なぜスモールビジネスをより長く存続させるには独立より副業が有利なのか？

By anon617

誰かに雇われている状態を脱して自分でビジネスを興して経営したいと考えている場合、いきなり仕事を辞めて起業するのではなく、仕事を続けながらビジネスをスタートする方が新しく始めたビジネスがより長続きするという統計結果が現れています。

Don't Quit Your Day Job: Using Wage and Salary Earnings to Support a New Business
(PDFファイル)http://www.frbatlanta.org/documents/news/conferences/13rdc/s2_p1_new_firms_Perez.pdf

セントクラウド州立大学のモニカ・ガルシア・ペレス教授とその研究チームは、2002年から10年間のアメリカ国勢調査のデータを用いて、被雇用者・雇用者・個人事業主の「賃金や給与収入」と「転職・起業などの仕事の移り変わり」との相関関係について調査しました。

データの分析からすぐに分かった事は、給与所得の高い人、つまり誰かに雇われていても収入の多い人のグループは転職したり仕事を変えることが少ない傾向にあり、逆に、給与所得の低い人のグループは転職したり自分で起業することが多いという、給与の高さと離職率の低さの相関関係でした。

By David Kracht

たくさんの給料をもらっている人は現状の環境に満足しているためリスクを冒してまで職を変えたり起業したりする可能性が低く、逆に給料が少ない人はよりよい条件を求めて転職したり起業したりする傾向が強いということは、非常に合理的で特に不思議な結果ではありませんが、ペレス教授たちの研究グループは後者のグループに注目し、より詳細にその仕事のスタイルを調べたところ、ビジネスを新たに始めた人たちの中でも、失敗してビジネスを終わらせてしまった人と、長く継続することができた人を大きく分ける要素が「給与収入の有無」であることを見つけたとのこと。

By Roger G

「起業での成功」というとMicrosoftのビル・ゲイツやFacebookのマーク・ザッカーバーグのように小さな会社を大企業に育て上げることをイメージしがちですが、規模の大小を問わず、好きな分野で自分の能力を活かして経済的に破綻することなくビジネスを長く継続させることも「起業での成功」と言えるのは間違いないところ。そのような小規模な、いわゆるスモールビジネスでは、それを専業として行う場合もあれば、中には会社に雇われたまま副業として行う場合もありますが、ペレス教授が統計データを分析した結果、給与収入を得ながらビジネスをスタートさせた場合の方が従来の仕事を辞めて専業としてビジネスをスタートさせた場合よりも統計上は、はるかに長い期間ビジネスを継続させられることが分かりました。

By Jon Tan

特に、直近の給与収入が多ければ多いほどスモールビジネス存続の割合が高かったとのことで、ある程度までは収入が高いほどスモールビジネスを行う上で有利なのが明らかであるものの、それ以上に給与収入が高ければそもそもスモールビジネスを行ってまで仕事を変えるという割合が減るというのはなかなか興味深いところです。

ペレス教授は給与収入を得ながらスモールビジネスをスタートさせるほうが、専業で始めるよりも長くビジネスが続く要因について、1つは安定した給与収入を新たにビジネスを始めるときに必要となるさまざまな支出に充てられる点を指摘しています。起業時には細々とした支出まで含めて予定外の出費も多く、ともすれば資金がショートしがちなもので、例え金額が少なくとも定期的に安定して得られる給与収入がセーフティネットの役割を果たし倒産の危機を免れているというわけです。

By Bashar Al-Ba'noon

もう1つの要因として、給料をもらってする仕事で得られる「給料以外の資産」が挙げられています。例えば、特定の仕事を続けることで得られる知識や経験が新たに始めるスモールビジネスに大きく役立つ可能性があること、また、今の仕事で得られる人とのつながりが人的資源としてスモールビジネスの成功に重要である場合が多いとのこと。特に人脈は新しいビジネスを始める上で決定的に重要な役割を果たす場合があるため、たとえ給料が安くても仕事を続けることが副業の成否にも直接的な影響を与え得ると考えられています。