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Googleはパリへの開発拠点設置をスティーブ・ジョブズの意向で諦めていた

by Nicolas Nova

GoogleとAppleとの間には従業員引き抜き以上の大規模な秘密協定があったことが明らかになっていますが、これに関連して、かつてGoogleがパリに開発拠点を作ろうとしたときに元Appleのエンジニアを雇うためスティーブ・ジョブズに連絡を入れた結果、ジョブズが強い反対の意向を示したことから雇用を諦め、開発拠点設置も取りやめていたという事実が明らかになりました。

Google begged Steve Jobs for permission to hire engineers for its new Paris office. Guess what happened next… | PandoDaily
http://pando.com/2014/03/27/how-steve-jobs-forced-google-to-cancel-its-plan-to-open-a-paris-office/


Steve Jobs wasn't even okay with Google hiring former Apple engineers | Breaking Apple News, Tips and Reviews from The Unofficial Apple Weblog
http://www.tuaw.com/2014/03/27/steve-jobs-wasnt-even-okay-with-google-hiring-former-apple-engi/

GoogleとAppleといえばスマートフォン市場・タブレット市場で戦うライバル関係にありますが、その裏には密接な協力関係があり、それを維持するために秘密協定を結んでいました。その1つの具体例として、2006年春、Googleがパリに新しいエンジニアリングセンターを開設しようとしたときの話が明らかになりました。

Googleはこのセンターに、以前ジョブズのもとで働いていたエンジニアのジャン=マリー・ヒューロットを置くことを考えていました。ヒューロットは1980年代中頃にジョブズと知り合ってNeXTの開発を担当し、NeXTがAppleに買収される1996年にはエンジニアリング担当副社長になっていました。買収時に一度退職するものの、2001年、ジョブズが自ら渡仏してAppleに加わるようヒューロットを説得し、そこから4年間、パリ・アップルセンターのCTOを担当。

ジャン=マリー・ヒューロット氏

by Joi Ito

ヒューロットの率いるチームはiPhoneの開発において重要な部分を担当していましたが、ジョブズがiPhone関連の開発をすべてシリコンバレーで秘密裏に行うことを決定したときに、フランスを離れたくなかったため、チームメンバー4名とともに退職しました。

Googleのパリエンジニアリングセンターで働くにあたって、ヒューロットは「ジョブズからの祝福を受ける(OKをもらう)」ことが必要だと考え、これを「ラストステップ」だと表現していました。ラストステップを実現すべく、2006年3月28日にGoogleのエンジニアリング担当上級副社長であるアラン・ユースタスは、ジョブズにメールで連絡を取りました。メールのCCはGoogle共同創業者のセルゲイ・ブリンとラリー・ペイジ、Intuit会長・Apple取締役・Google相談役のビル・キャンベルという豪華な顔ぶれで、内容はヒューロットの雇用にあたってOKが欲しいというもの。


しかし2006年4月にGoogleのパリエンジニアリングセンターが立ち上げとなっても、ジョブズは返信を送ってこず、ユースタスからの電話にも出ることはありませんでした。4月5日になってヒューロットは現状確認をユースタスに依頼。ユースタスは「ビル・キャンベルが大丈夫だと保証しています。ビルはジョブズと親しいので、返信を催促してくれるはずです」と答え、これを見たヒューロットは「ラストステップがビル・キャンベルのおかげでこんなにも楽なものになるとは思わなかった」と楽観的になり、ブータンへ2週間の家族旅行に出かけました。

ユースタスの考えたとおり、4月9日にキャンベルがジョブズと日曜日恒例のウォーキングを行った夜、ジョブズからの返信が届きました。その内容は「ジャン=マリーはいま何の仕事をしているのですか?もしそれが携帯電話に関するものなら、ちょっと問題があります」というもの。

これを受けてユースタスは「携帯電話には関与していません。彼は多才で、Googleには多数のプロジェクトがあるので、GoogleとAppleが衝突しない分野があるはずです。あなたから『この分野なら大丈夫』という申し出があればそれをやることにします。これでどうですか?」と提案し、ジョブズは異存なしと答えました。

しかし、ヒューロットがヒマラヤから帰ってきた後に「ジャン=マリーだけではなく他の元Appleメンバーも雇用したい。以前Appleで担当していた仕事とは利害衝突のない部分をやらせるつもりだが、いいだろうか?」と打診すると、ジョブズは「アラン、我々はあなたが彼らを雇わないことを強く願っている」と拒絶の意思を示しました。

あくまでスティーブ・ジョブズはAppleのCEOであり、本来ライバル会社であるGoogleの人事に口を挟む立場ではないはずなのですが、ユースタスはジョブズに対して反論せず、ヒューロットに向かって「ジョブズはエンジニアたちの雇用に反対しています。理由は説明されていませんが、Appleとの関係を悪くすることはできないので説明を求めるのはふさわしくないと思います。なにかいい考えが、あるいは悪いものでもいいので、あれば教えて下さい。君が素晴らしいチームメンバーと共に仕事をしていくことを考えているのなら、別の会社を作る方がいいのかもしれません」と伝えました。

結局2006年5月にGoogleはパリエンジニアセンターのプロジェクトをキャンセル。ユースタスはジョブズに対して「あなたの強い意向により、Googleはヒューロットら元Appleエンジニアを雇用しないこと、そしてパリエンジニアセンターの開設を中止しました。この件に関する意思決定と、GoogleとAppleとの協力関係への継続的な支援に感謝する」とメールしました。

このあとヒューロットは数年かけて家族でアジア各地を旅行して帰ってきて、iPad向けのアプリを制作。現在は写真メインの百科事典サービス「Fotopedia」のCEOを務めています。

GoogleはApple・Adobe・Intelらと結んでいた従業員引き抜きの秘密協定によりハイテク企業従業員独占禁止訴訟を起こされていますが、この裁判の中でセルゲイ・ブリンはシリコンバレーでの人員採用についてジョブズがどういう視点を持っていたのか尋ねられ、「ジョブズ氏は、後ろ足で砂をかけるような行為を嫌がったのだと思います。まさにGoogleのパリエンジニアセンターの件がそれで、対象となる人が友人だったり極めて近しい関係だったりすると、ジョブズ氏は機嫌を損ねるのです。ジャン=マリーとジョブズ氏がどういう関係だったのか私は詳しく知りませんが、きっと友人かもっと親しい仲だったのでしょう」と述べています。

訴訟を追いかけているPandoDailyは、この一件を「結局、GoogleとAppleは技術革新を犠牲にしてお互いの利益を優先したのだ」と強く非難しています。

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in メモ, Posted by logc_nt

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