女性の閉経によるうつ病患者の臨床試験から判明した意外な結果とは?

By Max Boschini

女性の多くは40歳を超えると生理の周期が不規則になり、50歳頃になると閉経を迎えます。閉経後には卵巣から分泌される女性ホルモンのエストロゲンがほとんどなくなるため、更年期障害を引き起こす可能性が高まります。さらには、閉経を迎えたことで身体的な問題だけでなく、うつ病などの精神疾患を患ってしまうケースもみられます。閉経によるうつ病に対する有効な治療法を調査すべく、メキシコ国立工科大学の研究チームが臨床試験を実施したところ、意外な結果が明らかになりました。

PLOS ONE: Individualized Homeopathic Treatment and Fluoxetine for Moderate to Severe Depression in Peri- and Postmenopausal Women (HOMDEP-MENOP Study): A Randomized, Double-Dummy, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial
http://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0118440

うつ病に対して使用される治療法の1つにホメオパシー療法というものがあります。これは、ドイツ人医師サミュエル・ハーネマン氏によって体系化された医療で、「ある病気や症状を起こしうる薬や『もの』を使って、その病気や症状を治すことができる」という考え方に基づいているもの。その一例を挙げると、不眠症の患者に対してカフェインを含むコーヒーから生成される物質を含めた薬を投与するというようなもので、ある症状を引き起こすと考えられる物質(この場合はカフェイン)を患者にほんのわずかの量を投与することで、患者の持つ自然治癒力に刺激を与えて完治を目指す、という治療法となっています。この時に用いられる薬は「レメディー」と呼ばれています。

By Bindaas Madhavi

閉経周辺期や閉経後にうつ病を患った人にもホメオパシー療法が施されることがありますが、その効能に関する臨床試験は不足しているのが現状。こういった状態を踏まえて、メキシコ国立工科大学の研究チームが閉経周辺期や閉経によるうつ病患者に対するホメオパシーの安全性や効能を調べるべく臨床試験を行ったというわけです。

臨床試験には、レメディーを使ったホメオパシー療法と、薬理学的に活性を有さないニセ薬であるプラセボ、そして一般的な抗うつ剤を使用して効果を比較する「3群試験」という方法が使われました。薬の有効性を科学的に評価するには、薬を投与したのと、投与しない場合の比較が必要になります。要するに、信頼に値する結果を得るためには、ホメオパシー療法の観察だけでは不十分で、プラセボを投与した場合との比較が必要になるわけです。

研究チームは閉経周辺期や閉経後にうつ病を患った534人の被験者を「1:ホメオパシー療法のレメディーと、抗うつ剤のプラセボ」「2:レメディーのプラセボと抗うつ剤」「3:レメディーと抗うつ剤のプラセボ」を投与する3つのグループにわけ、薬の投与や経過の診察を6週間にわたって行いました。

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6週間にわたって行われた臨床試験の後にハミルトンうつ病評価尺度ベックのうつ病調査表(BDI)、グリーネうつ病評価尺度(Greene Climacteric Scale)、といううつ病の尺度を調査するテストを行い、さらに、それぞれの薬の投与による効能のデータをボンフェローニ法というポストホックテストで分析。

点数が低いほどうつ病の程度が低くなるハミルトンうつ病評価尺度の結果では、レメディーと、抗うつ剤のプラセボを投与されたグループ1が、レメディーと抗うつ剤のプラセボを投与されたグループ2より5ポイントも低かったことが判明。また、うつ病の症状がもともとの悪い状態から半分以上減少したことを示す反応率は54%でした。つまりグループ1の被験者のうち54%が「もともとの症状が半分以上減少した」ということになります。また、病気の症状がほぼ消滅したことを示す寛解率は15.9%で、約16%の人が完治に近い状態になりました。ただし、3つのグループの間で寛解率に大きな差は認められず、むしろ反応率に違いが顕著に出たとのこと。

また、ベックうつ病調査表では3つのグループ間に大きな違いは生まれず、グリーネうつ病評価尺度においては、グループ1が最も効能が高かったという結果になりました。

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上記の分析結果から、研究チームは「ホメオパシーは閉経周辺期や閉経後にうつ病を患った人の治療に有効でかつ安全である」と結論づけています。また一方で、実質的にホメオパシー療法のレメディーしか投与されなかったグループ1と、実質的に抗うつ剤のみを投与されたグループ2、そしてプラセボしか投与されなかったグループ3の間で、寛解率がほぼ同じであったというのは興味深い結果と言えそうです。

一方で今回の研究結果に疑問を抱く意見があるのも事実です。 トゥウェンテ大学で物理学者を務める一方でIT関連メディアのArs Technicaに記事を寄稿するChris Lee氏は「メキシコ国立工科大学が発表した論文は問題を多く含んでおり、また、この論文を掲載したPLOS Oneは今回のように稚拙と言わざるを得ない論文を通す傾向があります。PLOS ONEの理想を求めるようなアプローチには賛成ですが、ホメオパシーを研究題材にした論文を掲載するのは、その研究で用いられた方法が正当である場合のみです。今回、PLOS Oneが論文を掲載したのは失敗だと思います」と述べており、信頼性の不備を指摘する声もあります。

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in サイエンス, Posted by darkhorse_log