Wikipediaが「写真の著作権はサルにある」としてカメラマンの訴えを却下


あるカメラマンが「Wikipediaに掲載されているサルが写った写真の著作権は自分にある」として掲載中止を訴えたところ、ウィキメディア財団が「写真の著作権はシャッターを押して自画撮りを行ったサル本人にある」として訴えを却下していたことが明らかになりました。

Wikipedia refuses to delete photo as 'monkey owns it' - Telegraph
http://www.telegraph.co.uk/technology/news/11015672/Wikipedia-refuses-to-delete-photo-as-monkey-owns-it.html

訴えを起こしたのは、野生動物の生態を写真に収める活動を行っているカメラマンのデイヴィッド・スレーター氏。2011年にインドネシアに滞在して絶滅危惧種の一種であるクロザルの生態を撮影していたところ、1匹のクロザルのメスがカメラに興味を抱いて接近。そのまま手にとっていじくり回しているうちにシャッターが押され、自分にレンズが向いた状態で撮影する「自画撮り」の写真が何枚か撮影されたそうです。そんな写真の1枚が、Wikipediaにアップロードされている以下の写真。

File:Macaca nigra self-portrait (rotated and cropped).jpg - Wikimedia Commons


カメラを触りまくるうちにどうやらシャッターの感触が気に入ったクロザルは、合計で数百枚にもおよぶ写真を撮影したとのこと。その多くはピントがずれたりブレたりして使い物にならないものばかりだったそうですが、何枚かは奇跡の写真が収められていたとスレーター氏は語っています。そんな写真を公表したところ、瞬く間に世界中で人びとの関心を集めることになってスレーター氏は一躍有名になりました。

スレーター氏は公表時のインタビューで写真が撮影された時の様子について「しばらくカメラを放置していたら、サルの群れが僕のカメラに近寄っていじくり回していました。最初は音に怖がっていましたが次第に慣れたようで、誰かがシャッターを押すのに合わせてポーズをとっているようにも見えました」と語っていたのですが、この発言が後に落とし穴となることに。写真は世界中のウェブメディアや新聞、雑誌やテレビなどで紹介されることになりましたが、それから2年が経った現在、スレーター氏はWikipediaを運営するウィキメディア財団を相手に訴訟を起こすという状況になっています。

ウィキメディア財団が運営するウィキメディア・コモンズには、2000万を超える画像や音声、動画ファイルが誰でも自由に利用できることを目的にして保存されています。スレーター氏のカメラが撮影した画像もWikipediaの編集者によってこのウィキメディア・コモンズにアップロードされたのですが、「カメラのシャッターを押したのはスレーター氏本人ではなく、1匹のクロザルである」ことを理由にスレーター氏が主張する著作権は認められず、誰でも無償で自由に利用できるパブリックドメイン化されてしまうことになりました。

スレーター氏はこの決定について「撮影者の許可なく誰でも自由に、そしてロイヤリティを支払うことなく写真を二次利用することを可能にするものであり、カメラマンとしての収入源を脅かすものである」として財団に対して苦情を申し立てましたが、財団はその訴えを却下。その決定を財団が公表するトランスペアレンシー(透明性)・レポートを通じて発表しました。

Wikimedia Foundation: Transparency Report
https://transparency.wikimedia.org/content.html


これを受けてスレーター氏は、1万ポンド(約170万円)ともみられる費用を費やして法廷での訴訟を起こすことを決意。「財団の言い分は『サルがシャッターを押したのなら、それはサルのものだ』というものです。財団はわかっていないようですが、その結論を下すのは裁判所です」とスレーター氏は述べています。スレーター氏の訴えを受けて一時は削除されていた画像ですが、後に別の編集者が再びアップロードしたために現在では閲覧可能な状態に復活しています。

スレーター氏は「あの写真は私がさまざまな準備をしたおかげで撮影できたものです。インドネシアへの旅費で2000ポンド(約35万円)、そしてカメラ機材には5000ポンド(約86万円)、そのほかにも保険やありとあらゆる機材にコストがかかっています。プロカメラマンはコストのかかる仕事です。ウィキメディア財団の対応は私たちの収入源を脅かすものです」と抗議の声を挙げています。

公表したレポートの中でウィキメディア財団はスレーター氏に著作権が属することについて「同意しない」としながらも、アメリカの法律では「『人間以外の作者』には撮影した写真に対して自動的に著作権が与えられることはない」という見解を述べています。その上で「著作権を主張するためには、スレーター氏は最終制作物について顕著な貢献を持っている必要がある。その場合でも、同氏が保有し得るのは『顕著な貢献』として行われた変更点についての権利であり、写真そのものへの著作権は保有しない。つまり、今回の案件について著作権を保有する者は存在しておらず、従って写真はパブリックドメインに分類されることになった」と今回の決定について説明を述べています。

ただし、この決定についてはWikipediaの編集者の間でもさまざまな意見が存在しているとみられます。反対意見として「今回の決定は、撮影にいたる状況を作ったカメラマンを冒涜するものです。サルを作品の制作者として著作権を与えるとする法律は存在してはいますが、実際の法的措置や法的意見などが存在しない現状においては独善的に権利を取得する行動に出るよりも、予防原則的にそういった行為を自粛することがベストだと思います」という意見が出ていたり……

In this case the outcome was very disrespectful of the photographer who created the conditions that allowed these photos to be created. There are some jurisdictions where even the monkey could be imbued with the copyright as its creator. Regardless, in absence of actual case law, legal opinion, or even an informed one, it would seem the precautionary principle would be the best approach instead of participating in a self-serving rights grab.

「野生動物を撮影した写真では、カメラの前を動物が横切ることでシャッターが作動して撮影されたものも少なくありません。そのような場合には無駄な写真も多く撮影されるので、マシなものを選ぶなどの作業が必要です。カメラマンが実際にどのような貢献を行ったのかはわかりませんが、このカメラマンがいなければこの写真を目にすることはなかったでしょう。道徳的に見て、法律的にどんな意見があったとしても、このカメラマン(あるいは機材を保有し、現像した人物)に著作権があると考えます」などといった意見が寄せられています。

It isn't uncommon to have nature photographs triggered by the animal passing some light beam. Or lightning photographs triggered by the flash. Or a camera installed to take pictures periodically. These presumably give loads of duff shots and some person chooses the decent ones and works on them a bit and publishes. And we really have no idea what processing the photographer did of the raw shots. We wouldn't have this photograph if it wasn't for that photographer. Morally, I think the photographer (the person who owned the camera and "developed the film") has some rights to it, regardless of whether law has anything to say on the issue.


・つづき
「サルによる写真には著作権は存在せず」との判断、カメラマンは窮地に - GIGAZINE


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