「開封の儀」は何故こんなにもインターネットにあふれているのか?

by Joey Yee

YouTubeが生まれてからさまざまなムービーのジャンルが誕生しましたが、「開封の儀」と呼ばれるジャンルのムービーもその1つです。自分の娘が本物のクッキーモンスターではなく、クッキーモンスターのオモチャの開封ムービーにばかり夢中になっていることが気になったMireille Silcoffさんが、「何故こんなにも開封の儀が人気なのか?」という謎に迫っています。

A Mother’s Journey Through the Unnerving Universe of ‘Unboxing’ Videos - NYTimes.com
http://www.nytimes.com/2014/08/17/magazine/a-mothers-journey-through-the-unnerving-universe-of-unboxing-videos.html

初めて「開封の儀」が公開されたのは2006年のことで、Nokia E61を開封する様子を映したものでした。開封の儀は誰もが熱狂するジャンルではありませんが、ガジェットなどのテクノロジー分野をはじめとして、現在ではオモチャやブランド品の開封ムービーまでもが公開されています。

by Piro*

例えばルイ・ヴィトンの50万円するバッグを購入した時、開封の儀を収めたムービーを公開するとします。ルイ・ヴィトンを購入する余裕がないバッグ愛好家たちは、ムービーで真新しいカバンをうやうやしく箱の中から取りだし、傷1つないカバンを我が物にする素晴らしい瞬間を追体験できます。バッグを包む袋や滑らかなシルクのリボンで包まれた箱は、購入者にとって見慣れたものかもしれませんが、バッグを買えない人にとっては特別なものです。

10代の少女たちが購入したものをYouTubeなどで公開する「ハウルビデオ」というジャンルがありますが、開封の儀はハウルビデオと似ており、違いはムービーの中央にホストである少女がいるかどうかです。ハウルビデオで一躍有名になったBethany Motaさんは今では各方面で活躍していますが、開封の儀を行う人物は彼女のように有名になることはありません。開封の儀はある種のポルノと同じく視聴者が一人称となることで、物を買わずして「買う」というスリルを体験できるのが特徴だからです。

by André P. Meyer-Vitali

なぜこんなにも開封の儀が行われているのか?ということを専門家やYouTubeにDisneyCollectorという開封の儀専門チャンネルを持つLimaさんに尋ねてみたところ、Silcoffさんはあることに気づきます。専門家の中には開封の儀を売り手と買い手の交流だと考えている人もいたのですが、オモチャ関係の開封の儀で人気のあるものは、その多くがガラクタに着目したものです。例えば9000万回も再生されている開封の儀はプラスチックの卵に包まれた1.99ドル(約200円)の6つのオモチャを開封するだけのものでした。この、ちゃちなプラスチックの卵を開封するのを見たいと思うのは、単純に、エレベーターのボタンを押してドアの向こうにある別の宇宙を見てみたいという気持ちと同じなのです。

以下がDisneyCollectorというチャンネルで公開されるオモチャが入ったプラスチック卵の開封ムービー。ひたすら卵を開けて中身を説明していくだけのムービーなのですが、9200万回以上も再生されています。

Angry Birds Toy Surprise Jake and the Never Land Pirates Disney Pixar Cars 2 Easter egg Spongebob - YouTube


つまり、開封の儀は実際的な消費者活動と関係がなく、開封の儀を見ている人に不思議な情緒反応を抱かせるのだ、とSilcoffさん。

同様の情緒反応が見られるのが、tumblrで人気のブログ「Things Fitting Perfectly Into Other Things(関係のないモノに完璧にフィットするモノ)」です。タイトルにある通り、ブログには「定規に空いた穴に完全フィットする錠剤」というような1つのモノが他の何かに完全フィットする写真がランダムに並べられています。そのうちの1つ、段ボール箱にぴったりフィットした2つのビンの写真には「このブログを見て嬉しくて泣いてしまった。今すごく満たされた気持ちなんだ。これは何の魔法なんだ」というコメントがつけられていたとのこと。

YouTubeはもともと、無名の人々による個人的な喜びを、大衆文化に変える潜在的な能力を持っており、「きれいなトウモロコシのむき方」「ニキビをつぶす」などを検索すると、驚くべき内容や数の結果が得られます。

by Spencer E Holtaway

例えムービーの中で開封の儀を行っている人たちがカメラの前で消費を促しているように見えても、視聴者がムービーを見る理由は別のところにあります。シャンプーの最後の1滴を使い切る喜びのように、例え消しゴム1個であっても「新しいものを開封する喜び」が存在するのです。

1度「開封の儀」ムービーのループにはまってしまうと、1万2000ドル(約120万円)もするエルメスのバッグからMacBook Air、ナイキのスニーカーなど、実際に買う買わないに関わらずさまざまな物の開封を見続けてしまう人もいます。そして2ドル(約200円)のペンを開封する様子を見つつ、「新品のペンを紙の上に走らせる感覚って好きなんだよな……」とある種の満足感にひたるのです。

ニッチなジャンルであるものの、カメラの前で購入したものを開けて使ってみるだけの「DisneyCollector」は巨大な市場と化し、SocialBladeのデータによれば、DisneyCollectorは広告で年間200万ドル(2億円)から年間1300万ドル(13億円)の収益をあげているとのこと。巨大な収益を生み出すムービーのジャンルは「新しい物を使う時の気分のよさ」という人間の感情に生まれるささやかな喜びに着目されていたわけです。

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