サイエンス

知的好奇心をくすぐる科学教育用の「オルゴール式・マイクロ流体デバイスキット」をスタンフォードの研究者が開発


「好きこそ物の上手なれ」ということわざはあらゆる物事に通じるもので、これは勉強についても例外ではありません。子どもの知的好奇心をうまく引き出すことで科学に対する興味を抱かせ、より多くの「未来の研究者」を生み出すべく、スタンフォード大学の研究者が安価な実験キットを開発しています。

Inspired by a music box, Stanford bioengineer creates $5 chemistry set
http://news.stanford.edu/news/2014/april/chemistry-award-prakash-040814.html

一見オルゴールに見える「実験装置」は以下のムービーで確認できます。

Stanford bioengineer creates $5 chemistry set - YouTube


手回しハンドルつきのオルゴール。ハンドルを回すと音楽を奏でます。このオルゴールはシリンダーの代わりにパンチテープを使ってコームをはじくことで音を出すタイプです。


開発者はスタンフォード大学のプラカシュ博士。一見、オルゴールのように見えるこの装置は、「教育用ツール」でもあり実用的な「研究用実験装置」でもあるとのこと。


この装置を共同開発したコリアーさん。「装置の使い方は、オルゴールと同じくパンチテープを装着してハンドルを回すだけです」と話します。


この装置は手回しオルゴールをベースに作られたもので、コームをはじく構造などはオルゴールとまったく同じ。


しかし、コームがはじかれると音が出るとともに、液体が1滴ずつ滴下される仕組みです。


コームがはじくポンプは15本あり、15種類の流体を1滴ずつ独立して注入することが可能です。


これはマイクロ流体チップと呼ばれるもので、取り替えることで液体の注入量を変更できます。


例えば水質検査などでは液体同士を混合させて反応を調べますが、そのような装置は大がかりなものは研究室にしかなく極めて高価です。この装置は流体の混合や滴定を簡単にかつ自由に行える上に、装置の材料はわずか5ドル(約500円)ととても安価です。


ポンプを拡大するとこんな感じ。


コームがはじかれるとオルゴールの音が出るのと同時に流体が押し出されました。


液体の滴下量はマイクロ流体チップで調整し、滴下するタイミングはパンチテープで調整するシンプルな仕組みは、アナログ的手法でデジタルライクな調整を可能とします。


「このような装置は、例えばヘビにかまれたときに毒があるのかないのか、毒は神経毒なのか出血毒なのかの判定に活用出来ます」と語るコリアーさんはケニア出身。実験用途に使える実用性を持つだけでなく、教育用キットとして子どもたちに使ってもらえるように安価に製作することが開発目的に掲げられていました。


この装置はまだバージョン0.1で開発は始まったばかり。安価で持ち運び可能な流体滴定装置は、3Dプリンターを使って改良が重ねられているとのこと。


実はこの装置は、「21世紀の化学装置を生み出す」ことを目的として行われるScience Play and Research Kit Competition(SPARK)で最優秀賞を受賞した作品です。プラカシュ博士は世界的に研究者の数が足りていないため途上国の発展が遅れていると考えており、より多くの科学者を生み出すためには、子どもたちの知的好奇心をかき立てる科学教育が重要であると信じているとのこと。そのためには安価で科学に興味を抱くような科学キットが大切であると考え、今回このオルゴール改良型・マイクロ流体キットを作ったそうです。

プラカシュ博士は賞金の5万ドル(約500万円)を素朴だけれど知的好奇心をくすぐり科学教育に役立つキットの開発に活用すると話しています。

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in サイエンス,   動画, Posted by darkhorse_log

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