日米における起業文化の違いはどこから生まれているのか?

By SETUP Utrecht

世界的なインターネット社会の土台を創りあげたアメリカの社会は、それ以前からも革新的なサービスを生み出し続けてきており創造性が高い文化を持っていると言われています。カリフォルニア州でコンピューターサイエンスの研究開発を行っているパロアルト研究所(PARC)でビジネス開発担当ディレクターを努めるアキ・オオハシ氏は、シリコンバレーにおけるITバブルと日本での新規事業の立ち上げに関わった経験をもとに、「日米の起業文化の違い」をテーマにしたブログを執筆しています。

PARC Blog Startup
http://blogs.parc.com/blog/2014/01/startup-culture-divide-united-states-and-japan/

PARCといえば、故スティーブ・ジョブズ氏がMacintoshに搭載したGUIの原型を目にした場所としても有名。そんなPARCに在籍するオオハシ氏は「日本の企業文化ではリスクを負うことを嫌い、ビジネスで失敗することに対する許容性が低いため、日本で活況な起業環境を作り上げるのは難しい」と語ります。オオハシ氏はアメリカのカーネギーメロン大学でMBAを取得した後に来日し、Pinterestのようなソーシャルメディアサイトである「Tilefile Japan」という事業を当時のビジネススクールの同級生と共同で立ち上げました。その後は、のちにmixiの創業時に出資を行う株式会社ngi groupにて投資事業本部パートナーを勤めました。これらの経験を通じてオオハシ氏は「アメリカと日本のスタートアップには決定的な違いがある」ということを体感し「日本人は失敗に対して不寛容で、その気質ゆえに日本で新規事業を行うことはアメリカで行うよりもハードルが高い」と語ります。

By David Morris

「アメリカに比べ、日本で大企業を退職して起業するリスクは高いと言える」とオオハシ氏は続けます。「アメリカでは、安定した組織から離れて起業した場合、仮にその事業が失敗に終わったとしてもその経験が評価され、別の会社に高待遇で迎え入れられることがよくありますが、日本で新規事業に失敗した場合、そういったことはまずありません」とし、「特に日本の大企業は、他国に比べ非常に長いスパンで販売計画を建て、事業を行う際に信頼関係を重んじるため、多くの関係者の同意を取り付けなければなりません。そのためスタートしてみなければ収支が分からないことが多い新規事業を組織内で立ち上げることも困難がつきまといます」と語ります。

オオハシ氏は過去に日本のベンチャーキャピタルで働いたことがあります。その企業は郵便事業に強く結びつきのあるB2Bサービスを提供していたのですが、その内容は同業他社よりも優れたものだったそうです。しかしながら、その事業は失敗に終わってしまいます。最終的に、一件の契約を結ぶこともないまま当初の予算を使い切ってしまい、日本でのサービス提供を終了せざるを得ない状況になってしまったそうです。

By Gustavo Medde

オオハシ氏は「日本は今まで発明されていないものを社会に組み込むことに対して消極的で、政府が株式の公募をより簡単にするように法整備を行ったもののM&A市場の規模が小さく、諸経費も多いので株式を公募することにアメリカほど魅力が薄く、新規事業に投資する人物・起業家にとってもメリットが少なくデメリットが大きいといえます」と述べており「日本のベンチャーキャピタルは銀行などの金融機関や大企業の投資部門で、そこにいる責任者はあくまでサラリーマンであり、思い切ったリスクを取る選択ができません。もし責任者が投資により芳しい成果を出せなかった場合、降格や他部門への異動などを命ぜられることになります。一方でシリコンバレーやアメリカの会社では成功体験のある投資家などが新規事業に思い切った投資を行います」とアメリカと日本の環境の違いを説明しています。

このような環境の違いが生まれることについて、オオハシ氏は「教育の違い」をその一因に挙げています。オオハシ氏自身はアメリカ生まれ・アメリカ育ちのため日本の学校教育を受けていないものの「日本の学校教育は暗記学習に焦点を当てており、教師の言うことに生徒は忠実で、質問をしにくい空気があります」と指摘し、「日本人は、アメリカ人が自分の見解を遠慮なく相手に示すショー・アンド・テルという手法に触れると驚くようです。日本の教育では子どものころにそのような教育を行っていないため、斬新なアイデアが生まれにくく、ほとんどが海外の新規事業のコピーになってしまいます」と説明します。

By betty x1138

オオハシ氏は「それぞれ国には歴史や文化があり、そう簡単に変えられるものではない」と認めつつも、「日本でも、企業した人が会社に戻りやすいシステムを整備し、失敗に寛容な風土を作り上げない限り、このような文化を変えることは難しいでしょう」と文章をまとめています。

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