも、視覚的に最上位桁が変動するように表示することで最大の効果を生み出すことができるわけです。


「27.82ドル」と「28.16ドル」とでは前者の方が低価格なのは一目瞭然ですが、英語で発音すると「27.82ドル」の方が音節が多くなります。人間は価格を読む時に脳内で無意識に聴覚でエンコードすることがわかっており、音節が多いほど多くのリソースを必要とするため、長たらしい価格は実際の価格よりも高く感じてしまうとのこと。そのため価格設定に迷った時は、口に出して言いやすい価格にするのがベター。


◆2:顧客の認識に影響を与える
オンラインで製品を販売すると、価格に加えて送料を考慮する必要があります。サイトによっては「送料込みの価格」で表示されていることがありますが、送料や手数料は分割して表示する方が良いとのこと。これは顧客が分割された製品価格と送料との合計を計算する時、顧客を製品価格に対して固定させられるためで、他の製品と対比しやすくする効果があります。(PDFファイル)2006年にオークションサイト「eBay」で行われた実験では、複数の同じ音楽CDを出品して、「送料込み」に「送料別」分けて比較したところ、送料別のCDの方が高値がつく傾向にあったことが判明しています。


例えば、499ドルのオンラインコースを販売する場合、一括払いよりも99ドルの5回払い(合計495ドル)というオプションをつけることは非常に効果的。たった4ドルを値引きしただけですが、分割払いの小さな価格設定があるだけで、顧客の無意識下には「99ドル」という価格が残るため、同じ価格設定の他社と比較する時に99ドルのオプションがある方が安く感じられるとのです。


「月額14.99ドル」を「1日49セント」のように1日ごとのコストに分割して表示するだけでも、上記と同様の効果が期待できます。また「毎日のコーヒー1杯分」のように1日あたりの商品コストと毎日かかるコストとを比較しても同じ結果を得ることができます。


値札の価格の位置は顧客の視覚的な認識に影響を与えることができます。同じ値段でも値札の上側より「左下」にした方が安く感じられることがわかっており、これは高い場所にあるものほど「上等な品」と関連付いてしまうため。


値札のフォントの大きさが人々の認識に影響を与えることもあります。安く売りたい製品の価格は小さく表示することで、文字通り「小さな価格」という認識を与えることが可能。また、文字と文字の幅は狭い方が低価格な印象を与えられることもわかっています。


できる限り価格のコンマを除去して表示することで、上記で述べた文字間隔の効果を最大化することができます。これは前述の「音節数」も関係しており、「1,499(One-thousand four hundred and ninety-nine)」だと10音節ですが、「1499(Fourteen ninety-nine)」だと5音節に短縮できるという効果も期待できるわけです。


オークションサイトなどで出品する場合、最低落札価格をあらかじめ表記しておくのがベター。「最低落札価格:23.47ドル、入札価格:15ドルから」という風に、初期値を高値で始めることができ、結果的に売り手は最低価格より高値を得る可能性が高くなるとのこと。これは先に提示された金額が実際価格より安いと感じる傾向にあり、顧客は最低落札価格より高値をつけても「損はしていない」と考えるためです。


◆3:購買意欲を促す
人間は金銭を支払って何かを購入する時、痛覚に似た「(PDFファイル)払う痛み」を実際に感じると言われています。支払いでお金が手から離れる瞬間や、その後にお金を消費したと感じた時に痛みが発生するとのこと。Uberはこれらの支払いのタイミングをなくすことでタクシー産業に革命を起こしましたが、ちょっとした工夫で誰でも簡単に顧客の「払う痛み」を軽減して購買意欲を促すことができるいくつかの方法があります。

例えば以下はレストランのメニューですが、(PDFファイル)通貨記号の表記をなくすだけでも、払う痛みを軽減する効果が期待できます。ただし、この手法はドルであればドルによる支払いが明確化できるレストランのような場所のみ使用できます。通貨表記がなくなることでビジネスの信憑性を損なう場合は信憑性の保持を優先する必要があります。


複数の製品をセットにして販売する「バンドル・パック」でも、顧客の「払う痛み」を軽減することが可能。ただし、あり合わせの製品をまとめるのではなく、関連性のある製品をセットにする必要があり、同時に購入すると「実用的」であることが分かる文言を一言つけ加えるのが大事。例えば2010年の研究によると、ブレンダーとランプのセットを販売する際に「魅力的なカクテルを作ろう!」と「ヘルシーなシェイクを作ろう!」という2種類の文言を付けて同価格で販売して比較したところ、ランプとの関連性が想像できる前者の方がよく売れたそうです。


また、バンドル・パックを作る時に、安い製品と高い製品の組み合わせは御法度。(PDFファイル)2012年の研究によると、被験者グループに「家庭用ジム」と「スポーツジムの1年会員チケット」のプレゼントを選んでもらったところ、被験者たちの選択はおよそ半々に分かれました。別のグループに「家庭用ジム+フィットネスDVD」と「スポーツジムの1年会員チケット」を選んでもらったところ、DVDが付いた前者を選ぶ確率は35%まで減少したとのこと。安い製品は高い製品の価値を損なう可能性があるわけです。


ギフトカードやカジノのチップのようなシステムが一般的になったのは、顧客がその都度現金を支払う必要がないというシステムが便利であるため。例えば自分の会社だけで使える10ドル分のチケットを顧客のアカウントにチャージするなど、現金を使わずに済む支払い方法を用意することで、顧客の払う痛みを減らして購買意欲を促すことが可能です。ただし、どこでも使える現金をプレゼントしても、良い効果は期待できません。


また、支払い可能なアカウントを作った時は「現金」を連想できないようにするのがベター。例えば10ドルをチャージすると11ドル分の価値を持つ「コイン」に変換されるなどの工夫が必要です。


◆4:収益を最大化する価格戦略
製品は一度購入されれば終了ではなく、リピーターの獲得につなげて長期的な収益を作り出す必要があります。ビジネスを継続しているとインフレーションや材料費の高騰などによる値上げの時期が必ず訪れますが、ほとんどの消費者が値上げの正当な理由まで考えていません。そこで継続して製品の販売を続けるための価格戦略を取り入れることで、収益を継続して最大化していけるようになるとのこと。

突然の値上げによる顧客のネガティブな反応を防ぐ唯一の方法は、定期的に値上げを敢行することです。1~2年目まで80ドルだった製品が3年目で突然85ドルに値上げとなるより、段階的に少しずつ値上げする方が顧客への影響を少なくとどめられます。


少しずつ値上げしても顧客に気付かれないわけではなく、特に食品業界では消費者が製品価格の変動にとてもシビアです。そのため、少しずつの値上げができない場合は、物理的な製品の分量を減量することで値上げを回避することができます。製品の小型化は、ネガティブな注意をひかずに収益を増加できるのがポイントで、製品の小型化を決定した時は「高さ・幅・長さ」という3次元のサイズを小型化するのがベターとのこと。


顧客の状況に合わせて価格が変動する「ダイナミック・プライシング(価格変動設定)」は、販売側の利益を最大化できる魅力的な手法ですが、長期的な販売力を低下させるとも言われています。ダイナミック・プライシングは需要と供給に基づいた価格調整ができれば有効なものの、顧客の支払い能力に応じて価格を変動してしまうと悪評が立ってしまうので、もしダイナミック・プライシングを導入する場合は注意が必要です。

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