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YouTubeに7万本以上アップされた謎の暗号ムービーの意外な正体とは?


トム・クルーズが主演していることでも有名な映画シリーズ「ミッション:インポッシブル」(または「スパイ大作戦」)では、当局からスパイに送られる指令テープの最後に「なお、このテープは自動的に消滅する」というメッセージが流れて煙が立ち込めるというシーンが登場します。そんなスパイ映画をほうふつとさせるムービーがYouTube上に存在することがわかって話題を集め、そしてついにその正体が明らかにされることとなったのですが、いったいどのような顛末だったのでしょうか。

The truth behind one YouTube account's 77,000 mysterious videos | Technology | theguardian.com
http://www.theguardian.com/technology/shortcuts/2014/may/01/truth-youtube-mysterious-videos-webdriver-torso

謎のアカウントWebdriver Torsoがアップしているムービーの一例がこちら。ランダムに表示される図形と「ピー」というテスト用の信号音による妙なメロディだけが再生されるという不気味な内容になっています。

tmpR6adie - YouTube


なんともいえない怪しさを醸し出して、ある種の恐怖すら感じさせるムービーですが、「Webdriver Torso」のチャンネルにアップロードされているムービーの一覧を見ると、さらに驚愕の内容を目にすることになります。

Webdriver Torso - YouTube
https://www.youtube.com/channel/UCsLiV4WJfkTEHH0b9PmRklw/videos


無機質なサムネイルがズラリと並ぶ画面に思わず戦慄してしまうのですが、なんとこのアカウントでは同様のムービーが7万7000本以上もアップロードされていることがわかっています。いったいこのムービーは何のために、誰に向けて公開されているのでしょうか。


◆謎の解明に乗り出すネットの人々
ネットに寄せられた意見には「新しいジャンルのゲームじゃないか」といったものや、「バイラル・マーケティングの一種じゃないか」、そして当然のように「これはスパイ活動の一環だ」といったものが寄せられました。イギリスBBCのラジオ番組「Today」の公式ツイッターでは「エイリアンが攻めてくる」や「広告キャンペーンの手法だ」という声が紹介されてもいました。

また、Boing Boingのコラムではユーザーから「これは、人知れず世の中に送り込まれた工作員に対して指令を送る乱数放送の一種ではないか」という意見が寄せられています。これは現在でも一部の国などが実際に使用していると考えられている手法で、一目見ただけでは意味不明な放送内容でも工作員が持っている解読表に当てはめると、その中に隠された内容を判読できるようになるものです。

BBCのサイトでも正体探しが繰り広げられました。


まさに「謎が謎を呼ぶ」という状況で、正体探しは過熱の様相を見せるようになります。Daily DotやGuardianはYouTubeのアカウント保持者にコンタクトを試みましたが、いずれも失敗。しかし、Daily Dotのオコーナー記者はある手がかりを発見します。Webアプリケーションのファンクションテストを行うSeleniumというツールの機能の中に「WebDriver」というものがあることを発見したのです。

オコーナー記者はさらなる調査を開始し、Seleniumを開発する企業への聞き込みを実施。しかし、担当者からは「これは当社の製品とは関係ありません」との回答を寄せられることになり、そしてさらに「このムービーは、まるでエイリアンに呼びかけているようにも見えますね」と全てをふりだしに戻すコメントが寄せられました。

◆そして正体が判明
しかしついに真実が明らかにされる時が来ました。そしてその内容は、いたって平凡なものだったことが発覚します。

ニューヨーク在住のソフトウェアテスターであるイサウル・バーガスさんは、このムービーとよく似たものに見覚えがありました。それを目にしたのはソフトの自動化に関するカンファレンスの場で、ネット経由でテレビ番組を配信するための機器である「セットトップボックス」用にヨーロッパのソフトウェア開発企業がプレゼンテーションしていた内容にソックリなものだったそうです。

By graysky.

ネット経由で番組を配信する際、通常は映像と音声をエンコードし、データを細かい断片に切り分けた状態で配信します。そのため、受信側では細切れのデータを寄せ集めて一つのデータにする処理が必要になるのですが、このムービーはまさにその検証の際に使用するためにピッタリな内容になっていたそうで、バーガスさんは「YouTubeチャンネルにアップされている量の多さとYouTube上にアップされているという事実を考えると、これはおそらくどこかの大手企業が自社の映像のエンコードソフトの動作とYouTube側での映像圧縮の仕様を検証するためのものだと思います」と語りました。

謎が謎を呼ぶミステリアスな大量のムービーが実は、ある企業が社内用に作成していた品質評価用のテストデータが外部に漏れたものだった、ということが発覚した騒動でした。時には「謎は謎のままであってほしかった」と感じることもあるものです……。

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in メモ,   ネットサービス,   動画, Posted by darkhorse_log

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