「声優だけはやめておけ。」と声優・大塚明夫が綴った「声優魂」


ゲーム「メタルギア」シリーズのソリッド・スネーク役、「攻殻機動隊」シリーズのバトー役、「ワンピース」の黒ひげ役のほか、洋画でスティーヴン・セガールやニコラス・ケイジ、デンゼル・ワシントンの吹替などを行っている俳優・声優の大塚明夫さんが「声優魂」という本を出しました。大塚さんはかつてマチ★アソビ vol.8の講演の中で声優という職業を続けていくことの難しさを語ってくれましたが、この本ではさらに広く深く、声優という仕事について綴っています。

「声優魂」大塚明夫 - 星海社新書 | ジセダイ
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『声優魂』大塚明夫メッセージ_発売開始編 - YouTube


表紙はこんな感じで、タイトルの「声優魂」よりも帯につけられた「声優だけはやめておけ。」というメッセージの方が強烈に目に飛び込んできます。


「これは大塚明夫ファンが読む本ではない。読んだ人が、大塚明夫ファンとなる一冊である。」とのこと。


ぺらっと目次を見てみると、第一章が「『声優になりたい』奴はバカである」、第二章が「『演じ続ける』しか私に生きる道がなかった」と、刺激的な見出しが続きます。


「はじめに」の中でも、大塚さんはいきなり結論として「声優だけはやめておけ。嘘偽りなく、これだけです。」とバッサリ。なぜ大塚さんがその結論に至ったのか、その仕事・人生・演技論がこの本には詰まっています。


第一章「『声優になりたい』奴はバカである」には、「声優」をやっていくことの難しさが具体的を交えて書かれています。


そもそも声優という仕事はプロダクションと契約を結んだりしてやっていく個人事業主なのですが、まるで就職先の一つであるかのように捉えている人がいるそうです。さらに、300あるイスを1万人以上が狙うという需給のバランスの悪さ、収入の不安定さなど、声優を続けていくことのハードルはいろいろとあり、大塚さんは声優の世界を「ハイリスク・ローリターン」の一言で表現しています。

この第一章の途中部分まではPDFファイルで試し読みが可能です。

第二章「『演じ続ける』しか私には生きる道はなかった」では、大塚さんの歩んできた道が示されます。


大塚さんと言えば、2015年1月に亡くなった「忍たま乱太郎」山田先生役・「美味しんぼ」海原雄山役などで知られる大塚周夫さんの長男ですが、だからこそ、役者という仕事をしたいとはまったく思っていなかったそうです。しかし、23歳のときに文学座の研究所へ入り、こまつ座を経て、納谷六朗さん・納谷光枝さんと出会い江崎プロダクション(現・マウスプロモーション)に所属。キャリアのキーになったのは、映画「48時間」が日本テレビで放送された時のニック・ノルティの吹替で、このとき“戦友”として一緒に大きなチャンスを掴んだのがエディ・マーフィの吹替を担当した山寺宏一さんだったとのこと。

この章では、大塚さんがソリッド・スネーク、バトー、ライダーといった自らが演じた役について大きくスペースが割かれています。

第三章は「『声づくり』なんぞに励むボンクラどもへ」。


特に刺激的なタイトルですが、ここには「声優とは、いい声を出すことに価値がある」という誤解があるのではないかという大塚さんの思いが込められています。「声」ではなく、いかに「役」を作るか。そして、そのための技術を、他人に褒められることもなく1人で淡々とどれだけ研ぎ澄ましていけるか。生来の才能はもちろんながら、たとえ人気者になろうとも不断の努力がなければすぐに替えられてしまうものであると、大塚さんは業界の厳しさを説いています。

第四章は「『惚れられる役者』だけが知っている世界」。


声優になる道はいろいろとありますが、その中にある「声優専門学校に通う」という道を選ぶ人が多いことに疑問を呈する大塚さん。どうしても専門学校や養成所を経るとステレオタイプな役者が出来上がってしまうものですが、その結果を「ガンダムを一機作るより、量産型ザクをたくさん揃える方が安上がりだし手間もいらない。しかしザクでは世界は変わらない」とした表現は言い得て妙です。

この章では、なかなか外から見ていてはわからない声優とマネージャーの関係についても触れられています。

第五章は「『ゴール』よりも先に君が知るべきもの」。


いかに声優がハイリスク・ローリターンな仕事であるか、そもそも「声優になりたい」というのは単なる思い込みではないのかと説いてきた大塚さんが最後に書いたのは、「ゴールはない」ということ。どんなに出演作が増えてもそれで終わりではなく、完成はしない。ゴールは見えないけれど「だからこそ、面白いんじゃないか」と大塚さんは締めくくっています。

声優になるという夢を見ている人にとっては耳の痛い話が多く、また一方では「自分の席を脅かす若手が増えないように、大塚明夫が吹いているんじゃないか?」と疑ってしまうかもしれませんが、大塚さんはむしろ「かかってこい」と待ち構えていて、「おわりに」の最後にはやがて来るであろう挑戦者へ向けてのメッセージが記されています。普通に就職するよりも圧倒的に厳しい稼業に身を投じるというのがどういうことなのか、覚悟を決めている人でもぜひ目を通して欲しい一冊です。


「声優魂」はAmazon.co.jpでは886円、現在「演劇」カテゴリのベストセラー1位で、発送まで2~3週間待ちとなっています。

Amazon.co.jp: 声優魂 (星海社新書): 大塚 明夫: 本

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in レビュー, Posted by logc_nt