サイエンス

天体写真に絶大な影響を与えた発明を考えたのはアマチュア天文家だった

By Luca Argalia

天文学に興味のない人でも名前を聞いたことのあるガリレオ・ガリレイは、自ら作成した望遠鏡を使って月のクレーターや木星の衛星などを発見し、当時は信じられていなかった地動説を提唱したことなどから「天文学の父」と称され、天文学に偉大な貢献をしました。その天文学を語る上で欠かせないのが美しい天体を撮影し、裸眼では見えない天体の詳しい姿を明らかにした天体写真です。実は現代の天体写真撮影において欠かせない技術を発明した人物は、プロではなくアマチュアの天文家であったことはあまり知られていません。

The Greatest “Amateur” Astronomer of All Time — Starts With A Bang! — Medium
https://medium.com/starts-with-a-bang/87937d92369b

ガリレオは1608年にオランダで望遠鏡の発明特許について知った後、倍率が20倍の望遠鏡を作成。この時から、人間の裸眼では確認できなかった星を望遠鏡を通して誰でも見ることが可能になりました。時間の経過とともに望遠鏡も進化し、サイズが大きくなり、集光力も上がって段々と宇宙の構造が明らかになっていきます。


例えば、球状で中心に光り輝くコアを持つと思われていた球状星団が、実は数十万個もの恒星が互いの重力で球状に集まった天体だったことも、望遠鏡の進化なくしては判明しなかったことです。しかしながら、当時はまだ写真が存在していなかったため、天文学者は望遠鏡をのぞきながら、自分の目で見たものを手描きでスケッチして星や星雲の位置、星の明るさなどを書き記していました。

1840年の終わりには、アイルランドの天文学者ウィリアム・パーソンズが口径72インチ(約1.8メートル)の天体望遠鏡を建設。パーソンズの天体望遠鏡は当時世界最大のもので、らせん状の構造をしている星雲など、それまでは確認できていなかった天体のさらに詳しい構造が明らかになりました。


下記の画像は、パーソンズによってスケッチされた、りょうけん座にある渦巻銀河「子持ち銀河」です。望遠鏡の質が上がっても、望遠鏡から得た情報は手で記すしか方法がありませんでした。


しかしながら、19世紀初頭に写真が登場したことで、写真の技術を天文学に利用できないかと考える天文家が現れ、天文学は大きな変化を迎えます。ただし、天体を撮影するには「地球の自転によって天体が動くこと」「重いカメラを安定させること」「レンズを対象に正確に向けること」といった問題を克服する必要があり、印刷される写真の素材にも表現に限界があったとのことです。

当時の技術では天体撮影に問題があったものの、望遠鏡やカメラの進化により1851年の皆既日食中に世界で初めて太陽のコロナが撮影されます。その後の数十年間で、天体写真の技術は発展し星だけではなく星雲の撮影にも成功。しかしながら、天体写真史がすさまじい勢いで発展した影には、プロではなく1人のアマチュア天文家の存在があったことはあまり知られていません。


ビジネスマンであり、技術者でもあったアイザック・ロバーツは天体写真に興味を抱き、1880年代に当時はイギリスで最大であった50センチメートルの反射望遠鏡を購入します。ロバーツは購入した望遠鏡を使って、さまざまな実験を実施。多くの技術を試しながら、望遠鏡の改良に向けて研究をしていたそうです。

実験を重ねたことで、ロバーツは、望遠鏡内部に3枚セットアップされた鏡の中の2枚目の鏡がもたらす「集光しにくい」という問題を取り除き、光学装置の主焦点にある感光板を用いた望遠鏡で天体写真を撮影した世界で最初の人物になります。しかしながら、ロバーツが天体写真にもたらした一番の功績は他にあり、その技術は今なお使用されているピギーバックと呼ばれるものです。


天体写真を正確に撮影するには、長時間露出で撮影することが必須。ただし、天体は地球の自転運動により回転しているため、長時間露出すると、星の移動した跡が写真に残ってしまいます。この問題を解決するには、天体の回転を追尾する必要があるわけです。それを可能にしたのが、ロバーツの発明したピギーバックという技術です。

それまでは1分間ほどの露出時間が限界でしたが、ピギーバックの発明により露出時間が1時間まで拡大し、ロバーツは以前とは比べものにならないほど多くの情報量を含んだ天体写真の撮影に成功します。下記はロバーツが世界で初めて撮影に成功したアンドロメダ銀河。ロバーツが撮影に成功するまで、アンドロメダ銀河が渦状構造になっていることは分かっていませんでした。


こちらは現代のカメラで撮影したアンドロメダ銀河。画質に差はあるものの、ロバーツが撮影した写真との圧倒的な形状の違いは見られません。


偉大なる発明は、偉大なる科学者や技術者によって生み出されるものではなく、ロバーツのようなアマチュアの技術者からも生み出されています。例えば、雲という物質に名前をつけ、気象学という分野をつくったのはアマチュア学者のルーク・ハワードという人物。普段何気なく接しているモノでも、そのルーツに目を向ければ、意外な事実や面白いストーリーに出会えます。

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in メモ,   サイエンス, Posted by darkhorse_log

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