TPPで著作権の保護が20年延長されると何が失われてしまうのか?

By Jose Mesa

TPP(環太平洋パートナーシップ協定)の知的財産を巡る協議が日米間で行われていますが、各国が適用範囲を判断できる余地が残された案が示されたことで、著作権侵害を著作者の告訴なしで起訴できる「非親告罪」が適用となる方向で調整が進んでいると報じられています。アメリカが主張する「著作権の保護期間を原則50年から70年に延長する」という草案も受け入れることになるわけですが、著作権が20年間延長されることで「どのようなことが起こるのか」ということを電子フロンティア財団がまとめています。

A Few Global Cultural Treasures We Will Lose For 20 Years Under the TPP | Electronic Frontier Foundation
https://www.eff.org/deeplinks/2015/02/few-global-cultural-treasures-lose-20-years-under-tpp


アメリカのプロジェクト・グーテンベルクのように、著作権保護が消滅した作品を電子化・公開するというアーカイブが存在しますが、他のTPP協議国でも同様のアーカイブは存在しており、日本では電子書籍の図書館である「青空文庫」に当たります。

著作権が消滅したり、作者が直接自由公開を許可している作品を集めて無料公開しているわけですが、TPP参加後に著作権の保護期間が延長されることで、572人の著者が約半分になることや、2036年まで新しい青空文庫作品が公開されなくなることを意味します。青空文庫は著作権の保護期間の延長に反対しています。


日本以外のTPP協議国に関しては、カナダで自由に公開・共有・復元・複製が許可されている風景画家の7人グループ「グループ・オブ・セブン」の作品や、2010年から楽曲の使用が認められたニュージーランドの作曲家「アルフレッド・ヒル」の楽曲、1973年に死去しているため、マレーシアとブルネイで著作権が消滅しているシンガポールの映画スター「P·ラムリー」の映画作品や、1965年ベトナム戦争当時の歴史的にも貴重なベトナム映画などが影響を受ける可能性があるとのこと。

なお、電子フロンティア財団はTPPによって各国の貴重な文化的遺産が失われることを危惧しており、著作権期間の延長を非難する声明を発表しています。TPPによる著作権の保護期間の延長は、議論の的にもなっているアメリカの著作権延長法(別名:ミッキーマウス延命法)を、国境を越えて適用しようとするものであり、ミッキーマウスのような巨大なコンテンツを持つ企業が著作権を独占することを認めても、日本やカナダなどの諸外国に対する経済的な論理的根拠にはなり得ない、と電子フロンティア財団は主張しています。

著作権の保護期間の延長は、ブルネイ・カナダ・日本・マレーシア・ニュージーランド・ベトナムのいずれか1か国でも反対すれば成立できないため、6か国のいずれかの国籍を持つ人に対して、自国の貿易省(日本は財務省)や国会議員への抗議や、ベルヌ条約による著作権保護期間の制定を主張するべき、と訴えています。

By CHRISTOPHER DOMBRES

なお、カナダではベルヌ条約に従って、死後50年間が経過したイアン・フレミングの小説「007」を2015年1月1日からパブリックドメインとして公開しています。原作に登場するジェームス・ボンドなどの再利用が可能になったため、2015年11月には複数の作家による007小説アンソロジーが出版される予定です。カナダはグループ・オブ・セブンの芸術作品をわずか10年で一般公開するなど、著作権に縛られない方針を打ち出していますが、2015年から日本が著作権の保護期間を延長する方向に同意したことで、「カナダはTPPの著作権項目に関して、アメリカへ圧力をかけるかもしれない」とMichael Geistが報じています。

Reports Indicate Canada Has Caved on Copyright Term Extension in TPP Talks - Michael Geist
http://www.michaelgeist.ca/2015/02/reports-indicate-canada-caved-copyright-term-extension-tpp-talks/

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