冷凍したステーキ肉を一番おいしく調理する理論的アプローチとは?


お肉を焼くという調理は、単純であるがゆえに奥が深いものといえるかも知れません。冷凍したお肉を調理する際にはまず最初に「自然解凍」を行うのが半ば常識とされていますが、理論的に突き詰められた調理方法によると、じつは冷凍したまま調理を行った方がよりよい仕上がりになるということがYouTubeの料理番組チャンネルで紹介されています。

Science: Cooking Frozen Steaks


「従来教えられてきた冷凍したお肉の調理方法は、まず『解凍する』ということでしたが、果たしてそれは正しいものなのでしょうか」とアメリカの料理番組「America's Test Kitchen」のホストの一人であるダン・スーザさんが切り出します。


その通説が本当に正しいのかどうかを検証するために、用意した厚さ1インチ(約2.5センチ)のステーキ肉を2つに切り分けます。


そして半分はそのままにし、もう半分を冷凍庫で冷凍。このあと、この冷凍したお肉を調理するのですが、一度解凍したものと冷凍のままの両方を同時に調理することで仕上がりの差が検証されました。


完全に冷凍されたタイミングで調理を開始。油を多めにひいたフライパンを熱しておき、冷凍後に一度解凍したお肉と凍ったままのお肉を並べて投入します。右に映っている肉にはうっすらと白く氷が付着しているのが確認できます。


片側あたり90秒間の時間で熱し、表面に焼き色をつけます。


表面にきちんと色が付いたらこんどは網の上に載せ、130度に熱しておいたオーブンに投入。


内部の温度が華氏125度(摂氏52度)に達するまで全体に熱を加え、ミディアムレアの状態に仕上げました。


そして調理前後の重さを比較することで、水分量の比較を行ったとのこと。


内部の温度が規定に達するまでの時間は、解凍肉が10~15分だったのに対して冷凍のままの肉は18~20分と少し長かったのは容易に想像がつきますが、そんななかでスーザさんが驚いたのは、表面の色つけに要した時間。調理を開始した際の温度には大きな差があったのですが、同じ状態に達するまでの時間はほとんど同じだったそうです。


そして最も大きく差が表れたのが、両者の熱の入り具合でした。左の解凍肉(Thawed)では表面のすぐ下に火が通って固くなった層ができたのに対し、右の冷凍肉では赤いまま仕上がったミディアムレアの肉が表面直下まで残っているのがわかります。これは食感に大きな違いとなって現れることになりそう。


また、調理後のお肉に含まれる水分量も、平均して9%の違いがあることがわかりました。


両者の味を比較したところ、「冷凍したまま調理したお肉のほうが断然おいしかった」ということで試食したメンバーの意見が一致。その理由についてスーザさんは「調理中のお肉が達した温度の違いです」と語ります。


冷凍したお肉の温度はマイナス6度程度と非常に低くなっているため、調理中にも必要以上の熱に達することがありません。


その一方で、表面に焦げ目をつけるのに必要な時間は両者とも同じでした。これは、冷凍したお肉のほうが温度をより低いまま調理できることにつながります。


その温度差が調理後の状態に大きな違いとして現れることになります。解凍したお肉は必要以上に温度が上がったために表面が固くなり、さらにその温度に比例して水分が多く失われてしまったため、仕上がりの味が落ちる結果につながりました。


また、調理後のお肉の大きさに差が現れているのも興味深い結果となっています。冷凍したままのお肉に比べ、解凍したお肉は小さくなってしまっているのですが、これも必要以上の熱が加えられたことが原因。お肉に含まれるたんぱく質は、およそ摂氏60度に達すると凝固が始まって固く・小さくなると同時に、68度あたりから水分を分離する分水作用と呼ばれる特性が現れます。これらの特性が原因で、熱を加えすぎたお肉からは風味が失われることにつながるのです。

◆調理前の準備方法
調理時に熱を加えすぎないことが重要なポイントであることがわかったわけですが、そのためにはどんな準備をすればよいのでしょうか。

まず、冷凍する際には表面に氷が付着させないことが重要です。ラップなどにくるんで冷凍すると白い氷がつくことがありますが、アレは避けるほうがベターということ。


油がひかれたフライパンに氷がついたお肉を投入すると……


油が飛び散って火事の原因になることもあるので、十分な注意が必要。


そのため、冷凍の際にはお皿などの上にクッキングペーパーをひき、その上にお肉をのせて冷凍庫へ投入します。


このように、表面がサラッとした状態で冷凍が完了しました。


いったんお肉が冷凍されると、ラップで包んでも問題ありません。


ラップで包んでフリーザーバッグなどに入れておけば最良の状態で保存することが可能です。


調理の際に、フライパンに通常より多めの油を使うこともポイントになります。


油の量はおよそフライパンで3ミリ程度に達する分量。この多めの油が2つの重要な役割を果たします。


第1の理由は、油の海に浸すことでお肉表面の細かい溝にまで均等に熱が加えられること。冷凍の際にお肉の表面には細かなひび割れのようなものが生じるのですが、油を使うことでその溝にも効率的に必要な熱を加えることができます。


もう一つの理由は、油が持つ熱によってフライパンの温度を冷めにくくするというもの。冷凍された冷たいお肉はフライパンの熱を一気に吸収しようとしますが、その際に油が持っている(ため込んでいる)熱が一種の保温材のような働きを行い、調理に必要な熱を十分にキープすることができるようになるのです。


冷凍ステーキの調理ポイントは以下の通りです。
・フライパンに3ミリ程度の油をひくこと
・最初に、表面に焦げ色がつくまでおよそ90秒加熱すること
・ベーキングシートをひいたバットに網をのせ、その上にお肉をのせてオーブンに投入
・摂氏130度に温めたオーブンで火を入れ、好みの状態にまで調理する
・厚さ約2.5センチのお肉の場合の調理時間は、およそ18分から20分程度


理論的にお肉の調理を突き詰めると、理想的な調理方法は以上のようなものとなりました。次にお肉を焼く時に参考にすると、少し仕上がりがよくなるかもしれません。

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in 動画,   , Posted by darkhorse_log

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