サイエンス

ケガや傷による出血を塗るだけで即座に止める未来のバンソウコウ「VetiGel」


誰でも一度はケガをした時に絆創膏(ばんそうこう)を貼って傷口のケアを行ったことがあるはず。現在開発が進められている「VetiGel」と呼ばれるゲル状物質は、ケガ部分や体内の傷にも塗るだけで血液の凝固作用を高め、傷口をふさぐ効果を備えている「未来の絆創膏」とも呼べるものになっています。

Suneris | Technologies In Partnership With Your Body
http://www.suneris.co/

開発の進められているVetiGelはどのようなものなのか、以下のBloombergによるムービーで確認することができます。(注意:映像には血の流れるシーンが登場します)

VetiGel: The Band-Aid of the Future Stops Bleeding Instantly


VetiGelが開発されているのは、ニューヨーク・ブルックリンにある古めかしいビル。


粘度の高いゲル状の物質がVetiGel。


VetiGelを開発したJoe Landolina氏。同製品を開発するSuneris社の設立者であり、CEOを務める人物でもあります。


動物の肝臓を用いて行われた実験の様子が残されています。メスを入れて傷を負った状態をシミュレートして……


挿入された管から、実際の血液を流し入れて出血の状態を再現します。(以下3枚の写真は流血シーン:画像クリックしてモザイクを解除)


そして開口部にVetiGelを注射器を使って塗布。


すると、ものの数秒で傷口にフタのようなものができ、出血が収まってしまいました。


VetiGelは植物由来のポリマー成分を主とするゲル状物質で、動物の体温が加わることで凝固する性質が備わっているとのこと。


身体組織に似た構造を形成することで、出血を食い止める働きを果たします。


Sunerisでは現在、このVetiGelを獣医師向けに提供開始する予定。しかしそこでの効果が認められたあかつきには、人間への応用も期待できるのかもしれません。


Sunerisのサイトでは、使用方法が以下のイラストで紹介されています。

Suneris | VETIGEL | Utilization


傷が発生し、出血している状態。


開口部にVetiGelを塗布すると血液の凝固が始まり、出血が止まります。


多めに塗布されて不要になったVetiGelは、専用の処理剤を加えることで容易に除去することが可能。


あとは回復後にVetiGelを除去するか、そのまま体内に吸収させればOKというわけです。


Sunerisのサイトでは、VetiGelの作用が詳細に説明されています。

Suneris | VETIGEL | Overview


獣医師向けに開発が進められているVetiGelは、血液に備わっている凝固の働きを活性化させる物質で、生体適合性のある成分で作られて身体にも自然に吸収される安全性を兼ね備えています。その働きは皮膚などに存在する細胞外基質に似た状態を再現すること、そして血液を凝固させて止血を促進するはたらきを持つフィブリン(繊維素)の生成を促進させるというもの。

ちょっとした小さな傷から、太い血管の損傷による大量出血にまで対応が可能とのことで、従来のような圧力を加えることによる止血を行う必要がないため、医療設備が整っておらずに十分な措置を取りにくかった現場においても効果が期待できそうです。実験結果からは、VetiGelを受傷部位に塗るだけで強固な凝固作用が認められています。

即座に止血作用が期待できるうえに、その効果が強く、さらに長い期間にわたって持続するのも大きなポイントと言えます。以下のグラフでは、赤い線で示された血液の凝固作用よりも、青い線のVetiGelが素早く凝固し、しかもその効果が強く長く継続する様子が示されています。


VetiGelは植物由来の成分を原料としており、高耐久かつ高吸収性を備えているとのこと。また、特殊な事前準備や保存方法なども必要とされないので、塗布用のシリンジ(注射器)などに充填した状態で室温で保管することが可能となっています。さらに、塗布前に別の液剤などと混合するなどの準備も必要なく、誰でも必要な時に受傷部に塗るだけで効果を発揮するという優れた性質を備えているとのこと。

現在はまだ人間向けには使用できないVetiGelですが、Sunerisのサイトでは獣医師向けにサンプル送付の受付が開始されています。

Suneris | Contact Us


動物での効果が立証されれば、追って人間への利用が検討されるのは間違いないことと考えられます。人間にとってもメリットは計り知れないVetiGelが早く実用化されることに期待したいところです。

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in サイエンス,   生き物,   動画, Posted by darkhorse_log

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