盗聴を完全に不可能にする「量子化インターネット」の構築が本格的に進行中

By Carlos Lee

2013年、アメリカの国家安全保障局(NSA)や連邦捜査局(FBI)などの政府系機関が秘密裏に国民の情報収集をしていた問題が明らかになり、インターネットの秘匿性が大きな話題になりました。通信の秘匿性を高める技術の根幹は暗号化なのですが、「究極の暗号化技術」とも呼ばれる「量子インターネット」の構築に向けた取り組みがアメリカと中国で進められています。

Building a globe-spanning quantum internet | The Verge
http://www.theverge.com/2014/11/18/7214483/quantum-networks-expand-across-three-continents

元CIA職員のエドワード・スノーデン氏がリークした情報により、政府機関が「PRISM」と呼ばれる極秘の監視システムを用いて通信内容を盗聴していたことが発覚し、インターネットのプライバシー問題が大きく問題視されたのはまだまだ記憶に新しいところ。ワシントン・ポストが2013年10月に報じたところによると、NSAはYahooやGoogleのデータセンター間を結ぶプライベート・ネットワークに侵入し、送受信されるデータを傍受していたことが明らかにされています。

また、当時のYahooやGoogleはこのデータセンター間の通信を暗号化せずに行っていたことが分かっています。両者は即座に通信を暗号化する対応を採ったのですが、データ通信そのものが既存のインフラに依存する仕組みである以上、問題の根本的な解決のためには全く新しい仕組みによる通信を実現することが必要とされています。

By Christian Dembowski

問題の発覚から1年、そんな新しい通信方法の実現に向けて複数の団体が取り組みを進めています。アメリカの独立研究機関で、原子力から先端材料、医療機器など多岐にわたる分野に携わるバテル記念研究所は、量子ネットワーク技術を用いた「量子インターネット」でアメリカ国内を横断するネットワークの構築を進めており、東海岸のボストンから東南部のジョージア州、そしてさらに西海岸のカリフォルニアに至るルートの実現を目指しています。


さらに、中国では同様の技術が既に導入されており、上海から北京に至るルートが量子インターネットによって結ばれていることが明らかになっています。


現在広く用いられている暗号化技術で最も重要となるのは、暗号の解読に必要な「暗号鍵」をいかにして相手まで安全に届けるかということになります。暗号鍵を解析して解読するには一般的なコンピューターだと数千年レベルという非常に長い時間を要するため、解読は非常に難しいとされていますが、何らかの理由で暗号鍵が通信の途中で傍受されてしまうと、全ての内容が第三者によって把握されてしまうことになります。このため、現在の暗号化技術はかなりハイレベルなセキュリティ性を実現しているとは言えるものの、「完全に安全」という状態には達していないのが現状といえます。

一方の量子ネットワークの技術では、暗号鍵の伝送に光子(光の粒子)の状態を用いる量子暗号を用いることが大きな特徴になっています。暗号化されたデータそのものは一般のインターネットを経由して相手に送信されますが、暗号の解凍に必要な暗号鍵の生成には量子暗号が用いられます。この量子暗号を光ファイバーを通じて相手に送信して解凍に用いるわけですが、その際には量子そのものが持つ量子複製不可能定理(量子の観測不可能性)が暗号の秘匿性に重要な役割を果たすことになります。

By TDK

仮に光子を途中で傍受する者が存在して盗聴が行われると、受信者が受け取る光子は元の状態から変化してしまう性質があるため、経路の途中で第三者による盗聴が行われたことを知ることができます。その場合は暗号鍵を破棄し、再度通信をやり直すことで安全な情報の伝達を可能にするというのが量子暗号技術のおおまかな概念となっています。

By Kevin Dooley

既存の暗号化技術は解読の難易度を飛躍的に高めることで解読を「事実上の不可能状態」に高めるものでしたが、量子暗号は暗号の傍受・解読を原理的に不可能にするものであるため、究極の暗号化技術と捉えられています。しかし、そんな量子暗号にもまだまだウィークポイントが存在しているのも事実。

量子暗号の伝送のためには2拠点の間を光ファイバーケーブルで直接的に結ぶ必要があるのですが、現在の技術では伝送される信号を60マイル(約97km)ごとにリフレッシュする「リレーポイント」を設置する必要があり、これが盗聴者にとって最大の攻撃ポイントと化す危険性が存在しています。さらに、2拠点間の暗号が完璧化されたとしても、データを送受信するデータポイントから実際のオフィスまでの間は通常のLANなどの通信回線が用いられるため、通信の両端には従来どおりのリスクが潜んでいるということも事実。これらの問題をいかに排除するかということが、真の意味での完全に安全な通信の実現にとって欠かせないポイントということができそうです。

By Eli Brody

このように、量子暗号の仕組みは今後さらに発展が望まれる分野といえます。その仕組みについては、以下のサイトを参考にすればよく理解できそうです。

第71回 秘密の鍵は光に乗せて −量子暗号の仕組み−|テクの雑学|TDK Techno Magazine
http://www.tdk.co.jp/techmag/knowledge/200706/index.htm

Nikon|光と人の物語|破られない光の暗号 ~量子コンピュータと量子暗号~
http://www.nikon.co.jp/channel/light/chap04/sec01/index.htm

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