インタビュー

「SmartNews(スマートニュース)」本社はこんな感じ取材レポ&インタビューで根掘り葉掘りいろいろ聞いてみました


Appleの「App Store Best of 2013 今年のベスト」や「Google Play Best of 2013」のアプリオブザイヤーに選出されるほどのニュースキュレーションアプリ「SmartNews(スマートニュース)」を裏で支える人たちは一体どんな人たちで、どんな場所で働いており、そもそもどういう目的を持ってSmartNewsを提供しているのか、という謎を解き明かすためにオフィスに突撃、気になっていたことをすべて聞きまくってきました。

SmartNews(スマートニュース)| ニュースが快適に読めるスマホアプリ
https://www.smartnews.be/


SmartNewsの本社は渋谷の駅から南に少し歩いたところに存在します。


ビルの中でオフィスの入り口を探していると、唐突にシャレたデザインのきれいな空間を発見。よくよく見てみるとここがスマートニュース本社の入り口のようです。


この奥でSmartNewsを開発しているわけです


ここは社員の方々がPCに向かいパチパチとひたすらキーボードを叩き続けるためのデスクが並んだゾーン。だいたい30人くらいが並んで仕事できそうなスペースです。


奥には社員勉強用の参考書がビッチリ。


デスクの反対側は全面ガラス張りでかなり開放的な印象。


ここは会議や外部の人とお話をする際に使われるというスペース。PCとコップが置いてあることから分かるように、デスクから離れてこのスペースで仕事を始める社員さんもいました。


他にもハンモックやバランスボールが転がる謎のスペースを発見。


このスペースは土足厳禁で、ちょっとした息抜きに使われる場所とのこと。ハンモックで揺られているのはスマートニュース株式会社にて代表取締役会長を務める鈴木 健さん。のちほどインタビューにも登場します。


オフィス内の壁の一部は塗るだけでホワイトボードになる「IdeaPaint(アイデアペイント)」が塗られており、実際にホワイトボードとして使用されており、至る所にSmartNewsを構成する要素の一部らしき数式が殴り書きされまくっていました。


中にはSmartNewsの公式キャラクターである地球くんの落書きも。


そして、なぜかオフィスの中央にはバーカウンター。


カウンターの裏側をみると、給水サーバーやお茶パック、コーヒー用のフィルターなどがギッシリ。


オフィスは天井をぶち抜いているのでかなり広々としています。


とある社員が考案したというファミレス式デスク。「ファミレスのようなボックス席が1番集中できる」とのことで作成されたそうです。


オフィス内には置かれている家具などはとても特徴的で、聞いてみるとデザイナーの江原理恵さんにコーディネートしてもらったそうです。


そんなわけでSmartNews株式会社の代表取締役会長である鈴木 健さん(中央)、事業開発担当の藤村厚夫さん(左)、冨田憲二さん(右)の3名にお話を伺いました。


GIGAZINE(以下、G):
まず、GIGAZINEの読者全員がSmartNewsのことを知っているとは限らないので、SmartNewsが完成してここに至るまでの紆余曲折を聞かせていただければと思います。そもそもどういうきっかけでSmartNewsは開発されたのでしょうか?

鈴木健さん(以下、鈴):
一番最初に僕と共同創業者の浜本が出会ったのが5年ぐらい前で、そのあと「もうちょっと一緒に面白いことが出来たら良いよね」みたいなことを話していました。浜本はクローラを作るのが趣味で、いろいろなクローラを趣味で勝手に作るんですよ。それで、ある日Twitterのクローラを作り始めて、それに僕がアドバイスをしながら一緒に始めた、というのが始まりなんです。


鈴:
もともと彼はBlogopolis(ブロゴポリス)という大量のブログデータを集めてそれを可視化するサービスをしていたので、大量の情報データを分析して可視化するというのがすごく得意だったんです。そして、ちょうどその時にTwitterがすごい勢いで伸びていたので、これを分析したら面白いんじゃないかということになったわけです。僕自身もSmartNewsのようなソーシャルニュースリーダーみたいなものを実は10年ぐらい前の、ちょうどFacebookとかが出てきた頃に作った経験があって、それで「そういうのを作ったら面白いんじゃないの」ということになり、最初に作ったのがCrowsnest(クロウズネスト)というソーシャルニュースリーダーです。SmartNewsではなかったんですよ。

Crowsnestは、ソーシャルメディアに流れるリンクを集約して効率的な情報収集を可能にしてくれるソーシャルニュースリーダー。


鈴:
これはTwitterのデータをクロールして、自分のタイムラインの中でツイートされたURLを取ってきて、その中から1番ユーザーにフィットするものを教えてくれるサービスです。例えば自分のTwitterのフォロワーの中で盛り上がっていながら、Twitter全体でも盛り上がっている記事、というのを出してくれるわけです。このサービスをスタートして半年ぐらい頑張ったんですけれども、数万人しかユーザーが集まらなくて「ちょっとこのままだとまずいよね」ということで、意を決してアメリカのサウス・バイ・サウスウエストに行ってCrowsnestのアプリを展示したんですが、これも見事に玉砕してですね。帰りの飛行機の中で「もうこのままじゃまずいからピボットしよう」となって、そこで生まれたのがSmartNewsなわけです。


鈴:
そこから9ヶ月でSmartNewsを作って、2012年12月にアプリをリリースしたということになります。

G:
話の中で「Crowsnestが最初の半年で数万人しか集まらなくて」とおっしゃられましたが、本当はどれぐらい集める目標だったんですか?

鈴:
その10倍ぐらいは欲しかったかな。

G:
数十万ユーザーぐらいですか。

鈴:
そうですね。ただ、あとからよく考えてみるとまぁそんなに集まるはずがないと分かったんですけど。やってるときは真剣だったので、それぐらいを目標にしていましたね。ただ、SmartNewsのアプリをリリースした時は、1日で数万人が一気に入ってきて「こんなにも違うものか」とも思いましたね。

G:
それはすごい差ですね。

鈴:
そもそもニュースリーダーアプリを作ることになったのは、スマートフォンでニュースを読むというのを誰もやっていないなと思ったからです。地下鉄とかに乗って隣を見るとゲームをやってるわけですよ。右を見ても左を見てもやっぱりゲームをやってて、自分のスマホを見てみると自分もゲームをやってて。

藤村厚夫さん(以下、藤):
なんだそりゃ(笑)


鈴:
僕は結構ゲーム好きでクラッシュ・オブ・クランをやってたりするんですけど、なんでこんなに電車でいつもみんなゲームばっかりやっているんだろう、これじゃまずいだろうと。地下鉄みたいな電波の届かない場所でもちゃんとニュースが読めるようなアプリって作れないかなと思ってたんですけど、よくよく考えてみたらそれはみんな地下鉄でニュースを読まないんじゃなくて、読めないんだと。

藤:
読める環境がなかった。

鈴:
回線が遅かったり圏外だったりして読みたくても読めなかったんだ、ということに気がついて「あ、だったら圏外でも読めるようなニュースアプリを作ったら価値があるんじゃないか」と思ったわけです。これもSmartNewsのアイデアの原点になりますね。そして、ただ単に圏外でも読めるというだけじゃなくて、やっぱりスマートフォンに最適なUIUXを最高に作り込もうということになり、知り合いにデザインエンジニアを紹介して入ってもらいました。この人がデザインエンジニアの世界では有名な人で、アメリカのサン・マイクロシステムズというところで、Project Looking Glassというトッププロジェクトをリードしていた人なんです。この人にモックアップを作ってもらったりしながら、文字とかイラストとかを見ていて楽しくなるようなレイアウトを作っていこう、ということになって現在の独特のレイアウトを作りました。


G:
当時のモックアップからあまり今も変わっていないという感じなんですかね。

鈴:
相当いろいろ試行錯誤をしていて、現在のレイアウト以外にも普通のニュースアプリにあるような横一列のレイアウトなんかも準備しましたし、二段組みのレイアウトなどいろいろなパターンを準備して、実際にユーザーテストとかもしたんです。そうすると意外と普通のレイアウトが人気が高くて「あれ!?」みたいな感じだったんですけど……。

藤:
横一列のレイアウトが1番人気があったんです。

G:
Twitterみたいなレイアウトですね。

鈴:
アンケートではこの普通のレイアウトが1番人気があるんですけれども、「ここはまぁちょっと勇気を持ってデータを無視して進んでいこう」ということになり、あえて現在のレイアウトにしています。あとは、SmartNewsではそもそも載っている記事自体がとにかく面白いものしか出てこないようにしている、ということですね。面白いものしか出てこないようにするために、どの記事がユーザーにとって価値があるものなのかをソーシャルメディアを通してユーザーの声を聞くことで導きだし、本当に面白い記事しか出てこないようなアルゴリズムを実現しています。なので、基本的にSmartNewsの上の方に出てくるような記事というのは、どれもみんなが面白いと思っているような記事が出てくる仕組みになっているわけです。


G:
その辺りの質問なんですけれども、SmartNewsはアルゴリズムによる記事配信が全自動であると。手動は一切入っていないとのことで、1日に1000万記事ぐらいを収集して、スコア計算とカテゴリ分けで1日に1000記事程を配信しているという風に伺っています。この記事選別は「Crowsnestの持っているツイートをリアルタイム解析する技術」を使っていると過去のインタビューではお話されていますが、今もSmartNewsはTwitterだけを解析して記事選別を行っているのか、それとも他にも何かソーシャルメディアを解析したりしているのでしょうか?


鈴:
現在は中のデータも見るようにしています。どの記事がどれだけ読まれているかということも参考にしていますし、Twitter以外のソーシャルメディアのデータを見るような試みも始めています。

G:
試みということは今はまだ実装されていないけれども、「将来的には実装するかも」ぐらいの感じですかね。

鈴:
部分的に実験で導入している、という形ですね。

G:
なるほどなるほど。どれくらい記事が見られているかだとか、その辺りのデータをある程度参考にしているということは、見ているとリアルタイムで記事の順番が入れ替わっていくものなんですか?

鈴:
そうですね、より価値の高い記事が出やすいような形にはしていこうと思っています。

G:
実際にSmartNewsを使って「何かいろいろあるなぁ」とかなり前から感じていたんですけれども、ある日突然「読売ソチ五輪チャンネル」というのが登場したじゃないですか。


鈴:
はいはい。

G:
あの2月7日から期間限定で開設されたチャンネルは、合計PVが1400万を越えたとのことですが、あれを見た時に「GIGAZINEもああいうのをやりたいなぁ、こんなのありなのかよ~」と思っていたんですけれども。どういうきっかけでああいう専門チャンネルを作って表示しよう、という話になったんですか?読売さんの方から話があったのか、それともSmartNewsさんの方から「こんなのどう?」と提案したのでしょうか。

鈴:
実は今日からワールドカップ特集というのが同じような形で始まったんですけれども(笑)


藤:
今回のワールドカップ特集チャンネルもそうなんですが、ソチ五輪も基本は「標準チャンネル」というユーザーさんが表示・非表示を選べない形で出てきてしまうチャンネルなので、我々としては非常に慎重に進めました。多くのユーザーさんにとって興味がないものだと余計なことになってしまうのでね。だからあまり度々こういうチャンネルを開設するつもりはないんですが、読売さんの場合は読売さん自身がオリンピックの日本における公式スポンサーメディアというポジションで、非常にいろんな意味で積極的にオリンピックコンテンツを世の中に出していく必要性をお持ちだったので、お話ししてる中で「こういうのやれるかもね」というアイデアが出てきた感じです。読売さんの場合は公式スポンサーだったので、あちらとしてもやってみたくなる企画ではあったと思います。

G:
ではSmartNewsさんの方から声をかけたというよりは、両者で話している間にそんなのをやろうかという話になったという感じですかね。

藤:
はい。というのも、私は大きな媒体社さんや報道機関の方々とかなり頻繁にお会いすることがあるんですけれども、例えば「SmartNewsで何かやってみよう」と話になってもあまりゴールを決めずに議論するようなケースが多いんです。でも、「ソチ五輪を盛り上げなきゃ」というのはわりとゴールもスタート地点も見えていることだったので、一気に「読売さんとSmartNewsで一緒に何かやってみよう」と話が進んだわけです。


G:
なるほどなるほど。またちょっと話が変わるんですが、すごく技術的な質問になるんですけれども、2014年4月16日のSmartNewsブログによると「SmartNewsを読んでいる途中で勝手にApp Storeへ移動する現象について」ということで、広告をタップしていないけど勝手にApp Storeに移動しちゃうよ、という問題については公式ブログで続報がないのですけれども、結局何が原因だったのでしょうか?

鈴:
ちょっとまだ対策を取っているところで、その辺のところはちゃんと調べがついたらまた発表したいなと考えています。

G:
ではブログの更新忘れではないんですね。

藤:
まぁでも基本的に方向感はつかめてきてまして、いわゆるアドネットワークがもういくつも広がってきて、いろいろなアフィリエータが存在している中で、我々自身も気づきにくいようなことが起きていた、ということです。

鈴:
今はアドネットワークの業界の方々から「これが原因なんじゃないか?」みたいな技術的なサポートをもらっている段階です。アドネットワークは我々が完全にコントロールできるものではないので。SmartNewsの「Webモード」というのは完全にブラウザの世界の話で、例えばiOSのSafariと同じようなものなので、その中で起きたことは我々ではハンドリングしきれないところがあるというわけです。なので、どういう現象が起きているのかを日本中のアドネットワークの関係者さんに協力してもらいながら、分析して対策を取っている状況ですね。


冨田憲二さん(以下、冨):
なので、実態としては我々のアプリだけで起きていることというよりは、スマホのアプリで見た時に起きうる現象である、と。


G:
また話がガラっと変わってしまうんですけれども、SmartNewsのサイトを見ていて気になったんですが、2013年11月から「注目のスマートリーダー」というページが始まったと思うのですが一体あれは何なんですか?

注目のスマートリーダー | SmartNews
http://leader.smartnews.co.jp/


藤:
はっはっは(笑)

G:
なんかずっと地道に更新され続けて、ついさっきも更新されてましたけども。

鈴:
あれは何なんですかね。

藤:
地道ですいません。

G:
最新のものだと別所哲也さんへのインタビューでしたよね。これを見ていて「一体何なんだろうこれは」と思って、あれは藤村さんがやっているんですよね?

藤:
そうなんです。

鈴:
藤村さんの趣味なんじゃないですか。

一同:
(笑)

G:
あれはどういった企画なんでしょうか。

藤:
基本は私が更新していてまだ担当者がいない状況です。私は広報もやっているんですが、通常の会社さんの場合、いわゆる商品の認知を広げていくための広報と、会社のイメージや社会的な存在を認知してもらうための広報の二つをやらなきゃいけないと思うんですけれども、我々は製品をひとつしか持っていないのでこれの後者の方をしっかりやらないと、というところです。なので、我々がユーザーさんにとってどんな存在でありたいかを少し多面的に知ってもらうために、いろいろな分野の非常にユニークな仕事をされている方々にご登場いただいてます。

G:
俳優の別所哲也さん、ITジャーナリストの林信行さん、元Google日本の社長であった村上憲郎さんというようにして共通点がよくわからないのですが、どういう共通項があるのでしょうか?

藤:
共通点はですね、唯一「SmartNewsが大好き」というわけです(笑)まぁそんな方々にSmartNewsの話だけしてもらっても内輪話みたいになってしまうので、これからの時代のいろいろな方面でのリーダーになり得る方々に話を聞いて、我々の会社の企業広報的な位置づけにしているという、そんなところですね。

鈴:
藤村さんは元々編集とかをされていた方なのでコンテンツが大好きなんですけど、うちはアグリゲーターなので全くコンテンツを作らないんですよ。僕も元々本とか記事とか書いていて、共同創始者の浜本もよく記事を書いていたので、みんなコンテンツを生み出す側の人たちなんですよね。なので、今はアグリゲートしかしていないのでだんだんストレスが溜まってくるんですよ。だから記事も出そうかなというところで、藤村さんがすごい楽しそうにインタビューしてるわけです。

藤:
いえいえ(笑)

鈴:
そういうことを自分たちでもやっていくのは良いかなと思ってます。ただ、実はスマートリーダーに出たからといってSmartNewsに載るとは限らない、という非常に公平なアルゴリズムでやっていまして。

藤:
そうなんです、なかなか紹介していただけていないので。

G:
SmartNewsには出てこないので余計にあれは何のためにやるんだろうと思って……。そういうことなんですね、なるほどなるほど。

鈴:
はい、自社メディアでも差別はしないみたいな。


G:
藤村さん絡みの話が出たので、藤村さん個人に質問させていただきたいのですけれども、これまでいろいろなメディアで受けてこられたインタビューをいろいろ見るたびに「なんで誰もこれを質問していないんだろう?」と不思議に思うことがあって、元々株式会社アスキーの編集長として活躍されて、それからネットワーク技術専門の月刊誌の編集長などを歴任してから、98年代にロータス株式会社に転籍してマーケティング本部長となってマーケティングをして、それから今度は株式会社アットマーク・アイティを作って、アイティメディア株式会社のところにくっつけられて、いつの間にか会長になっていなくなって、気がついたらSmartNewsに来ているという感じになっているんですけれども……。

藤:
よく調べてますね。


G:
もしかしたらどこかで答えられているのかもしれないですけれども、ITmediaまではまだ流れ的に分かるんですけれども、ITmediaから何をどうしてSmartNewsの方に来たのか、というのが全然どこにも書いていなかったので、どういう経緯で関わることになったんでしょうか。

藤:
基本的に僕はこれまで紙媒体をやっていて、100%ウェブのメディアというものを考えたときに、紙はある種の資源の無駄遣いな要素もありますし、紙では届きにくいユーザビリティなんかも含めて新しい媒体分野で、これが21世紀のメディアの仕組みになってくるんじゃないかと信じ切って十何年やってきました。しかし、会社を公開してガンガン行こうと思ったタイミングでリーマンショックにぶつかってしまい、そのときに既存のメディアである新聞や雑誌の広告収入が傾いたんですが、自分たちはそこから離陸したつもりだったのに自分たちもガーンと来ちゃってですね。「これって全く変わらない仕組みでメディアをやっていたんじゃないか」という風に思えるようなところがあって、自分の中で21世紀のメディアってどういうものなんだろうと思ったときに「これはもう一度作り直しだな」という風に思いました。その時いくつかの視点があって、モバイルというのも大きいトレンドですし、ユーザーにとっての自由というか自在なコンテンツへのアプローチなど、いろんな視点が頭の中をもやもやしてきて、一言で言うと「もう一度自分で何か創業しよう」と思ったわけです。そして、ベンチャー的なところに向かって少し自分の関心を向けて「どういう風にやればそこに行けるか」みたいなところを自分の中でもんもんと考えていた時に、鈴木さんと……

鈴:
はい、飲みに行って。


藤:
まぁここは偶然みたいな。この時に彼がSmartNewsでやりたいことだとか、そういう話を熱心にしてくれて。

G:
その当時はもうSmartNewsを始めた頃だったんですか?

藤:
そうですね。

鈴:
えっと、SmartNewsをリリースしてたぶん1ヶ月半か2ヶ月ぐらいですよね。

藤:
年は越してたね。

鈴:
はい。1月か2月ぐらいに、知人から紹介してもらって渋谷の地下のすごい良い感じの飲み屋に連れて行ってもらって、最初に話したのが吉本隆明さんの話とかでした。

G:
ははは(笑)

鈴:
それで30分ぐらい話して、ずっと吉本隆明さんの話とかをしていて「いやぁこの人すばらしいな」と思って。

藤:
どういう意味だ(笑)

鈴:
実は全くSmartNewsの話はしてなかったんですけど。

藤:
まぁそのあとに、SmartNewsの話などを聞いて、「自分がやるんだったら……」という風に自分でベンチャーをもう一度創業するときのイメージとかなり重なる部分というか、SmartNewsならそれを出来るという風に思える要素があって、だったら自分の勉強のためにもなるので、「一緒にやるー」とその瞬間に答えていたというか。

鈴:
即答していただいて。

藤:
30分お酒を飲んで、それで、はい。

G:
すごい勢いですね(笑)

藤:
まぁそこからいろいろ調整期間も必要でしたけど、判断は1月か2月くらいでしたね。

鈴:
直感で、というか一目見たときから「この人はただ者じゃないな」と。

藤:
ただ者じゃない(笑)

鈴:
実際にただ者じゃなかったですね。

G:
なるほどなるほど、そういう経緯だったんですね……。今までどのインタビューを読んでも、どこから藤村さんが湧いて出てきたのか全然分からなかったので。

藤:
まぁITmediaはしっかりした会社になって、自分がいなくても全然回るので。むしろ自分のこれからの食いっぷちも含めて考えなきゃいけないタイミングだったんです。

インタビューに応じてくれた3人は全員Macユーザーで、天板部分にSmartNewsステッカーを貼っていました。


G:
そうだったんですね。あと、藤村さんの経歴のところでもう一つ。SmartNewsのインタビュー記事を見ると大体いつも藤村さんが答えているので、その度に経歴が出てくるじゃないですか。あれを見るたびにいつも不思議に思っていたのが、1番最初がアスキーで、次にロータスに移って、アットマーク・アイティを作り、ITmediaに吸収されて、現在はSmartNews、という経歴ですがメディア系ばかりの中でロータスだけ浮いていると思うのですが。

藤:
あれはですね、自分の中ではソフトウェアのプロダクトに関する仕事というのがひとつありまして。実はアスキーの前にも結構キャリアはあったんですけれども、そこでもやっぱりソフトウェア関連のベンチャーで仕事をしていまして、そのあとアスキーに入社したのも実はアスキーのソフトウェアビジネスの方に入社したんですよ。データベースとかそういう系統の製品でプロダクトマーケティングをやるという仕事をしていたんですが、アスキー自体がソフトウェアをたたむということで居場所がなくなってどうしようかなと思ったら、社内に出版部門があるので「出版の方に来てよ」みたいな話で出版に移ったんです。

鈴:
あ、そうなんだ……。

藤:
それでしばらくアスキーでやっていたんですが、インフォテリアの平野さんという人が創業してロータスを抜けるので「後釜がいないので人を探している」とロータスから問い合わせがあって、話をしてそこに行くことになったわけです。自分の中ではメディアとソフトウェアビジネスの二つを行ったり来たりしているといいますか、自分の中で二軸がありますね。

G:
なるほど……。ロータスを見たときにソフトウェア的なものがちらほら見えるので、それとSmartNewsは何かどこかでつながっているんだろうなとは思っていたんですけど、今の話を聞くと「あぁ、なるほど!」という気がします。

藤:
まぁあの当時、Lotus Notes/Dominoのプロダクトマーケティングの責任者をやらせてもらって、エンジニアの人間たちやマーケティング・ビジネス・コンシューマーという人たちの間を取りまとめていく仕事に携わらせていただいたので、そこで僕にとってのエンジニアに対するリスペクトが育ったというのがあるので、わりと自分の中では良い経験、他人からすると理解がしにくいという。

G:
いやいや、そういうつながり方でいくと個人的には非常に腑に落ちました。

藤:
これを聞かれたことは今までなかったです。

G:
そうなんですか。何か聞いても答えてくれない怪しい案件なのかな、とか思ったんですがそういうことはなかったんですね。

鈴:
藤村さんのテクノロジーに対する洞察とリスペクトはすごくて、すごくエンジニアを大事にしてくれているんですよね。ここだけの話、入社するときに「自分の給料はいらないからエンジニアの給料を上げてくれ」って言って入ってきたんです。

G:
おおー、それはすごいですね。

藤:
その当時は本当に会社もカツカツな状態で……まぁ今でもカツカツですけど(笑)

どこで仕事をしてもOKなSmartNewsでは、バランスボールやクッションに囲まれながらごろ寝スタイルで仕事をするスタッフも。


G:
今度はまた鈴木さんの話に戻るんですけれども、藤村さんは元々経営者という立場でいた訳じゃないですか。そして鈴木さんは現在経営者なわけで、何かこれまで話をして「あ、さすがだなぁ」と思うような経営者目線な話はありますか。

藤:
そういうのはないよね(笑)

鈴:
そうですねぇ……。まぁいろいろありますけど、浜本はもともとエンジニアで、僕はどちらかというと研究者なんですね。僕はVCや会社の経営なんかもやってましたけど、藤村さんのように規模の大きな会社を経営したことはなくって、基本的にあまり気にしないでやんちゃに振る舞ってしまうときがあるんです。例えば、パーティーとかで大事な人が来たときとかに僕らはちゃんとケアしないんですよ(笑)

藤:
そういう話か(笑)

鈴:
藤村さんは全てちゃんとケアしてくれて……そういうのから始まって、ですね。

藤:
脱線になっちゃって申し訳ないんですけど、そういう経営的なものを背負って経営者然と振る舞うことのつまらなさみたいなものを感じちゃってるんです。まぁそれは人それぞれだと思いますけど、僕はここに経営者の顔をして入っているつもりはなくて、下働きだと思っているので。

鈴:
結局人が会社を作っているじゃないですか。一人一人の心の動きってありますよね、そういうのに対する目配りみたいなものが僕は経営の中で1番重要だと思っているんですが、藤村さんは僕らが気づかない一人一人の社員の変化みたいなものをちゃんと気づいて教えてくれるので、それでこう「あぁ、なるほど」と思うことがあります。

藤:
こんなバッジがぶら下がっているとか?

鈴:
そうそう。

G:
え、なんですかその「バッジがぶら下がってる」というのは。

藤:
妊娠マークがぶら下がってた、みたいな。

鈴:
妊娠マーク、そうそう。社員の方が妊娠したとかそういうのってなかなか気づかないじゃないですか。

G:
あぁー、そういうことですか。

鈴:
そう、藤村さんだけ気づくんですよ。基本的にこの人数なので……

G:
現在スタッフは何人ぐらいいらっしゃるんでしたっけ?

鈴:
13人です。いわゆる大きな会社における経営みたいなものはまだ必要ない段階ですね。

藤:
なるべく会社ごっこみたいなことはしないという。

鈴:
そういうヒエラルキーのあるような組織みたいなものは作りたくないので、なるべくないようにと。逆に言うと、今のところは経営が必要ないように設計してるっていう感じですね。これから大きくなってくると仕組み化しなきゃいけない部分は出てくるので、それは徐々に変わってくるとは思うんですけれども。

藤:
まぁでもどう抵抗するかだよね。そういう風になってしまうのに対して。

鈴木:
いわゆるルールとかに束縛されて官僚化していく、というのも徹底的に排除したいと思っていて、徹底的に排除することに対する意志だけはすごく強いです。


G:
おー、なるほどなるほど。あと、これもまた話がずれてしまうんですけれども、5月16日に行われた「第1回メディアパートナーミーティング」にパートナー候補ということで出席させていただいたわけです。


その時に聞いた話だと、合計インストール数が300万に達してアクティブ率が月間で75%


日次アクティブ率が38%


エンゲージメント率が50%


総フリップ数が月間で11億いっていて、Googleのアプリオブザイヤーを受賞して、App Storeでも今年のベストに選出されたというような景気のいい話がたくさん続いていました。


けれども、あれを見ていてすごく気になったことがあって、結局、現在の収益源は一体何なのでしょうか?というのも、過去の取材でも、例えば直近ではSleipnirを作ってるフェンリルさんなんかにも聞いたんですが、僕の周りのSleipnirユーザーはSleipnirだけしか知らなかったので、フェンリルはいつか潰れると思っている人がほとんどで、あんなのが収益になるわけがないと思っていたんです。それ以外にもいろいろなところで聞いていると、ここ最近ソーシャルゲームなんかは出ては消え出ては消えを繰り返しているじゃないですか。それのおかげでちゃんと収益ベースに乗っていないと、その会社・サービス・アプリなりはいつか潰れて消えるんじゃないかだとか、逆に好調だったらどこかに買収されて消えるんじゃないかだとか、そういう風にみんながそこはかとない恐れみたいなものを抱いているわけです。つまり、「このアプリはいつまで続くんだ?」と懸念を持っているのですね。それでいくと、個人的に非常に気になるのが「スマートニュースって大丈夫なの?」というところになります。なんといってもこの前のメディアパートナーミーティングでも、収益をメディアに対してどれぐらいのパーセンテージ分けるんだろうと思ったら、「100%媒体社です」と書いてあって、「うちはいいけれどもスマートニュースさんは……?」と思うわけです。すごく下世話な話なんですけれども、今その辺りはどうなっているのでしょうか?

第1回メディアパートナーミーティングでメディア側に広告収益を100%配分すると発表する藤村厚夫さん


藤:
一言で言うと、大丈夫です。

G:
大丈夫なんですか!

藤:
大丈夫です、はい。大丈夫なので安心して使ってください。今のところは収益はほぼゼロで……

G:
ほぼゼロで大丈夫というのはどういうことなんですか?

藤:
ほぼゼロでやっていますが、去年の7月にVCから4億2000万円出資していただいたのでそのお金で回していますし、そこからまだ追加の調達もしていこう、と考えております。

G:
今後もやはりVCさんから資金調達をする予定はあると。

藤:
はい、なので大丈夫です。収益化についても当然しっかりやっていきます。今の時点でも収益化しようと思ったら黒字化することは出来るんですね。なのでその辺りは心配していません。

G:
なるほどなるほど。かといって、こういった話が頻繁に表に出るわけでもないので、外から見ると「一体この金はどこから降ってきているのだろう」というような感じに見えていたんですよ。今そういう風にして断言していただけるというのは非常にすばらしいと思います。

藤:
もう全然大丈夫ですね。先ほど申し上げたようにスタッフは全部で13人ぐらいで、このぐらいの人数で先ほどおっしゃっていたような規模を運営していますので、我々もスタッフを増やさなければいけない状態にあるんです。例えば広告を入れたりすることによって得られる利益も我々の中ではシミュレーション出来ているんですが、今は我々の成長の方を加速したい時期なので、成長を加速させつつこっちでは広告、こっちでは課金みたいなことをやっていくと、やっぱりユーザーさんの成長スピードが鈍るかもしれませんし。

鈴:
今はスタッフが全部で13人しかいないんですが、半年以内に40人ぐらいまで増やしていきたいと思っています。

G:
おお、一気に増えるんですね。ということは今はどちらかというと人手不足に近いんですかね、それともここから先さらにやることがあって、そのために増やすという感じなんですかね。

藤:
両方ですね。ちなみに今の時点でも一人二役、三役みたいな感じでやっているので、より専門分野にフォーカスしていくというのと、やりたいこともどんどん増えていくので、エンジニアもビジネスの人もコーポレートの人も全部増やしていこうと思っています。


G:
なるほど。最初はてっきり藤村さんと話をするのかと思っていたので、こんな質問をする予定はなかったんですが、今見たら鈴木さんが目の前にいるので、ぜひとも聞かせてもらおうと思います。またいやらしい質問になるかと思うんですけれが、2014年2月にTechCrunch Japanに「SmartNewsからのPV誘導が月間100万を超えるメディアが66媒体に」という記事が載ったんですが、その中で「原則としてSmartNewsと媒体のパートナー提携に金銭は発生しないが、『102媒体のうち数社には記事のライセンス料を支払っている』(藤村氏)のだとか」と書いてあるんですけれども、SmartNewsがライセンス料を払っている媒体と払わない媒体というのはどういった判断で区別しているんでしょうか。

藤:
基本はですね、ライセンス料という概念はあまり持たずに運営させていただいています。

G:
ですよね。

藤:
ただ、大きな媒体社さんで、例えば我々のような外部にコンテンツを配信するということを今まではやってこられなかった媒体社さんの場合、ビジネスモデルには「有料で他社にコンテンツを提供する」というものしかないケースが多くてですね。そういうどうしても「そのモデルでないとSmartNewsとはお付き合いできません」というような媒体社さんとのお話では、レアなケースですけれども支払いをさせていただくケースもあります。我々も先ほど申し上げたように売り上げを立てているわけでもないので、潤沢に外部に資金を提供するわけにはいかないんですが、お支払いという取引の関係がないとSmartNewsと口座を開けません、という媒体社さんはさすがに何社かあるので、そういう方とはご相談の中で低額ではありますけれどもお付き合いさせていただいているわけです。ただそれをどんどん広げて、という体力が我々にあるかというとそんなことはないので、今のところ我々としては従来通り、トラフィックを重点にしたお取引が出来るような形でやらせていただいています。


G:
なるほど。たしかこれは2013年12月なんですけれども、ケータイ Watchの「[スマートフォンアプリ開発のツボ] Googleが太鼓判を押す「SmartNews」の藤村氏に聞く」というインタビューの中で、「SmartNewsは『検索エンジン+ブラウザ』として振る舞っているので、キャッシュだとか著作権問題だとかでいろいろ言われているけれども、それらは誤解だよ」みたいな説明があったんですけれども。「検索エンジン+ブラウザ」として振る舞うというのは誰がどう見てもかなり無理がありますよね。というのも、なぜこんなことを断言したのかというと、GIGAZINEの場合は無料でトラフィックとのバーターで掲載するだけではなく、有料でニュースを卸すという通信社が新聞社にニュース配信しているのと同じような形態もしているわけです。

藤:
そういう媒体社さんが多いので先ほどのような議論になりました。

G:
GIGAZINEのニュースを勝手に載せているアプリはいくらでもあるんですが、ほとんど取るに足らない数なので今までほとんど考慮してこなかったんです。けれども、毎月月末に掲載しているアクセス解析の記事を見てもらうと分かる通り、SmartNewsさんからはものすごい量の人が来ているので、「これはどうしたものだろう」ということで一度、弊社の顧問弁護士に相談したんですよ。それでまぁ「SmartNewsさんがこういう説明をしているんだけれども、技術的にこういうのって通じるんだろうか?」ということで聞いたら、「通じるわけないでしょう」という話になってしまって。

藤:
そうですか(笑)

G:
「だってそんなのは自称でしょう」というので。ちょっとあの説明ではSmartNewsさんがやばい立場に追い込まれてしまうのではないかと思っていると、それ以降のインタビューではこういう説明がなくなっていったんですね。それで、最初の「検索エンジン+ブラウザ」として振る舞う、というのはやっぱりそう説明せざるを得ない何か理由みたいなものがあったのかな、と思ったわけです。普通のニュースアプリというのではなく、「検索エンジン+ブラウザ」みたいなちょっと変わった説明というのがちょっと腑に落ちなくて、普通にニュースアプリと言ってはいけないのかなと。

藤:
えーとですね。僕がSmartNewsに参加したのはサービスが立ち上がってから2、3ヶ月後の話なんですけれども、媒体社さんを回り始めて「SmartNewsと良い関係になりましょう」と、媒体社さんに貢献できるアプローチをご提案するための場を設けさせてもらったところ、媒体社さんが1番最初に気にされているのは「コンテンツの複製を持って行く会社なんじゃないか」という部分であることが分かりました。なので、我々は「仕組み上サーバーにもアプリにもコンテンツの複製を保持する仕組みは持っていない」ということを一所懸命説明する必要があったんです。それを何回も何回もやって、勝手にコピーをとって複製を持っていくわけではないことを理解してもらうことで、こちら側に対する懸念を解いてもらうことができ、それからこちらからいろいろなメリットを提供できます、というビジネスのお話をスタートさせるという二段階が媒体社さんとの話し合いの場では必要だったんです。


藤:
「複製を持って勝手に自分たちで何かコンテンツを使っているんじゃないか」だとか、「勝手にビジネスをしているんじゃないか」という話のあとに、各媒体社さんに対するトラフィックの戻りがないんじゃないかという話になり、その当時既にトラフィックが戻る仕組みはあったんですが、リファラーが見えないことによってそれを確認出来なかったんです。我々がそこは手抜かっていたところではあるんですが。しかし、今はリファラーが見えるようになったので分かっていただけるようになって、そういったプラスの面を説明できると納得してもらうことができるようになったわけです。ただし、1番最初の「コンテンツの複製を持ってるんじゃないか」というところについては少しややこしくて、技術的な説明と発想としては先ほどおっしゃられたように、我々が複製を自動的に持っていて、ユーザーに我々が渡しているというわけではなく、持たずにキャッシュの仕組みを使っています。そして、「ユーザーさんにはユーザーさんの選択で随時コンテンツにアクセスしてもらっているので、どこにもコンテンツの複製を実体的に持つわけではない」という話をしています。そこが最初は説明が分かりにくかった部分で、私が何度もお話する中でだいぶ納得してもらえるようになった、というところです。そしてその片方で、ビジネスの提案の方は比較的受け入れていただけることが多くなったので、今は100数十の媒体さんとの提携が進んだわけです。


G:
では今提携している100数社さんというのは、要するに著作権違反だとかその辺りについてはもう問わないよ、という感じで上手く関係ができたということなんですね。

藤:
技術的に納得してもらわないとどうしてもビジネスの話にはならないので、そこの技術的なご説明を一所懸命したわけです。言葉としてまだ上手くないというところはあるかもしれませんが。

G:
やっぱりその辺りの交渉みたいなものは大変だったんですかね?

藤:
そうですね。媒体社さん側のコンテンツを広めていかなければいけない目的意識、特にこの時期はどこの媒体社さんもスマートフォン戦略がすばらしく上手くいっていますなんていうところはないので、スマートフォンのトレンドが来たときに自分たちのコンテンツを広めていかなければいけない。ウェブの時代では例えばヤフーさんと媒体社さんの関係みたいなものがありました、と。スマートフォンの時代はどうすればいいんだろうと考えていらっしゃる時期ではあったと思うので、コンテンツの取り扱いという仕組みの部分についての懸念や観点が解ければちゃんと我々と付き合って良いよという媒体社さんが潜在的には多いという風に私自身は分かっていましたので、お話していく中で一つの技術的な問題とか法律形式論の部分に関しては納得してもらい、逆にビジネス的な条件に関しては見てもらって「乗った!」というような流れにしていくと。

G:
著作権のことを突っつきたいというのではないのですが、媒体社さんと話をするときというのは、どこと話をしているかがよく分からなかったんですけれども。窓口になっているところというと、技術的な方のところと話をしているのか、それとも法律の方なのか、宣伝とか広報、一体どこと話をしていってそんなに上手くまとめていったんでしょうか。

藤:
大きい会社とかだとそういう交渉は編集の現場の人間はやらないという場合があるんですけども、基本僕は編集の現場の方と会いたいと思っているんです。僕は媒体の中にいる人たちの悩みはわりと分かっているつもりだし、先ほど言ったような「コンテンツの複製を持ってるんじゃねえの!?」みたいな懸念というのは直感的に嫌なので、自分が作ったコンテンツで自分たちのビジネスをしなきゃいけないと思っている人たちと直接話をすると、我々が考えていることだとかやっていることのメリットも含めて説明できると思っているので、なるべくそういう方々と話しているつもりです。いわゆる形式上の会社の玄関口で話をしていると、まずは形式論的な議論になりがちなのでね。もちろんそこも避けてはいないつもりですが、やっぱり自分たちのメディアを時代にどう適合していくか、どうやって成長していくか、という問題を抱えている方とお話しすると、まぁわりと解けるようですね。

G:
なるほど。わりとピンポイントで話の通じる方を上手く見つけ出して話をして、という感じなんですか?

藤:
そんないやらしくはないですよ(笑)


G:
(笑)

藤:
人脈政治ではないですから。

G:
人脈というわけではないんですね。

藤:
やっぱり媒体社さんも我々みたいなところとどうコミュニケーションをとっていいか分からない部分があったと思うので、インフォ宛にメールをいただいたりするケースが多かったですね。

G:
向こうから、というのも結構あったんですね。

藤:
そうですね、問い合わせも多かったです。日本の媒体社さんのメンタリティとしては、話の通じないやつというのが1番困るので、話が通じるやつらです、みたいなところでお話をしていました。

G:
さっきの話だと担当者一人という話だったので、それをずっと一人でやっていたということなんですよね。

藤:
そうなんですよ。なので「来るの遅いんだよ!」というのは結構今でも怒られますね(笑)

G:
よくそんな膨大な量の仕事を一人でこなせましたね、100数十以上もの媒体……。

藤:
まぁ基本メディアの世界は楽しいですね、はい。
G:
なんか今の話を聞いたら胃に穴が開きそうな話に聞こえるんですけれども(笑)それだと朝から晩までずっと働き通しなんですかね。

藤:
いやいやそんな。僕は1番のんびりさせてもらっていて、ただやっぱりエンジニアに気持ちよく仕事してもらわなきゃいけないので、なるべくそういうノイジーな要素は僕らが引き受けられたらとは思っています。

G:
なるほど。では最後の質問になるんですけれども、今後のSmartNewsはどういう方向性で行こうと考えているのでしょうか。

鈴:
SmartNewsが実現したいことというのは、メディアの人たちが書いているその良質なコンテンツを発見して、すごくたくさんの中から良質なものをたくさんの読者に読んでもらうようにマッチングすることなんですよね。そして、これはSmartNewsのアルゴリズムとUIで今実現していることだと思うんです。でも、メディアのビジネスとユーザー全体を考えてみるとこれはごく一部分の話で、良いコンテンツを発見してそれを読めるような状態にしていくというところだけなんですよね。でも、僕らが目指すのは全体のエコシステムを作ることによって、より良質なコンテンツがどんどん生まれてくるような社会なんですよ。そうすると、当然メディアの方々の収益化をどういう風に手伝っていくのかというところは絶対にやりたいし、それだけじゃなくてメディアの人たちの取材をするところはどうやって手伝えるかだとか、記事を書くところをどうやって手伝えるか、そういったところもやっていきたいなという風に思っています。これは結構ロングスパンの話ですけれども、そういういった部分を目指しています。


G:
なるほど、今言った話というのはこれから先何年ぐらいのスパンの話でしょうか。

鈴:
3年ぐらいかな。

G:
なるほどなるほど。

藤:
我々はアプリを作っている会社で、ビッグデータも扱っているわけです。ビッグデータを解析していろいろ多面的な価値を引き出せる仕事をしているということもあって、SmartNewsから離れるつもりはないにしても、ここに集まっている「コンテンツに対する膨大な評価情報」は、元々はコンテンツを作られた方々と関係するものなので、こういう方々に対してやはり何か役に立つ情報としてお返しする、なんていうのも一つの方法としてはありなのかなと思います。

鈴:
これちょっとさっきの繰り返しになりますけど、藤村さんは元々編集の世界にいて、実はその前には文芸批評というか、書く世界にいたんです。僕自身も本を書いたりとか記事を書いたりとかはすごくよくやっていて、どちらかというと研究をして書くサイドの人間なんですね。浜本も記事を書いていたり翻訳書を書いたりとかしていて、そういう中で書く作業や記事を作る作業は一体どういう思いでやっているのか、という部分はすごく分かっているつもりです。なので、せっかく書いたものがたくさんの人たちに読まれ、ちゃんとそれが収益になって回っていく、という今はまだ実現していない世界を、テクノロジーの力で作ることを僕たちの力でやりたいなという気持ちがすごくあります。

G:
最後にもう一つ質問したいんですけども、SmartNewsは基本的には個人ブログなどから記事を集めてくるというよりは、ニュース媒体をターゲットに考えている感じなんですかね。

鈴:
良質な記事を書く人というのは当然メディアの中の方々もいますし、個人で書かれている方々もいると思います。僕らはそういう全体の、なんというかな、一人一人のしっかり良いものを作っていこうという人たちを応援したいという気持ちでいます。

藤:
まだ十分じゃないということですよね、それはね。

鈴:
そうですね、今はまだ大きなメディアしか出てこないような形にはなっていますね。

G:
ということはゆくゆくはその辺りの末端、と言えば変ですけれどももう少しいろいろなところから集めてくる、という感じの構想はあると。

鈴:
そういう風になっていくと思います。

G:
非常にいやらしいこともいっぱい聞いてしまいましたが、とても面白い話も多く聞くことができました。本当にありがとうございました!

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https://www.smartnews.be/

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in 取材,   インタビュー,   モバイル,   ソフトウェア, Posted by logu_ii