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優秀なチームを作るための新しいアイデアとは?

By Steve Corey

大きな企業であるほどにビジネスはチームで動くようになりますが、これまでチーム育成においてあまり重要視されていなかった「コミュニケーション」における研究をMIT人間工学研究所が行っています。研究結果からは、「コミュニケーションがチームの中でどのように作用するのか?」ということが判明しています。

The New Science of Building Great Teams - HBR
https://hbr.org/2012/04/the-new-science-of-building-great-teams


MIT人間工学研究所は、チーム育成における「コミュニケーション」の影響力を研究しています。研究対象には病院の術後病棟・銀行の顧客対応チーム・コールセンターなどが選ばれ、研究チームは全員に「誰とどのくらい話したか」「声のトーン」「ボディーランゲージ」といったコミュニケーション・データを収集できる「電子バッジ」を配布しました。収集したデータを分析したところ、「コミュニケーション」の要素は優れたチームを作るにあたって重要な役割を果たしており、今までチーム育成に重要視されていた個人の「知能」「人格」「能力」「ディスカッション能力」といった全ての要素を組み合わせた能力に匹敵するほどの重要性を持つことが判明しました。

By David Cosand

6週間にわたって収集したデータによると、大きく分けて「チームのエネルギー」と「会議外のやり取り」という2つの要因が生産性を向上させる鍵となっており、チームによっては生産性の3分の1を変動させていたとのこと。この結果を受けた研究チームは、従業員が一度に全員で小休憩をとれるようスケジュールの調整をチームのマネージャーに求めました。従業員にとっては職場を離れて仲間同士で社交的に過ごせるわけですが、全員同時に休憩をとるのは一見すると業務効率が下がってしまうと考えられるため、提案を受けたマネージャーは半信半疑でスケジュールの改定に挑んだとのこと。

この試みによって、コールセンターの中であまり効率が良くなかったチームのAHT(平均処理時間)が20%以上減少し、全体でもAHTが8%の減少を記録したほか、従業員満足度も向上。優秀な効果を発揮したリスケジュールを受けて、銀行のコールセンターを率いるマネージャーは観察期間終了後に合計2万5000人の従業員の休憩スケジュールを変更し、生産性の上昇によって年間1500万ドル(約18億円)の収益増を見込めるようになったとのこと。

By INDIVIDUELL MÄNNISKOHJÄLP

これまでチームの育成に「コミュニケーション」が重要視されていなかったのは、実際にチームのメンバー同士がどのように意気投合するかを計測した客観的データがなかったため。しかし、研究所では過去7年にわたって21の組織のチームから2500人以上のコミュニケーション・データを、実験のために開発された電子バッジによって収集。成功したチームと失敗したチームの比較などを行いながらデータの分析を行うことで、チーム内における詳細なコミュニケーションの動向が分析できるようになっています。

人間工学研究所によると、優れたチーム育成に影響する重要な要素は正確には3つに分かれており、1つ目が「Energy(エネルギー)」。エネルギーはチーム内の「やり取りの回数」で計測可能で、やり取りは「はい」「うなずく」という返事や行動ごとに1回と定義されます。やり取りの回数が多いほどにチーム内にエネルギーが発生するため、対面でのコミュニケーションほどエネルギーが高くなります。電話やTV会議などの遠隔コミュニケーションでも「やり取りの回数」がカウントできるのでエネルギーが発生します。対照的にメールでのやり取りはエネルギーの発生量が最も少ないコミュニケーションとなり、「エネルギーが低い」となるわけです。

2つ目の要素は「Engagement(つながり)」に当たり、チームメンバー内で発生したエネルギーを分配する行為に当たります。3人チームであれば、「AとB」「AとC」「BとC」のような1対1の相互コミュニケーションを指し、「思いついたアイデアを相談する」といった行為を多くのメンバーと行うほどに有限のエネルギーをチーム内でうまく回せるわけです。例えば投資決定をチームで相談する場合、「一部のメンバー同士でつながりが多いチーム」と「チーム全体でつながりが多いチーム」では、後者の方が有益な判断を下せるとのこと。


3つ目の要素は「Exploration(探検)」で、別のチームの人など、チーム外の誰かとのやり取りを指し、優れたパフォーマンスを発揮するチームには外部との接続を求めるメンバーが多い傾向にあることがわかっています。特にクリエイティブなアイデアが求められるチームにおいて、チーム外部とのコミュニケーションは全体像のリフレッシュに不可欠とのこと。ただし、「つながり」「探検」はどちらもエネルギーや時間を要するため、両立が難しい要素。有限のエネルギーをうまく内外に振り分けることが成功の秘策になるわけです。


なお、研究所の収集データによると、メンバー間のやり取りが増加するだけでもチーム全体の効率が35%上昇することがわかっています。優れたチーム育成を狙うマネージャーは、チーム内の3つの要素を高まるように采配することが不可欠ですが、「コミュニケーションの質」も考慮する必要があります。例えば、従業員同士のコミュニケーションの場として「飲み会」というアイデアがありますが、電子バッジの収集データはこれらのイベントにあまり効果がないことを示しています。対照的に、会社の食堂の机を長くして、知らない人が隣に座る機会が多くなると、チームに非常に良い影響が現れているとのこと。

また、生産性・クリエイティビティの両方において優れたチームに注目したところ、全メンバーと均等にコミュニケーションをとりつつ、チームメイト同士の間を取り持ってアイデアを広げられる理想的なリーダーがチーム内に配置されていることがわかりました。研究所が「カリスマ的コネクター」と呼ぶこのような人物がチームにいるだけでも、優れたチームに発展しやすくなります。

By Adrien Sifre

このように、MITの人間工学研究所はチーム育成を今まで考えられていなかったさまざまな要素が影響する「新しい科学」と考えています。電子バッジに組み込むセンサーの発展や小型化につれて、ストレスのないデータ収集や、さらなるチーム育成の要因が発見される可能性もあります。将来的には「長距離ワーク」や「異文化間ワーク」の働き方を著しく改善できると研究所は考えており、成功すればグローバル経済の発展にも貢献できるということです。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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