ASUSのジョニー・シー会長に単独インタビュー、ZenFone 2の美しさとは、ASUS急成長の秘訣とは、究極の夢とは何かについて聞いてきました


ASUSのSIMフリースマートフォン「ZenFone 2」の日本販売が発表された新製品発表会「Experience 2morrow」の翌日に、ASUSのジョニー・シー会長に単独インタビューを行い、ZenFone 2がどれほどのこだわりを持って作られているのか、ASUS大躍進の鍵を握る「社是」とは何か、新しいコンピューティング時代が到来する中で大切にすべき価値とは何か、そしてASUSの目指す究極のゴールとは何かなどについて、たっぷりと聞いてきました。

GIGAZINE(以下、G):
早速なのですが、昨日発表されたZenFone 2とスマートフォン市場について。ASUSは日本のSIMロックフリースマートフォンのシェアNo.1に躍り出ており、スマートフォン市場のキープレイヤーになっています。日本のスマートフォン市場についてどう考えているのか、世界市場との関係において日本市場にどのような「重み」を置いているのですか。

ジョニー・シー会長(以下、シー会長):
日本市場はいつも私にとって個人的に特別なマーケットです。なぜかというと、私自身が日本のユーザーに対して大きな尊敬の念を抱いているからです。日本のユーザーは非常に高いクオリティを求めており、それが私に尊敬の念を抱かせる理由となっています。


シー会長:
また、2015年5月から日本で始まるスマートフォンのSIMロック解除というタイミング、さらには新しい「モバイルの時代」が到来しているということで、新たなチャンスが生まれてきていると考えています。他のグローバルなマーケットとの比較ですが、ASUSは今回のZenFone 2発表以前から日本のマーケットを尊重してきましたし、大きな機会として期待を寄せています。そしてSIMフリー時代の到来によって、日本のスマートフォン市場が「爆発」していって欲しいと期待しています。それが日本のスマートフォンユーザーにとって、きっと良いことだと考えています。

グローバルではすでにオープン化という「メガトレンド(世の中の大きな流れ)」があります。日本のSIMロック解除はそのトレンドに合っていると思います。

G:
ZenFone 2の販売について今後、どのような展望がありますか。

シー会長:
ZenFone 2の発表会でもお話したとおり、ASUSの目標として、誰でも気軽に堪能できる「ワンランク上の贅沢」をお届けしたいと考えています。


シー会長:
ASUSのグローバル市場におけるモバイル端末の販売状況ついてお話しすると、それまで1カ月あたり1万台だった出荷台数がZenFone 1(注:2014年にリリースされたZenFone 4/ZenFone 5/ZenFone 6などの第1世代のZenFoneシリーズを指す)を導入して以降、月次あたりで150万台に成長しています。トータルでいうとZenFone 1は800万台の出荷台数ということになります。

しかし、ZenFone 2はよりグローバルなモデルにしたいと考えています。出荷台数のターゲットは2500万台に設定しています。


G:
ASUSはこれまでにマザーボード、ノートPCなどにおいて、確実にしかも非常に速いスピードでシェアを獲得してきました。世界中のマーケットで勝ち続けているASUSが、次はスマートフォン市場でも勝つのではないかと思わせているのですが、いわゆるレッドオーシャンで勝ち続けてこられた「秘訣」は何なのですか。

シー会長:
ASUSがスタートしたとき、私の夢は「小さいけれど『美しい会社』を作りたい」ということでした。そのころの私は技術者として、テクノロジーにクレイジーなほど打ち込んでいました。そういうこともあり、ASUSの企業文化というのは「技術主導型」で、技術という土台の部分が強くなっています。

大きなトレンドを見ると、通信、家電業界、オーディオ、ビデオなどすべてデジタル化しています。それはすべてが「コンピューティング化」しているということです。つまり、コンピューティングテクノロジーが鍵となってくるということです。そういう意味でASUSはこれらの分野において非常に強い土台を持っています。


シー会長:
ASUSはこれまでクオリティを非常に重視してきました。例えば、トヨタのリーン生産方式や西洋文化で言えばシックス・シグマなどの手法を社内に取り入れたりしています。それがEeePCを始めるきっかけにもなりました。「Design Thinking」つまり「デザインを考えていく」というアプローチを社内全体で取り組んできました。これは社員の中でも特にエンジニアがユーザー視点で、人の視点で、ユーザーエクスペリエンスを重視したものづくりをしようということです。言ってみれば右脳も左脳も活かしてやっていこうというアプローチでもあります。Design Thinkingによってイノベーションが完全なものになると考えています。

ZenFone 2を見ていただいても、美しさを非常に重視しているのがお分かりいただけると思います。私たちは「Designability」と呼んでいるのですが、お客様のニーズつまり感情と合理性の両方を満たしていかなければならないと考えてます。


そのために、一つはビジネスとしての有効性、これは「Business Buyability」と呼んでいるのですが、コストやスケジュールの管理を徹底するということを大切にしています。ただ、何よりも大切であり、かつチャレンジングにもなってくるのは、「それが技術的に実現可能なのか?」というところです。この部分に関してはASUSはしっかりとした技術的な土台を築いてきたと考えています。

G:
ZenFone 2で重視した「美しさ」について詳しく教えてください。これは外観のデザインの美しさということですか。

シー会長:
ご覧の通り、画面占有率が非常に高くなっています。バックパネル側は同心円状のヘアラインが入れられたデザインで、表も裏もデザインを非常に重要視しています。また、美しさは外観だけではありません。


(シー会長がZenFone 2のバックカバーを取り外そうとするがなかなか外れない)

G:
私の手元にもZenFone 2があるのでやりましょうか?台湾まで買いに行ったのです。

シー会長:
Oh!そうだったのですか。はるばる台湾まで、ありがとうございます。


シー会長:
ご覧の通り、デュアルSIMスロットを搭載していますが、この部分は詰め込みスペースを非常に意識しています。バッテリーをより下に(液晶側に)詰め込むことでスペースを確保しているのです。また、アンテナは本体の中央部分に搭載しており、信号を飛ばしやすくしています。

ZenFone 2では新たなブレイクスルーを実現するということで「性能怪獣(パフォーマンスモンスター)」をテーマに掲げています。Intelの高性能チップやデュアルSIMスロット、microSDカードスロット、など様々なコンポーネントを詰め込む必要があるのでスペースの確保は非常に大切な技術となっています。


シー会長:
外観についてですが、金属のデザインを好むユーザーは多いです。しかし金属部材にしてしまうと、電波を受け取りにくいという問題があるかと思います。そこで、NCVMという特殊な真空メッキ技術を用いることで、アンテナ信号の感度を損なわず、メタル感を出せるようにしています。

また、ボリュームキーを背面に配置しましたが、これは人間工学の観点からで、スマートフォンの持ちやすさとボタンキーの押しやすさを両立させています。さらに、すべてを平面のフラットな形状にするのではなく、丸みを帯びた形にすることでホールド性の良さを実現しています。


シー会長:
ZenFone 2に関して言えば、美しさ、高いパフォーマンス、コストパフォーマンスを意識した製品に仕上がっています。また、カメラ機能も重要視しています。ASUSには「ダヴィンチラボ」という名前の研究開発所があり、研究所のカメラ部門では光学分野の専門家やPh.D.保持者などが活躍してくれています。彼らの研究によって独自の「Pixel Master」技術を開発することができました。


シー会長:
Pixel Masterについてご説明すると、暗い場所でも日中の明るい場所でも解像度を犠牲にすることなく写真を撮ることができるという技術です。会社によってはピクセルをあえて大きくすることで暗い場所での撮影に対応していることがありますが、そうすると日中の明るい場面で解像度を高く保つことができなくなってしまいます。しかし、ZenFone 2はPixel Master技術を使うことで暗い場所でも明るい場所でも高画質の写真を撮ることができるようになっています。例えば、ZenFone 2は1ルクス以下の非常に暗い場所でも写真を撮ることができ、これはiPhoneやGalaxyではできないことかと思います。

暗いところでの撮影と同じく重視しているのが、日中の逆光での美しい撮影についてです。ZenFone 2にはスーパーHDR機能を搭載しました。発表会でお見せしたとおり、iPhone 6やXperia Z3と比較しましたが、逆光環境下では色の違いがはっきりしていると思います。


シー会長:
また、急速充電技術にも特長があり、39分で60%の急速充電が可能になっています。以上の通り、ZenFone 2では妥当な価格でワンランク上のエクスペリエンス(ユーザー体験)をお届けすることができると考えています。

これらの要素が合わさることで「武器」になっていると思います。それが先ほどの「秘訣とは何か?」という答えになるのかもしれません。それは、より高いバリュー、素晴らしいエクスペリエンスを届けることです。ZenFoneを開発するに当たっては常にiPhoneやGalaxyなどとも比較しています。そして、比較しつつも同時に妥当な価格というものを出していかなければいけません。高いパフォーマンスを妥当な価格でお届けするためにDesign Thinkingにおいても技術の向上においても、いろいろな努力が必要になってくると思います。

G:
たしかな技術の裏づけと、Design Thinkingという思想があることが理解できました。ユーザー視点、先ほどは「人の視点」とおっしゃいましたが、ASUSの企業文化が「人ありき」というのがよく現れている思います。東日本大震災の後にASUSがマザーボードに「GOD BLESS JAPAN(日本に神のご加護を)」というプリントを施したことを、強烈な印象で覚えているユーザーも多いと思います(注:東日本大震災の発生後、ASUSの技術者が日本の一日も早い復興を祈って独断で実行したもの)。このようなASUSの「人ありき」の企業姿勢は社是ですか?


シー会長:
お褒めのコメントをいただいたと解釈しています。ありがとうございます。ビジネス環境がどうであれ、鍵となるのはユーザーです。と同時に、会社にとっては社員が鍵となります。弊社は社是の最初に「社員を育成し、鼓舞し、モチベーションを高め、それによって各社員のポテンシャルを最大限に引き出し花開かせること」というものを据えています。ASUSにとって最も大切な資産は「人」なのです。


シー会長:
そして、Design Thinkingにおいてコアになるのは先ほど述べたとおり「ユーザー」です。今日においてはインターネット、特に新しい波であるモバイルインターネットがあるので、世界中のどこであっても「ユーザー中心」というのがメガトレンドとなっていると思います。インターネットを通じて簡単にユーザーにリーチすることができるようになりました。実は、このことがDesign Thinkingにも新しいコンセプトをもたらすことになっています。

それは、「常に改善、常にアップデートを加えなければならない」ということです。すなわち、「ユーザー」と「デザイン」と「プロダクト」と「エクスペリエンス」と「口コミ」つまり「マーケティング」などが、すべて1つになっているということを意味しています。

昔のマーケティングのやり方というのはとにかく広告を打ち出していくという「一方向」のやり方でした。しかし、現代にはインターネットがあるのでユーザーはもっとインテリジェント(聡明)になっています。そういう状況の中で、最も効果的なのは、「最高のエクスペリエンス、最高のユーザー体験をお届けする」ということ。そして「正直であること」です。そういうことが口コミにつながります。それによって1つループが閉じるというか、サイクルができるということになります。


G:
インタビューの冒頭で、「小さいけれど美しい会社を作りたかった」と話されましたが、今やASUSは「大きな会社」になっています。ASUSは「大きいけれど美しい会社」を作っていくということですか。

シー会長:
ありがとうございます。私自身がもともと、とにかく「技術」志向という人間でした。創業間もない頃のASUSが、ハードウェアの面でもソフトウェアの面でも、当時のアメリカのエンジニアにも負けず劣らずであったことを、誇りに思っていました。しかし、時を経るごとにいろいろと責任が増えてきたので、ある時以降は、社員のポテンシャルに頼らざるを得なくなってきました。今では各社員に自分のポテンシャルを最大限に発揮してもらうということを期待し、信頼しています。


シー会長:
日本の著名な起業家の稲森さん(京セラ創業者の稲森和夫氏)が言っていたことなのですが、彼も最初は技術がすごく楽しかったけれど、会社をより素晴らしい組織にしていくためには、すべての社員の強み、力、努力などを集結させなくてはならないと考えたそうです。そういう会社を取り巻く状況の変化を考慮すると、ASUSにおける新たな目標というのは、社員を大切にするということ。また、有形無形両方のリターンを手にするということを重要視しています。夢も進化していくということですね。

ということで、今の私の夢というのは、ハイテクノロジーの分野においてグローバルなブランドを築いていくこと。先ほどお話ししたとおり、新たなデジタルの時代が来ているのでその中で新たなチャンスをつかんでいくこと。そして、まだまだ目標にはほど遠いのですが、世界の中でも最も憧れられる企業の一つになることです。


シー会長:
最も憧れられる企業というと今は間違いなくAppleがその一つでしょうね。AppleのようにすばらしいDesign Thinkingという思想を持っている企業であっても、今もなお改善を繰り返している途中だと思います。そしてスティーブ・ジョブズでさえも、場合によってはDesign Thinkingを正しくできなかったというケースがあったかもしれません。彼はスクリーンは小さくあるべきだと、3.5インチがベストだと主張してきました。しかし、その後、時間をかけて4インチ、4.7インチとディスプレイサイズが大きくなってきましたが、それによってSamsungに3年の猶予(技術的に追いつくための時間的猶予)を与えることにつながったと思います。

もともと携帯電話端末は音声から始まったので、スタート当時はスクリーンサイズはそれほど重要ではなかったかもしれません。しかし、今、ユーザーの視点で考えれば、音声はメールやLINEなどに置き換わってきています。携帯端末はコンピューティング端末になってきているのでスクリーンサイズが重要になってきています。つまり、Design Thinkingによって大きなインパクトが生まれ得るということだと思います。

みんながみんな進化している。たとえ今、No.1だとしても常に変化、進化していかなければならないということだと思います。


G:
少し話を戻させていただきたいのですが、先ほど日本は個人的に特別なマーケットだとおっしゃいました。また、トヨタのリーン生産方式や京セラの稲森氏の話も出ました。シー会長には日本に対して特別な思い入れがあるように感じるのですが、何か理由があるのですか。

シー会長:
そもそも、台湾が日本からとても大きな影響を受けたという歴史があります。私の親も日本の教育を受けましたから日本語を話すことができます。しかし何にもまして、日本のクオリティ重視という考え方、創意工夫をこらす技巧・職人の技、そして日本の考え方つまり「精神」から大きな影響を受けたということがあります。それが「禅」の精神です。オリジナルである中国の禅の精神だけでなく日本の禅の精神からも大きな影響を受けています。そういう日本の精神からインスピレーションをもらっているということが理由です。


シー会長:
日本の禅マスターである鈴木大拙さん、その100年後に現れた禅マスターの鈴木俊隆さん。この二人の鈴木先生が広めた禅の精神が私に影響を与えています。鈴木俊隆先生とゆかりのある乙川弘文さんにジョブズが師事していたことも、奇遇と言えば奇遇ですね。

大きな影響を受けた日本の文化だけでなく、世界の文化に目を移すと、どんどん融合してきていると思います。そういう中でプロダクトに改善や進化が加えられてきています。インターネットや新しいメガトレンドが生まれてきているという状況の中では、このような文化の融合というのは良いことだと考えています。どんな文化も良いところと悪いところを持ち合わせているので、それぞれの文化の「いいとこどり」というコラボレーションができれば、とても良いモノが生まれると思います。


私たちのような古い世代の人間とは違って、若い世代の人たちには、そのような状況を尊重して良いコラボレーションができる土台があると思います。若い人たちはシェアすることに慣れています。責任を共有する「オープンソース」の概念も理解している世代ですから。

私たち古い世代は資本主義を重要視してきました。もちろん資本主義には良い面があるのですが、同時に悪い面もあります。今、世界がハイブリッドの関係に移り変わっている、そういう中で文化が融合すると言うことはとても良いことだと思います。


G:
本日はお忙しい中、本当にありがとうございました。

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