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RAIDに使用されるSeagate「F3」モデルHDDのデータ復旧技術確立に日本データテクノロジーが成功


世界トップシェアのハードディスクメーカーSeagateから販売されている近年のハードディスクは通称「F3」と呼ばれ、高い安定性からRAIDにも多く使用されていますが、ひとたびハードディスクに障害が発生するとデータ復旧が非常に困難なモデルとしてハードディスク復旧業界では有名でした。そんなSeagate F3モデルのデータ復旧技術の確立に、国内データ復旧依頼件数7年連続No.1の日本データテクノロジーが成功したとのことなので、さっそく詳しい話を聞いてきました。

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日本データテクノロジーがある東京・東銀座の歌舞伎座タワーに到着。


歌舞伎座タワーオフィス棟8階に日本データテクノロジーのフロアはあります。


今回、インタービューに答えるのは、日本データテクノロジーのデータ復旧事業部復旧チームに所属する趙暁豪氏。


「F3」モデルとは?

GIGAZINE(以下、G):
Seagateのハードディスクには「F3」と呼ばれるデータ復旧が困難なモデルがあるそうですが、まずは、このF3モデルとはどんなハードディスクかについて教えてください。

趙暁豪氏(以下、趙):
SeagateのF3モデルとは、2009年以降にSeagate社から販売されている容量500GB以上のハードディスク全般を指す呼称です。私たちはSeagateのハードディスクを2009年以降のF3モデルと、それ以前の「クラシック」、大きくこの2種類に分けています。

G:
2009年を境に、大きな変更がされたということでしょうか。

趙:
はい。技術的な変更がありました。

G:
F3モデルが「呼称」というのは、公式的な呼び名ではないのですか。

趙:
「F3」という呼び方はSeagateが公式に呼んでいるものではなく、主に私たちデータ復旧のプロの間での通称です。データ復旧に携わる人には、F3で通じる名前です。復旧が困難なハードディスクとして非常に有名ですから。

G:
なるほど。復旧が難しいF3モデルとのことですが、具体的に、F3とそれ以前のクラシックを見分ける方法はありますか。

趙:
まず、F3モデルは2009年以降に発売されたハードディスクで、容量500GB以上のモデルが該当します。簡単な見分け方として、製品の型番を使う方法があります。Seagate製品の3.5インチSATA規格のハードディスクの製品名「Barracuda」の後に数字や文字が表記されています。例えば、「Barracuda 7200.12」というように、Barracudaの後の7200は回転数を表すのですが、その後に書いてある数字や文字から見分けられます。この数字が10以下の場合はクラシック、11以降の数字や「Green」「ES」「LP」と書かれている場合はF3です。


G:
今、Seagate製のハードディスクの多くはこのF3ということですね。

趙:
はい。2013年のハードディスク出荷見込み台数は約5億9210万台で、そのうちSeagate製が42%の約2億4000万台と予想されていて、RAIDサーバーを中心に、PCや外付けハードディスクなど一般的な製品にもF3は使用されています。

F3モデルの特徴

G:
F3モデルの特徴について教えてください。

趙:
ハードディスクは、プラッタ磁気ヘッドなどのハードウェア部分とROMに含まれるソフトウェア部分が組み合わさって機能するのですが、ハードウェアを調整するファームウェアが、従来のクラシックではIDEをベースにしていたのに対して、F3モデルではSCSIをベースにするという大きな変更がありました。このおかげで、F3は従来よりも高速かつ安定性に優れた高性能化を実現しています。

G:
ファームウェアが大きく変更されたわけですね。そういえば、2009年ころSeagate製ハードディスクのファームウェアに大きなバグが見つかり大騒動が起こりましたがこれが原因でしょうか。

趙:
詳細は分かりませんが、2009年はF3に切り替えられた時期と重なりますね。

G:
F3の変更点はファームウェアだけでしょうか。

趙:
F3ではハードディスクの大容量化が実現されています。この大容量化を果たすために、ハードディスクの磁気ヘッドが読むデータの多さを表す「媒体密度」が非常に高められています。簡単に言うと、磁気ヘッドはレコードの針のような部品ですが、その針が他のハードディスクに比べて細かな領域に含まれたデータを読み込んでいるのがF3モデルです。


G:
磁気ヘッドにはより細かな動きが求められるということですか。

趙:
はい。磁気ヘッドの動きにはより高い精度が求められるようになりました。例えば、ヘッドを浮上させるためのサスペンションの荷重精度は±6~8%を保つ必要があると言われています。F3以外の製品はヘッドの浮上は10~20ナノメートルのところ、F3に関しては2~5ナノメートルと言われているため、動作プログラムは非常に重要となります。

F3モデルのデータ復旧が困難な理由

G:
F3モデルの特徴は分かりましたが、高性能化と引き替えに壊れやすいということはありますか。

趙:
いいえ。SCSIとSATAの良いところを兼ね備えたF3は高性能なだけでなく、むしろ壊れにくいハードディスクだと言えます。ハードディスクの筐体にプラッタ等が配置されるのでなく、各パーツは埋め込み型で配置されていることからも耐久度は高いと言えます。そのために、非常に多くの製品に使われていて、信頼性が求められるRAIDサーバー機での採用も多いです。

G:
そのような高性能なハードディスクであるF3モデルのデータ復旧が困難なのはどうしてでしょうか。

趙:
大きな問題は、先ほど話した媒体密度の高さです。ハードディスクのデータを保存するプラッタと呼ばれる磁気ディスクは、媒体密度を高めることでデータ容量を増やしてきました。簡単に言うと、同じ量のデータをより小さな領域に保存するように進化してきました。そのためハードディスクのデータ読み書きは以前に比べてより高い精度が求められています。ハードディスクに生じる物理的な不具合を物理障害と呼びますが、物理障害の中でも磁気ヘッドがうまくデータを読み取ることができない場合、ヘッドを交換することでデータを認識させる作業を行います。このヘッドを交換してデータを認識させるヘッド交換と呼ばれる作業が、F3では特に難しいのです。


G:
媒体密度が高いのは、現在販売されている他社のハードディスクでも同じですよね。

趙:
はい。もちろん、他のメーカーのハードディスクも媒体密度が高いためヘッドの精度が非常に高いのは同様ですが、ヘッド交換の難しさがSeagateのF3は格段に高いです。

G:
もう少し詳しく教えてください。

趙:
磁気ヘッドは非常に高い精度でデータを読む部品のため、まったく同じ種類のヘッドでも個体差があり、単にヘッドを交換するだけではデータをうまく読むことができません。これらの違いの要素をパラメータと呼んでいますが、SeagateのF3のヘッドのパラメータは他社のものに比べてはるかに厳格です。さらに、プラッタ上にあるファームウェアデータが書かれている位置にも大きな違いがあります。例えば、Western Digital製のハードディスクの場合、ファームウェアデータはプラッタの外側にありますが、F3ではディスクの真ん中付近の円周上に書かれているため、同じサイズの領域に、より多くの情報量がつまっており、データ読み取りにはより高い精度が必要となります。このため、F3では、データを認識させるために適合するヘッドが見つかるまで何回も交換するという作業が必要です。

G:
F3モデルは何回くらい交換作業が必要なのでしょうか。

趙:
場合によって異なりますが、20回交換しても認識しないこともあります。2~3回のヘッド交換でプラッタを認識できるクラシックモデルに比べてはるかに難しいです。

G:
同じ時期の同じ製品のヘッドだからといって適合するわけではないのですか。

趙:
同じ時期の同じ工場で出荷されたヘッドでも合わないものは使えません。逆に、異なる時期に生産されたヘッドでも合うものはあります。

G:
運頼みの「くじ」みたいなものですか。

趙:
なかなか当たらないくじですね(笑)

趙:
もちろん、運頼みというわけにはいかないのでヘッド交換の互換性を高める研究開発に取り組みました。先ほどクラシックは2~3回のヘッド交換で済むと言いましたが、それは長年、研究を重ねデータ復旧の実績を積んでいく間に蓄積したノウハウからくる独自の判断基準があってのものです。この判断基準はF3のヘッド交換でも有効なものですが、クラシックのノウハウを使うだけではかなりの回数の交換を繰り返す必要がありました。

G:
なるほど。判断基準をF3用にブラッシュアップする必要があったのですね。

趙:
はい。F3のヘッド交換に求められるパラメータはクラシックに比べて多いので、新たにその条件を満たすヘッドを選別するための判断基準が必要です。そのため、F3のハードディスク内にある全てのデータから、ヘッドの動きを制御する関係データを探し出し解析することにしました。

G:
ヘッドを制御するデータがあるのですか。

趙:
ハードディスクのデータにはヘッドの動きを制御するものがあり、モジュールと呼ばれる機能単位の形で保存されています。ヘッド制御に関するモジュールは、通常ユーザーがアクセスできない領域であるサービスエリアとROMの中に含まれています。そこで、F3のサービスエリアとROMのすべてのデータをモジュールごとに解析することで、ついにヘッド制御に関連するモジュールデータを集めることに成功しました。

G:
すべてのモジュールの数は膨大であると想像できますが、解析にはどれくらいの時間がかかったのでしょうか。

趙:
社内でF3の復旧を専門に行う技術開発チームを組織し、また、海外の研究者と共同研究を進めることで、約1年かけてヘッド制御技術の開発に成功しました。

G:
パラメータを丸裸にすることで、ヘッドの選別が可能になったということでしょうか。

趙:
はい。先ほど場合によっては20回以上ヘッド交換をすることもあると言いましたが、データ解析が進んだことによって適合するヘッドをより的確に選別できるようになりました。

G:
今ではどれくらいの回数が必要ですか。

趙:
多くても3回くらいでしょうか。

G:
クラシックと同じレベルまで到達したということですね。一発OKということもあるのですか。

趙:
はい。それもかなりの頻度です。

G:
ヘッド交換の回数が減るということは、作業時間が減ることにつながりますよね。

趙:
はい。実は、適合する可能性が高いと判断されたヘッドでも交換しただけではダメで、交換後にプラッタのデータを認識させるための調整が必要です。この調整も、ヘッド制御のモジュール解析のおかげで非常に効率的かつ的確に行えるようになりました。この点でも、復旧時間は大きく短縮されています。


G:
ヘッド交換が一発で成功した場合、最短でどれくらいで復旧作業が完了するのでしょうか。

趙:
もちろん、復旧させるデータ容量やプラッタの状態など条件によって大きく異なるのですが、最も早い場合、3時間で復旧に成功した事例があります。

G:
意地悪な質問かもしれませんが、時間さえ気にしなければ、何回もヘッド交換を繰り返せばF3の復旧はこれまでと難しさが変わらないとは言えませんか。

趙:
いいえ。ハードディスクはヘッド交換に限らず、データ復旧のための作業を繰り返すほどデータ復旧の成功率が下がってしまいます。例えば、作業を繰り返せばプラッタに小さなスクラッチ(傷)がつく危険が増えます。ハードディスクは非常に精密な機械なので、ほんのわずかなスクラッチが一つついただけでデータを認識できないことがあり得ます。

G:
傷ひとつが命取りになり得るのですね。

趙:
実際、弊社に持ち込まれるF3には、プラッタの状態が非常に悪いものがよく見られます。技術力のないデータ復旧業者に復旧を依頼したために、不適切な作業を加えられた結果、どんどん状態が悪くなったものも多いです。オリジナルの状態ならば打つ手があったのに、間違った方法で手を加えたせいで復旧できなくなることもあるので、F3モデルでは特に復旧実績のある専門業者へ依頼することが大切です。

G:
スクラッチがあると、その部分のデータ復旧はできませんね。

趙:
いえ、そのスクラッチの部分のデータだけではなく、傷のない他の部分も含めて、傷のあるプラッタ1枚のすべてのデータを読むことが非常に難度の高いものとなります。

G:
その傷のあるプラッタ1枚分が丸々ダメになるのですか。

趙:
F3に関して言えば、複数あるプラッタのうちの1枚にスクラッチがあるだけで傷のないプラッタのデータも含めたハードディスク全体のデータ復旧難度が非常に高くなるという場合もあります。実は磁気ヘッドには、ハードディスク起動時に最初にデータを読み込む役割をする「起動ヘッド」と呼ばれる特別なヘッドがあります。この起動ヘッドが読み込むプラッタにスクラッチがある場合、他のプラッタも含めて全てのデータへアクセスができなくなります。

G:
なるほど。プラッタが4枚あるとしたら、4分の1の確率でアウトというわけですね。

趙:
いいえ、起動ヘッドは1本とは限りません。4枚プラッタであれば2本あることも多いです。起動ヘッドが何本あるのかは、ファームウェアを見て判断しなければなりません。

G:
なるほど。起動ヘッドは複数あることも多いのですね。スクラッチが、起動ヘッド以外のヘッドの読むプラッタにある場合に限ってデータの復旧が可能ということですね。

趙:
その場合、傷のないプラッタのデータが復旧できる可能性は高いですね。現在、起動ヘッドではないヘッドの読むプラッタのスクラッチに関して、スクラッチ部分以外からデータを復旧できるように研究が進められているところです。

下の写真は大きなスクラッチが見られるハードディスクのプラッタ。この状態では、データ復旧は困難になる。


F3トラブルで先行する技術力

趙:
先月、持ち込まれたSeagateのF3ハードディスクで、弊社にご依頼いただく前に世界的に有名なハードディスク復旧会社で復旧ができなかった、という案件がありました。このハードディスクは容量2TB・4枚プラッタのモデルで、弊社がチェックすると、すでに何度もヘッド交換が試されていることが判明しました。4枚プラッタのうち2枚のプラッタにスクラッチが入っているのが確認できたのですが、ファームウェアを解析すると運良くこの2枚はいずれも起動ヘッド以外のヘッドがデータを読むプラッタであることが分かりました。結果、このハードディスクの復旧に成功しました。

G:
世界的な大手復旧会社がさじを投げたハードディスクの復旧に成功したと。

趙:
はい。データ復旧業界は世界レベルで常に熾烈な技術開発競争が行われているのですが、F3ハードディスクの復旧に関しては、弊社の技術力が一歩リードしていると考えています。

G:
F3モデルのハードディスクを使っているユーザーに対して、使い方などで何かアドバイスはありませんか。

趙:
そもそも、お使いのハードディスクがF3だということを認識している人は少ないと思いますが(笑)F3に限らず、トラブルを感じた場合には、直ちに専門家に相談するのが有効です。例えば、RAIDサーバー機やPCの挙動に不具合が出る以前に、ハードディスクから異音が聞こえることがよくあります。この異音が聞こえたら、ただちに機器の使用を停止して専門家に相談するべきです。異音が出始めたハードディスクは、そのまま運用を続けることでダメージが深刻化し、最終的に物理障害を発生することが多いのです。異音段階であればデータを待避させることも可能ですが、物理障害が発生してからではデータの復旧は困難になります。特にF3はいったん物理障害が生じるとデータ復旧が極めて困難です。RAIDに関しても構築が出来ても復旧作業は全く別物です。相談する場合はF3モデルとRAIDの復旧実績があるデータ復旧会社を選択するのが大切です。


G:
すでに、F3モデルの復旧実績が積み重ねられているのですよね。

趙:
はい。今年に入ってから、急激にF3の復旧依頼が増加しています。現在までに復旧依頼のあったF3は、型番の数でいうと77種類あります。

G:
中には依頼の多い型番もありますよね。

趙:
統計データとして、多い型番はあると思います。

G:
多い型番を教えてください。

趙:
今、手元にはないので、調べてみます。

G:
最後に、復旧成功率について教えて欲しいのですが、実際に依頼のあったF3モデルのハードディスクのうち、どれくらいのハードディスクの復旧に成功しているのですか。

趙:
スクラッチがない状態のF3であれば、復旧率は90%、スクラッチのあるものでも85%が復旧できています。

G:
やはりスクラッチがあると復旧率は下がるのですね。

趙:
はい。しかし、弊社にはスクラッチがある状態のハードディスクを復旧できる技術があります。プラッタの状態は、復旧作業を繰り返すことで悪化するので、F3ハードディスクに関しては、F3復旧の技術力があるデータ復旧会社に依頼するのがデータ復旧率を高める方法だといえます。単体だけでなく、RAID構成には特に多く使われているため、企業などの担当の方はハードディスクのモデルを把握しておくこと。万が一トラブルが発生した場合は、データが重要であればある程RAIDにもそのモデルにも特化した専門業者に依頼するようにしてください。

G:
本日はお忙しい中、ありがとうございました。

F3モデル開封

インタビュー後、ハードディスクの物理障害復旧作業を行うクリーンルームで、実際にF3モデルのハードディスクを開封してもらいました。

まず、ネジが隠されたラベル部分を正確にカッターで剥がします。


星形の特殊なネジが出てきました。


すべてのネジを外して、ハードディスクの金属パネルを取り外します。


こちらが、SeagateのF3モデルハードディスクの中身。丸い円盤がプラッタで、プラッタ下部にある三角形の金属パーツが磁気ヘッドです。複数あるヘッドの中には起動ヘッドがあるはずですが、外観からは判別不能。


続いてクラシックモデルを開封してもらいます。隠されたネジの位置は、各モデルごとに微妙に違うようです。


すべてのネジを外してパネルを取り外します。


中身はこんな感じ。磁気ヘッドの数もプラッタの枚数もF3より少ないようです。


写真左がクラシック、右がF3。比べてみると、磁気ヘッドの待機位置(初期の位置)も異なっています。


クリーンルームを離れて、ハードディスクのソフトウェアの障害を復旧する論理障害復旧の作業現場に行くと、ラックのおよそ半分くらいを「F3 専用台」が占有していました。やはり、データ復旧を依頼されるF3モデルの数は増えているようです。


おまけ

後日、日本データテクノロジーからいただいた、SeagateF3モデルの型番別復旧依頼率トップ10のデータは以下の通りです。

1位:ST31000528AS(20%)
2位:ST9500325AS(13%)
3位:ST3500820AS(8%)
4位:ST2000DM001(7%)
5位:ST3500418AS(6%)
6位:ST2000DL001(5%)
7位:ST3500320AS(4%)
8位:ST31500341AS(4%)
9位:ST31000333AS(3%)
10位:ST31000340AS(3%)

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in 取材,   インタビュー,   広告, Posted by darkhorse_log

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