取材

天空の城塞「シタデル」などアメリカ大陸で最も貧しいハイチで充実した旅をしてきました


ハイチ大地震の混乱のイメージがまとわりつき、外務省の海外安全ホームページにも危ない話ばかりが載っています。それでも、またとない機会だったので、十分に計画を立てて挑みました。貧しい国という評判も、アフリカを旅した身からすれば、こんなものでしょう。観光客も少ないので、天空の城塞のような世界遺産も、貸切状態で見学できました。

こんにちは、自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンです。観光客もバックパッカーも行くことが少ないハイチでしたが、思い出深い国の一つとなりました。紹介する人も少ない国だからこそ、今回は記事にまとめてみます。

◆ハイチの歩き方
カリブ海に浮かぶイスパニョーラ島は、北海道とほぼ同じ大きさです。西側3分の1がハイチ、東側3分の2がドミニカ共和国と、1つの島に2つの国が存在しています。モスクワからニューヨーク経由の便はドミニカ共和国の首都サント・ドミンゴに到着。聞き慣れた英語やフランス語ではなく、スペイン語を話す黒人は新鮮でした。黒人ばかりの国ですが、ラテンアメリカの空気を感じます。野球のイメージしかなかったドミニカ共和国でしたが、スーパーマーケットが普及し、マクドナルドやイケアもあって、最新式の地下鉄があるという発展ぶりには驚きました。

一方のハイチは、かつて旅したアフリカの記憶が重なりました。はち切れんばかりの人の移動に、道路の端に商売する露店のおばちゃん。どこから流れてくるのか中古の衣服や自転車が並べられているお店もあります。つい最近に軍事独裁から経済成長に舵をとったミャンマーですらスマホが多かったというのに、こちらは未だに旧世代のガラケーが主流のよう。「アメリカ大陸で一番貧しい国」というのも頷けました。現地では旧フランス植民地ということから、フランス語が由来のハイチ・クレオールという言葉が使われています。話す限りではフランス語にかなり近いのですが、文字の表記はだいぶ違っていました。

ハイチ・クレオールで書かれた「津波に注意」の看板。


ハイチへはドミニカ共和国の首都サンド・ドミンゴからカリベツアーのバスが出ています。首都ポルトープランス(Port-au-Prince)は治安が心配だったので、北部のカパイシャン(Cap-Haitien)という街を目指すことに。SpiltMilkというブログを書かれている方が、2014年5月にカパイシャンを訪れていた記事を参考にさせて頂きました。自転車はサンド・ドミンゴの安宿に預かってもらいます。

バス往復の料金が60USD(約7000円)で、別途に行き25USD(約2900円)、帰り10USD(約1200円)のタックスを払う必要がありました。ドミニカ共和国とハイチは同じ島にも関わらず1時間の時差があるので、帰りの便は注意が必要です。バスの料金は、往路だと鶏肉とご飯とスープ、帰路だとスパゲッティという弁当代込。1日目のカパイシャンに到着は夕方、3日目のサンド・ドミンゴへ出発は朝方で、行動できたのは2日目だけでした。

黄色い大型のこのバスで移動。


ハイチの通貨は「グールド」ですが、固定相場時代の名残で5グールドを「1ドル」で呼ぶこともあります。コカ・コーラのペットボトル500mlを5ドルと言われたら、25グールド(約65円)を差し出すのが正解。このお金が、世界で一番と言っていいほど汚れていました。布のようなボロ札はこれまでも見てきたのですが、ハイチのお札は発酵でもしているのか、ほのかに酸っぱい臭いがするのです。地元の人たちの扱いも乱雑で、受け取ったお釣りをクシャクシャとゴミのように丸めてポケットに突っ込んでいました。

世界各国で小額紙幣をコレクションしている私も、さすがにこの国は断念。


コインも使い回され、描かれた人物が誰が誰だか分からない状態に。凹凸も磨り減ってなくなり、ツルツルとした表面でした。


経済が発展することなく、かつ極端に観光客が訪れない国となると、安宿を見つけるのが難しくなります。ハイチも同様でした。カパイシアンのバス停から、ガーミンのGPSを頼りに寝床を探して歩きます。希望は15USD(約1800円)程度でしたが、さすがに見つからず1泊25USD(約3000円)の部屋が精一杯でした。

「LA SAGESSE HOTEL」という名前のホテルに宿泊。


物価からすると10USD(約1200円)程度が妥当と感じた部屋でしたが、選択肢がないなら仕方ありません。


残念なことに電気が来てないので、夜には発電機を回します。調子次第で電球が暗くなったりと、アフリカの旅を思い出しました。


ハイチ庶民の足となるのが、小型トラックの荷台を改造した「タプタプ」と呼ばれる乗合バスです。ガーナの「トロトロ」、タンザニアの「ダラダラ」と同じく、途上国の乗合バスは、いかにもスピードが出なさそうな名前ばかり。貧しいからこそわがままは許されず、体を小さくして肩と肩を詰めて座ります。そんな状態のところにお尻の大きな夫人が乗り込んでくると、乗客一同苦笑い。中央が空いていたのですが、そこに収まらないのは明らかだったので、一番端に座っていた人が中央にスライドしました。平和で穏やかな時間が流れています。

渋滞に巻き込まれたタプタプ。


こちらが車内の様子。中央に陣取った大型スピーカーは、普通に考えると邪魔ですが、地元の人たちには欠かせないのか、陽気なミュージックが流れます。この音楽を聞きながら、荷台から景色が流れていく様は、ミュージックビデオを見ているかのようでした。


短時間ですが、ムービー撮影してみました。まるでミュージックビデオの世界です。

ハイチの「タプタプ」に乗ると景色がまるでミュージックビデオの世界 - YouTube


ゴミゴミとした雑踏は、慣れてないと戸惑うかもしれません。ただ自分はアフリカの経験もあって、逆に落ち着きました。普通の人たちの生活がある場所の中なら、危険の心配もそれほどありません。ハイチでは飲物やお菓子、石鹸やトイレットペーパーといった簡単な物は自国でも生産ができています。アメリカ大陸で一番の貧しい国といえど。アフリカに比べると競争相手となる周囲の国のレベルも高く、恵まれた場所にあると思いました。品揃えはまばらながらも、バーコードを読み取ったスーパーマーケットには感激。

動かない信号の代わりに、交通整理を行うお巡りさん。


ハイチの信号のない交差点を行き交う人とバイクと車 - YouTube


教会のある街。


碁盤の目のように整備されていたので、歩きやすかったです。


物があふれる道端マーケット。


街角の景色。


街に電気がないのにも関わらず、路上では冷えたジュースが手に入ります。本当に貧しい国にはこれすらなかったので、これだけでも上機嫌になりました。


食堂で頼んだ鶏肉とライス。


◆天空の城塞シタデル
このカパイシアンの近郊に、ハイチ唯一の世界遺産「シタデル、サン=スーシ城、ラミエール国立歴史公園」があったので、乗合バスのタプタプに揺られて観光してきました。カパイシャンからミローの村まではタプタプで片道20グールド(約50円)でした。1800年初めのハイチ独立に因んだ歴史的建造物が保存されています。ミローの村に到着してから、少し歩くと遺跡入口で、オフィスにて5USD(約600円)の入場料金を支払います。

牧歌的な雰囲気のミローの村。


すぐに飛び込んでくるのが1807年に建設が始まり始まり1813年に完成したサン=スーシと呼ばれる宮殿の跡。パリのヴェルサイユ宮殿をモデルに造られ、独立時に国王アンリ・クリストフが居住していたと伝わっています。1820年には国内における不満の高まりから、アンリ・クリストフはこの地で自殺を選びました。

完成当時の華やかであろう姿が気になります。


かつての宮殿も今はただの廃墟。


見上げると屋根のない青空が、空虚な建物を引き立ててくれました。


少し離れた場所からの全景。


サン=スーシの後はシタデル・ラフェリエールと呼ばれる山城へ上りましょう。ここはバイクタクシーを利用したので、片道で5USD(約600円)を払いました。急勾配の山道をこれでもかというくらいにグイグイと上がっていきます。標高は900mを超えるので、歩いて上るなら観光というよりもはやトレッキング。シタデル・ラフェリエールは1800年代初め、独立間もないハイチが旧宗主国であるフランスの再侵攻に備えて造った要塞でした。その役目を果たす機会はありませんでしたが、朽ちることなくそびえ立つ圧巻の光景は、今ではハイチ観光の目玉となっています。

美しい姿をした山城。


門をくぐって城内へ。


お城の大きさは、屋上にいる人と比べて見てください。200年も昔にこれだけ巨大な建物がこんな山の山頂に作られたなんて信じられません。


山積みにされた砲弾。


ゲームのダンジョンを攻略するかのように、お城の内部を見て回りました。


屋上には、学校の校庭のように走り回れそうな空間が存在。


家のような建物を発見。


男の子ですので、冒険心がくすぐられます。


可動式の砲台は、よく出来た造り。


無駄一つない立派な外観は見惚れてしまうほど。


険しい山々の山頂に作られたお城なので見渡す景色も格別。


遠くの海まで見えました。


◆子どもたちが作る未来
ハイチ訪問で何より心に残ったのは、溢れんばかりの子どもたちの姿でした。カパイシアンに住む人たちの半分が、学校に通う子どもという印象。お父さんがお兄ちゃんが、小さい子と一緒に教科書を読んでいます。街を歩いていると、窺うように見つめてくる子どもたち。気を惹くために手を振ると、クスっと笑顔がこぼれ落ちます。赤ん坊になると、曇り一つ無い笑顔で向こうから手を振ってくれるので嬉しい。母親の腕に抱かれた1歳~2歳ぐらいの赤ん坊が、満面の笑みで伸ばした手をグーパーさせてきたのは、何とも幸せな気持ちにさせられました。

元気な声が聞こえてくる学校ばかり。


子どもたちを相手にしたお菓子やジュースといった路上販売も大盛況の様子。


通学中の子どもをつかまえて。


女子学生のリボンも、ハイチの旅を語る上で外せないアイテムです。学校制服のシャツに合わせた様々な色のリボンが、街を賑やかに変えていました。タプタプの運転手が「ちょっと乗って行きなさい」とでも言ったのか、乗り込んでくる通学途中の小さな女の子たち。頭のリボンはチョウチョが飛んでいるかのようで、一気に明るくなった車内は思わず頬も緩みます。


外国人に興味津々の子どもたちの瞳は眩しいくらいに活き活きとしていました。だるまさんが転んだのように、みつかると家に隠れてしまうのが、とっても可愛いのです。「どっか行っちゃったかな」と気になって出てきたところをカメラで撮影。


お母さんの真似をして、頭に物を載せる女の子は、落としてしまうので手を添えています。西アフリカでも見た感動の光景が、カリブ海で繰り返されるとは夢にも思っていませんでした。


2泊3日だからこそ、密度の濃い旅ができました。計画時点ではビクビクしていたのですが、ハイチを訪れることができて本当に良かったです。教育もしっかりしているようで、これからが楽しみな国がまた一つ増えました。

(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
Twitter @shuutak
)

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