メモ

究極の孤独状態が人を狂わすのはなぜなのか?

By Michaël Korchia

他人との接触を断ち切って常に孤独でいることは肥満や喫煙と同じくらい不健康であることがわかっています。では、他人との関係を断ち切り、長期間の孤独を経験した人には一体どのような現象が起こったのか、詳細とその理由についてイギリスのBBCが公開しています。

BBC - Future - How extreme isolation warps the mind
http://www.bbc.com/future/story/20140514-how-extreme-isolation-warps-minds

2009年夏、イランとイラクのちょうど国境周辺にあるクルディスタン地域でハイキングを楽しんでいたSarah Shourd氏は、突然イラン軍の兵士にスパイの疑いをかけられ逮捕されました。Shourd氏は逮捕から釈放まで、なんと1万時間も目隠し状態で監禁されたそうです。後に、Shourd氏はThe New York Timesに記事を投稿し、「ある時、私は大きな叫び声を聞きました。看守の男性が私に触れるまで私は気づきませんでした。その叫び声が自分のものであることを」と、その時の心境をつづっています。

By Felipe Morin

極限の孤独状態が身体に問題を起こすことや、アルツハイマーの発症リスクを上げることが明らかにされていますが、それ以外にも睡眠パターンや注意力、論理的な思考能力といった生活機能・精神に影響を及ぼすこともあります。

孤独が精神に与える影響の1つで特に報告が多いのは時間感覚が狂うことです。1993年、社会学者のMaurizio Montalbini氏は「地下で生活を送った期間」の世界新記録を更新するため、地下洞窟に366日も滞在したことがあります。Montalbini氏が366日ぶりに地上に姿を現わしたとき、「219日しか経過していない」と思っていたとのこと。理由は、Montalbini氏の睡眠パターンが完全におかしくなっていたことにありました。その後の調査で、暗闇に長期間滞在すると、多くの人は生活リズムが、「36時間起きて12時間睡眠する」という48時間周期になることが判明しています。

By Carl Jones

極限の孤独状態が精神に及ぼす影響の中で、時間感覚が狂うことと同じくらい報告が多いのは幻覚症状です。1957年にカナダにあるマギル大学医療センターの心理学者ドナルド・ヘブ氏が率いた実験では、被験者を立方体のような部屋に数日間閉じ込めて、どのような症状が起きるかを調査。被験者の視覚・聴覚・触覚に与える刺激を極限まで少なくするため、被験者が滞在した部屋は防音壁で囲まれていました。

By Thomas Guignard

実験開始から数時間後、被験者たちは歌を歌い始めたり、独り言を言い始めたりして、単調すぎる空間から逃れようとし、その後は感情が異常に高ぶったり、極度の不安状態に陥ったりしたとのこと。しかしながら、被験者に起こったことの中で最も警戒すべきだった症状は幻覚症状です。幻覚症状は時間を増すごとに悪化していき、最初は光が見えるといった軽いものでしたが、最終的にはリスが行進したり、何もないはずの部屋で犬や赤ちゃんが現れたりという重い症状へ移行。

実験中に幻覚だけではなく、幻聴や、触覚の異変を訴える被験者が相次いだため、実験はやむなく中止になりました。

なぜ極限の孤独状態が続くと時間感覚が狂ったり、幻覚・幻聴といった症状がでたりするのか、ある認知心理学者は「知覚のような現在進行中のタスクを処理する脳の部分は、視覚や聴覚から得る大量の情報を常時処理することに慣れきっています。突然情報がストップしてしまうと、さまざまな神経システムが脳に存在し得ない情報を送り込むので、脳に異変が生じるのです」と主張。認知心理学者の主張によると、脳が少ない情報や神経システムから送り込まれる情報から現実を構築しようとし、その結果ありもしないモノや音を感じるようになるわけです。

By Penn State

また、人間には他人や社会と接することでさまざま感情を持ち、補完し合うという特徴があります。生物学者によると、人間は古代から集団生活を送ることで感情を進化させてきたので、恐れや不安、悲しみなどの感情を持った人間を誰も助けないと、自我が崩壊し始め知覚が狂ってしまうそうです。

極限の孤独状態を堪え忍ぶための訓練を行う軍隊もありますが、訓練されていない一般人が孤独状態を続けると身体・精神に強い影響を及ぼしてしまいます。しかしながら、孤独状態がもたらす感覚を好む人がいることはあまり知られていません。

ヨット航海士のBernard Moitessier氏は世界一周ヨットレースの最中に、社会生活に戻ることに嫌気がさし、優勝を狙える位置につけていたものの、レースを放棄。そのまま航海を続けて最終的にゴールとは全く違う場所にあるタヒチに到着。Moitessier氏は到着後に「海の上でずっと独りでいることは全く苦しいことではありませんでした。むしろ、海の上にいられて幸せだと感じました。おそらく、私は自分自身の魂を救いたかったのだと思います」と、常人ではなかなかたどりつけない感覚に快感を得たことを明かしました。

By Chris_Parfitt

Moitessier氏のように極限の孤独状態がもたらす感覚を受け入れ楽しめる人がいるのも事実ですが、孤独が持っている底知れない力を過小評価すると、とんでもないしっぺ返しを受ける可能性があります。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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