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こだわりの自作エルゴノミックキーボードの遍歴・今後はKickstarterで販売も


仕事や趣味などでパソコンを使う時に、マウスと同じぐらい欠かせないのがキーボードです。特に仕事でキーボードを多用してきたJesseさんにとっては、その使い勝手や使い心地は重要なものでした。そんなJesseさんが約1年間にわたって作成してきた自作エルゴノミックキーボードの進化の過程が公開されており、近い将来にはクラウドファンディングサイトのKickstarterでのプロジェクトを開始する予定になっています。

Better and better keyboards. - Massively Parallel Procrastination
http://blog.fsck.com/2013/12/better-and-better-keyboards.html

◆キーボード自作開始から数々のプロトタイプまで
コンピューターのプログラマーを職業とするJesseさんは8歳のころに両親にApple IIを買ってもらって以来、1日のほとんどをコンピューターのキーボードの前で過ごしていると言っても過言ではないそうです。そんなJesseさんが特に気に入って愛用してきたのは、Microsoft製のNatural Keyboard Eliteでした。


愛用してきたNatural Keyboard Eliteでしたが、メーカーの生産が終了したことから、Jesseさんはさまざまなキーボードについて調べるようになりました。そんな時に出会ったのが、IBMが1990年ごろに製造していたM15というモデル。


このモデルは、本体中央部に設けられたボール型のジョイント部分を調整することで角度や高さを自由に設定できるようになっており、Jesseさんのようなキーボードマニアにとってはたまらない一品でした。販売当時はあまり売れ行きがよくなかったために約2年で販売終了になった商品ですが、その後も一部の熱狂的なファンによる争奪戦が続いており、当時は179ドル(当時のレートで約1万7000円)だった商品が2010年にはオークションサイトのeBayで1625ドル(当時のレートで約14万円)という高値で取引されたこともありました。

Rare IBM M15 split ergonomic keyboard hits eBay, bidding war pushes it over $1600 | Chips | Geek.com


次にJesseさんが手にしたのが日本のパーソナルメディア社製「μTRON(マイクロトロン)キーボード」でした。上質なキータッチや絶妙にカットされた親指キーの形状などが気に入ったJesseさんですが、さまざまな事情により日本国内でしか販売されていなかったために、継続的な入手は難しい状況だったとのこと。


その後もMaltronKinesisなどのキーボードを試しましたが、いずれも要望を満たすものではないとの結論に達したJesseさんは、思い切って自分の好みのキーボードを自作することに。自作キーボードのフォーラムであるErgoDoxを見つけたJesseさんは、仲間たちと共同購入したパーツを半田ごて片手に組み立てて、最初のモデルとなる「Mark 1」を完成させました。


裏面はこんな感じ。半田ごてを使って配線されたケーブル類がむき出しとなっており、手作り感のあふれる光景です。


しばらくMark 1を使ってみたJesseさん、最高の出来具合ではないものの、仕上がりにはおおむね満足していました。しかし改良すべき点や要望が出てきたため、次世代モデル「Mark 2」の作成に取りかかりました。左右分割式であるMark 1には「ヒザの上で使えない」という欠点があったことから、Mark 2では一体型のデザインを取り入れることにしたそうです。そして完成したのがこのモデル。


外枠フレームは絵画用の額縁を流用し、キーボードは紙製の台紙にセットされているそうです。


非常に大きくて重く、キーレイアウトもイマイチだったというMark 2の反省を経て、次のMark 3が作られることになります。合板の上にキーを設置したMark 3は、一見するとオーソドックスなレイアウトになっていますが、よく見ると左右が分割されたエルゴノミックデザインになっているのがわかります。


次に作成したのがこのMark 4。アクリル製の本体を使用しており、このあたりからJesseさんは設計に手ごたえを感じ出したそうです。しかし、キーの配置角度や、2列に配置された親指キーの出来具合にはまったく満足できなかったそうです。


Mark 5は、作成中に友人から「なんだかハート型に似ているね」と言われたことから特別塗装を施しました。見た目は悪くないものの、中心部に4つのキーをひし形にレイアウトしたのは完璧な失敗と語るJesseさん。ひし形で一番上のキーが非常に押しづらかったそうです。


Mark 6は、初めて3Dプリンターを使った筐体を使用したモデルです。センター部分が山形に盛り上がる形状になっていますが、キー配置を含めた角度の最適化が必要でした。


それを踏まえて作成されたMark 7ですが、親指キーなどの調整が更に必要。


Mark 8では本体を上下分割式の構造にし、薄型化を図りました。


そしてMark 9では一気にデザイン変更を行うことに。IBM M-15のようなボールジョイント構造を採用し、角度調整を行えるように改良しました。


本体のエッジ部分を丸く成型するなど、使い心地も考慮されたモデルですが、やはりMark 1と同じ「平らな場所でしか使えない」という問題を抱えていたため、以降は分割式は採用されなくなりました。


「Mark 10に関しては特に語ることはない」というJesseさん。作成中に3Dプリンターから出火して大変なことになったそうです。


3Dプリンターでの作成をあきらめて、レーザーカッターで切り抜いたアクリル板を重ねて作られたのがMark 11です。見た目は非常にいいのですが、非常に重量が重くなったことと、使っているうちにアクリルにひび割れが発生してきたそうです。


次に作られたMark 12では、アクリル板のカット方法を改善したり、キーボード入力の邪魔にならないようにネジの位置を変更するなどの手直しが加えられ、Jesseさんもかなり満足のモデルでしたが、ややサイズが小さいのが唯一の欠点だったそうです。


そしてかなり完成形に近づいたのがこちらのMark 13です。本体サイズの最適化が行われたことと、キーボードのコントローラーをオープンソースのArduino Microに変更しました。


実際にMark 13を使用しているというJesseさん、かなりその出来具合には満足していますが、やはりアクリル製のために重量がかさんでいることと、ひび割れが発生してしまうのが欠点だとのこと。

◆製品プロトタイプ「Model 00」
数々の試行錯誤を経て、ついに完成した製品プロトタイプが「Model 00」です。


このモデルからは専門の工場で作られた電子基板が使われており、量産に向けた取り組みが着々と進められていることが感じられます。


天面にはロゴも入れられています。プロトタイプということで合板で作成されていますが、実際の商品では違った素材が使われるはずです。


Jesseさんが作り上げたキーボードは、準備が整った段階でクラウドファンディングサイトのKickstarterのプロジェクトを開始することになっています。記事作成時点ではまだ準備中の段階で、販売価格も不明となっていますが、下記ウェブサイトでメールアドレスを登録しておけばプロジェクトが開始した段階でお知らせのメールが届くようになっています。

Keyboard.IO - Keyboards made better
http://launch.keyboard.io/

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in ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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