サイエンス

タマネギの皮から新しいタイプの人工筋肉を作成することに成功

By Hafiz Issadeen

国立台湾大学の研究チームが、電圧をかけることで収縮したり膨張したりすることが可能な人工筋肉を開発することに成功しました。この人工筋肉の素材となるのは、なんと「タマネギの皮」とのことです。

Onion artificial muscles
http://scitation.aip.org/content/aip/journal/apl/106/18/10.1063/1.4917498


This new artificial muscle is made from gold-plated onion skin | The Verge
http://www.theverge.com/2015/5/5/8551715/artificial-muscle-onion-skin-soft-robotics

国立台湾大学の研究者が発表した新しい人工筋肉の開発方法は、これまでの人工筋肉に関するテクノロジーとは全く異なるもので、タマネギの皮を使用するものになっています。タマネギの皮で作られる人工筋肉は、タマネギの独特な細胞構造により、収縮したり伸長したりが可能となるそうで、ロボット工学やヘルスケア分野にとって非常に重要な意味合いを持つものになる可能性がある、とのこと。研究者は同じような構造を重合体(ポリマー)で作ろうと試みていたそうですが、タマネギの方がはるかに安価で素晴らしい代替案になるそうです。

タマネギから人工筋肉を作り出すプロジェクトに参加しているエンジニアのウェン・ピン・シーさんは、「タマネギの皮からできた人工筋肉は、人間の筋肉のように伸長と収縮を同時に行えます。それに対して、これまでの人工筋肉では『伸長』や『収縮』といった異なる動作を同時に行うことは不可能でした」と、プロジェクトで作成した人工筋肉の利点について語ります。

By Lin Mei

人工筋肉を作成するのに使われるのは、タマネギの最も外側を覆う皮の下にある薄膜層。この非常に薄いぬめっとした膜は、動物の筋肉のように伸縮性があり電気に対しても敏感、という特性を持ち合わせています。これらの特性は、薄膜部分の細胞が独特な格子構造を持っているため生じる特性とのこと。


人工筋肉を生成する際、まずはタマネギの薄膜をフリーズドライ処理し、中から水分を除去します。次に、薄膜の伸縮性を高めるため、薄膜を希硫酸に漬け込みます。そしてタマネギの薄膜表面に金の層を貼り付け、これに電極をつければ、タマネギの持つ基本特性の上に機械工具を動作させるための機器を取り付けられるようになる、とのこと。


作成した人工筋肉は、低電圧をかければ膨張、高電圧をかければ収縮させることが可能です。


研究では、タマネギから作った2つの人工筋肉を使って綿製の小さなボールをつまみ上げることにも成功しています。ただし、現在のところ人工筋肉が1度に持ち上げられるものの重さは約2ミリグラムまで。これに対してシーさんは、次のステップでは人工筋肉のパワーを強化し、使用電圧を低くすることを目標としている、と語っています。


国立台湾大学の研究チームは、「我々はまだ完璧に細胞壁とその特性について理解しているわけではありません。発表内容は、これまでに発見したアイデアを公開するためのものです」と、研究成果の発表はあくまで進捗報告であり、研究がゴールをむかえたわけではないと述べています。

現在のテクノロジーでは、人工筋肉は伸長・収縮・回転といった機能のうちひとつを実現するに限られているわけですが、いつかはひとつの人工筋肉で3つの機能を実現できるようになる、とエンジニアは信じているそうで、それを実現するのはタマネギの皮からできた人工筋肉の可能性もあり、さらなる研究に期待がかかります。

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in サイエンス,   , Posted by logu_ii

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