チェロ奏者が自分の「脳」とデュエットして演奏するコンサート
脳波を使ってコミュニケーションをとったり自動車や飛行機を操縦したりする研究が進んでいますが、チェリストが自分の脳波をコントロールしてメロディを奏で、そのメロディに合わせてチェロを演奏するという何が何だかよく分からないコンサートが開催されました。
Cellist Katinka Kleijn Plays With Her Brain - Business Insider
http://www.businessinsider.com/cellist-katinka-kleijn-plays-with-her-brain-2014-10
脳のニューロン(神経細胞)では電気信号を使って情報が伝達されます。この電気信号を頭部に設置した電極で記録したものが「脳波」で、一般的に0~30Hzの周波数を持つことが知られています。
睡眠サイクルによって脳波が変化することが知られている通り、人間の精神状態や感情によって異なる脳波が現れ、瞑想(めいそう)したり呼吸方法を変えたりすることで脳波をある程度コントロールすることができます。そして、Max/MSPと呼ばれるプログラムを使えば、脳波ヘッドセットから脳波を検出して人間が聞こえるサウンドとして再生することが可能。つまり、脳波をコントロールする訓練を受けた人ならば、Max/MSPを使って音楽を演奏することが可能というわけです。
しかし、脳波を使って音楽を演奏することが可能だとしても、その音楽に合わせて楽器を演奏することは極めて困難です。それは、音楽を聴くことで脳が活性化するため、Max/MSPで奏でる音楽を自分の耳で聞けばその影響で脳波が変わり、さらに、楽器を弾くという行為自体も脳を活性化させるために、伴奏しようとすれば必然的に脳波が影響を受けるからです。
音楽を演奏することは脳にどのような影響を与えるのか? - GIGAZINE
脳波で奏でるサウンドを耳で聞くことや伴奏で楽器を演奏することで脳波に受ける影響を考慮した上でチェロを奏でて、「脳波サウンドとコラボレーションをする」というコンサートをシカゴ交響楽団のチェリストであるカティンカ・クラインさんが2013年に開催しました。
この世界初の自分の脳波とのコラボ演奏の様子は以下のムービーで確認できます。
Intelligence on Vimeo
頭に脳波を検出するヘッドセットを装着したクラインさん。
脳波の様子を見つめるスタッフ。
いざ、チェロの弦に楽弓を置きました。
演奏の様子をじっと見守る聴衆。
小刻みに弓を動かすクラインさん。神経を集中させながら、楽器と自身の脳波のチューニングを行っている模様。
コンサート会場にはクラインさんの精神状態としてリラックス(青色)・集中(緑色)・興奮(黄色)・フラストレーション(赤色)の4つの状態を客席に知らせるスポットライトが用意されていたとのこと。
固唾を飲む観衆。
約3分20秒かけてチューニングした後、目を閉じて精神を統一するクラインさん。
観客も注目。
そして、ムービーの3分40秒から演奏がスタート。優しい音色を奏でながら脳波とのデュエットが行われています。
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