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社会とともに変化する結婚の質とレベルアップのための方法論とは

By Katsu Nojiri

科学や経済が発展するのにあわせるように、人間社会の生活や考え方は変化し続けてきています。そんな社会の変化にする「現代の結婚の質は、以前と比べて良くなったのか、それとも悪くなったのか?」という問いに対し、ノースウェスタン大学の心理学教授であるEli J. Finkel博士はニューヨークタイムズ紙にコラムを寄せています。

The All-or-Nothing Marriage - NYTimes.com
http://www.nytimes.com/2014/02/15/opinion/sunday/the-all-or-nothing-marriage.html

「結婚の質は悪くなった」あるいは「良くなった」とする答えには、どちらもそれを裏付ける理由が存在しています。「悪くなった」とする考え方では、離婚率が上がっていることを「婚姻関係を続けるという考え方が低下していること」を示すものと捉え、「モラルの低下が大人から子どもまで社会一般に影響を与えている」とするのに対し、もう一方の「良くなった」とする考え方では、離婚率の増加を認めながらも、それは女性の独立性が向上していることを示すサインとし、「結婚そのものの質は以前よりも良くなっている」としています。


しかし、長年にわたり心理学や社会学・経済学・歴史学の観点からも「結婚」を掘り下げてきたFinkel博士は、単純に良くなった・悪くなったという答えではなく「結婚の質は、良い方向と悪い方向の両面で進化している」という第3の答えを導き出しました。

博士は一般的な夫婦を結婚生活の満足度によって「普通」と「満足」の2つのグループに分類し、その内容の変化を調査。「普通」グループの結婚生活においては満足感・離婚率の視点から質の低下が見られるのに対し、「満足」グループでは生活の満足感と「個人の幸せ」の視点で質の向上が見られ、夫婦が感じている満足度により、結婚の質の捉え方には大きな違いがあることがわかりました。

By AJ Mangoba

博士はまた、1979年から2002年の長期にわたって14組の夫婦を調査した研究結果を取り上げ、両グループを隔てる満足度の違いは年を追うごとに開き続けていることを示しました。その変化について、博士は心理学者を含む研究チームと研究を重ね、結婚に対する新しい理論を導き出しました。今年中にもPsychological Inquiry誌で発表される研究結果によると、今日のアメリカ社会ではこれまでには見られなかったレベルで結婚の質が向上しているケースがあることが明らかになったとのこと。ただしそれは「パートナーとの関係により多くの時間とエネルギーを注ぐことができた場合」のケースであり、それが実現されないケースでは結婚の質は以前よりも低下していることも明らかにされることになっており、博士は現代の結婚について「以前よりも『オール・オア・ナッシング』(一か八か)の要素が強くなってきている」としています。

変化を続ける「結婚」の形態について、博士はアメリカの歴史に沿って3つのステージに分類して、その変化を以下のように示しています。

◆アメリカ建国から1850年頃まで:組織としての結婚(institutional marriage)
かつて結婚は食糧生産・住まい・暴力からの隔離に深く密接に関わるものでした。もちろん、現代と同じように「満足感」や「一体感」を得ることはありましたが、それは上記の要素が満たされた生活の結果として得られるものだったと指摘。結婚は生存そのものにおいて重要な意味を持つもので、「満足感」はその副産物として位置づけられていたことを示唆しています。

◆1850年頃から1965年頃まで:友愛的結婚(companionate marriage)
このころ、アメリカ社会の生活基盤が周辺部から都市部へと移動していったことに呼応するように、アメリカ人にとっての結婚婚姻は、愛すること・愛されること、そして満足のいくセックスライフを実現するためのものへと変化していきました。従来は「生きるため」だった仕事は「賃金」を得るためのものに変化して行き、「愛・人との交わり」を求める余裕が生まれてくるようになります。

◆1965年以降、現在まで:自己表現結婚(self-expressive marriage)
現代のアメリカ社会では、結婚は自己発見、自尊心、個人の成長の場として認識されるようになってきています。1960年代中盤から起こった反体制文化の流れは、結婚を以前のような「避けて通れないもの」から「自己実現のための選択肢の一つ」へと変化させてきました。映画「恋愛小説家」に登場するセリフ「君のためにいい男になろうと思う(You make me want to be a better man)」はそんな時代の変化を捉えた言葉である、と博士は語ります。

博士はこの変化を、1940年代に心理学者アブラハム・マズローが主張した「マズローの欲求段階説」になぞらえ、結婚が社会の発展に応じて変化してきていることを示します。マズローは「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生きものである」と仮定し、その基本的欲求を「生理的欲求」「安全の欲求」「所属と愛の欲求」「承認(尊重)の欲求」「自己実現の欲求」の5レベルに分類しました。

By Wikipedia

「マズローの欲求段階説」にはさまざまな議論はあるものの、その概念は「人間の欲求は低い次元のものから順に満たされていく」というもの。かつては「生存・安全」が最重要視された結婚が、現代では「自己実現」をもたらすものとなっており、それだけ高い次元に暮らしが変化していることを示しています。博士は、この理論をもとに結婚の満足度について「パートナーとの関係に使う時間とエネルギーが多いほど、かつてないほど多くの利益を得ることができる」と語ります。

しかし同時に、その満足度の感じ方(=離婚率)には社会格差があるということも指摘します。1970年代に結婚したカップルが10年以内に離婚する割合は、低学歴者グループの場合は28%、高学歴者グループでは18%だったのに対し、1990年代前半のデータではそれぞれ46%、16%となっており、両者の違いが克明になっていることが明らかにされています。また、これは両者の収入レベルとも結びついています。


博士は「問題は、貧しい層が結婚生活の重要さを認識していないことではなく、また両方の層が結婚生活において重要と考えていることが異なるということでもありません。本当の問題は、失業を含む雇用の問題によって引き起こされた社会的格差により、貧困層では結婚生活を維持するための時間や余裕がないことが問題なのです」とその注目すべきポイントを挙げています。

博士は最後に、結婚生活の質を向上させるためには「政府や自治体が提供する住民サービスを活用し、時間を作り出すことも有用ですが、それ以上にも方法はあります。何よりもまず、二人で共有できる時間の使い方を見直し、結婚生活に時間とエネルギーを投資することが重要です。その投資に割く余裕がない場合は、お互いに求める生活の内容について話し合う必要があります。その際には、互いの自己実現の促進よりも、二人を結びつけるつながりを優先させることが重要です」とその方法論を結論付けています。

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in メモ, Posted by darkhorse_log

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