インターネットの「匿名性」が世界にもたらすものとは?

By girl_onthe_les

Facebookのように現実の名前とインターネット上での名前が一致するようなサービスは複数存在しますが、それとは反対にインターネット上での行動が現実世界の誰により行われたものなのか一切分からないようにし、「匿名性」を保つための技術というものも存在します。インターネット上で匿名性が保たれることで、現実世界にはどのような影響が現れるのか、そもそもこの匿名性を保つための技術とはどこから来たのか、ということをBBCがレポートしています。

BBC News - Horizon: The defenders of anonymity on the internet
http://www.bbc.com/news/technology-29032399


MM総研によると2013年国内携帯電話端末出荷台数は3929万台で、そのうちスマートフォンの台数は2928万台と全体の約75%を占めました。このスマートフォン出荷台数比率は年々上昇していくと推定されており、2017年度には約80%にまで上る見込みとなっています。このように現在ではどこを見回しても携帯電話といえばスマートフォンになっているわけですが、このスマートフォンの普及に伴ないTwitterやFacebook、LINEにSkypeなどのコミュニケーションツールも爆発的に発展してきました。

これらを使えばどこにいても簡単に他人とコミュニケーションをとれるのが現代社会ですが、そんな通信をアメリカ政府は5年間以上にわたり傍受していたことが明らかになっています。

Google・Apple・Yahoo!などのサーバにある個人情報を直接のぞき見できる極秘システム「PRISM」とは? - GIGAZINE


オックスフォード大学のインターネット研究所で働くジョス・ライト博士は、「情報があれば、我々が今後どのようなことを行うのかを予測することができる。また、情報がオリジナルのものであるだとか、どのような意図で発信されたものであるかなどに関わらず誰かに力を与えることもあり、これは非常にやっかいな点だ」と、インターネット上でやり取りされるあらゆる情報を収集していたアメリカ政府がいかに恐ろしいことをしていたのかを語っています。

また、メールやボイスチャット、ビデオチャットなどからあらゆる情報がインターネット上を飛び交う現在では、これまで以上に個人個人の生活がインターネットと深くつながってきており、この分析によりこれまで以上に高精度な予測も可能である、とも指摘します。

By Justin Norman

◆インターネットにおける匿名性の育ての親
一部のコミュニティ以外では、「デビット・チャウム」という名前はそれほど有名ではないかもしれません。しかし、チャウム氏は現代科学の偉大なる先見者の1人として、コンピューター・サイエンティストの間では有名な存在です。

極秘システム「PRISM」の存在をリークしたエドワード・スノーデン氏により、アメリカ国家安全保障局(NSA)や、イギリスの政府通信本部(GCHQ)が通信を傍受することで大規模情報収集を行っていたことが判明していますが、1980年代初頭にバークレー大学のコンピューター・サイエンティストとして務めていたチャウム氏は、「世界中のコンピューターネットワークは大規模な集団監視を可能にする」と予言していました。

By *sax

チャウム氏はめったにインタビューに応じることがないそうですが、BBCのホライゾンは独占的にインタビューを行うことに成功。そのインタビューの中でチャウム氏は、「これは私にとって悲しいことです。しかし、インターネット上でのプライバシー問題などが大きな問題になったことはまったく驚くべきことではありません。私は1980年代初め頃に、すでにこのことについて自身の出版物の中で書き綴っていたからね」と語っています。

チャウム氏が傑出しているところは、彼が単にインターネット上のプライバシーに関する問題を予言していたというだけではなく、プライバシー問題の原因となっている監視システムによる情報収集が難しくなるようなシステムのプロトタイプを自身で開発した、という点です。

その最たる例が「Mix Network」と呼ばれるもの。これはメッセージコンテンツを暗号化せずにユーザーの身元を隠すという暗号方法で、ルーティングプロトコルの追跡が困難になるように、「Mix」というプロキシサーバーで送り元の情報をシャッフルし、ランダムに次のノードへ送るというものです。これにより、Mix Networkを使用した通信の送り元と送り先の特定は困難になります。チャウム氏自身が認めるように、これはパラダイムシフトとなり次世代の暗号化技術に大きな影響を与えています。


自身の並外れた見識によりチャウム氏は周囲から「匿名通信の育ての親」と呼ばれており、他にも多くの暗号化技術が存在する中で、彼の考案した暗号化技術は匿名通信技術として有名なTor(トーア)の基本原理にもなっているそうです。このTorというソフトウェアはアメリカ海軍の研究施設であるU.S. Naval Research Laboratory(NRL)が主導するプロジェクトの中で誕生したもので、インターネット上で匿名性を保ちながらブラウジングが可能になるというもの。これを使用すれば個人を特定されることなくインターネット上での活動が可能になるので、シリアやイラン、中国などの反体制派などにとって重要なツールになっています。

しかし、アメリカやヨーロッパなどの地域では、アメリカ政府が当初想定していなかったような使い方が始まっています。

◆インターネット上での「匿名性」が現実世界にもたらすもの
その「使い方」というのは、アメリカ政府などの政府機関に関する情報を世間に公表する、というもの。実際に2011年、アメリカ軍の情報分析官であったブラッドリー・マニング氏はTorを使い、軍部の機密情報をWikileaksにリークしており、これは歴史上最大級の内部告発の1つと考えられます。

マニング氏がWikileaksにリークした情報の中にはアメリカ軍がバグダッドでロイター通信の記者2名を含む一般人をアパッチから狙い撃ちにし、18人から26人を殺害した記録ムービーもあり、これが国家権力や巨大企業に関する秘密を暴露するWikileaksというメディアの地位を確固としたものにしました。

以下のページでは実際に記録ムービーを視聴することもできます。

Collateral Murder


そんなWikileaksの創設者であるジュリアン・アサンジ氏は、現在強姦容疑による逮捕と強制送還を避けるためにエクアドルの大使館に亡命しています。ホライゾンがアサンジ氏にインタビューしたところ、「Torは個々の通信に自由と匿名性を与えることができる、まさに長年探していたものでした」と、Torこそがそれまで求めていた技術であったと語ります。

Torはトラフィックからユーザーの身元を隠すことができるというもので、「Torは権利のバランスをとることができる初めての匿名プロトコルだ」とアサンジ氏。そして、Torのもたらす匿名性により、ジェイコブ・アップルバウム氏のような多くの活動家が、WikileaksやTorを駆使して政府の秘密を暴露する、などの行動を起こしています。

Torなどの匿名性を保つための技術は、政府による監視などの潜在的な防波堤となることができます。しかし、インターネットの悪い側面を手助けすることもあり、例えばSilk Roadのような闇サイトでは、Torを使って禁止薬物の売買やさまざまな違法行為が繰り返されてきました。実際にインターネット関連の犯罪を取り締まるインターポールのサイバー犯罪課でリーダーを務めているTroels Oerting氏は「我々の検挙率は落ちてきている」と語っています。

◆リスクのない犯罪
インターネットでの違法行為に対する議論は別として、我々が毎日使用するインターネットをより「監視に強いもの」にするための新しい技術を開発する必要はあるし、インターネット上でやり取りされるあらゆるデータを暗号化できるようになる必要もある、とBBCは述べています。

スノーデン氏は、「暗号化はデジタル分野の『闇の魔術に対する防衛術』なのです」と語っており、BBCも現代人が自身の身を守るために最低限必要なものとして「暗号化」の重要性を説いています。

By Ed Yourdon

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