インタビュー

椎名豪と平尾隆之監督が追求した「魔女っこ姉妹のヨヨとネネ」音楽・音響のこだわり


12月28日に公開される映画「魔女っこ姉妹のヨヨとネネ」の音楽を担当したのは椎名豪さん。バンダイナムコゲームスで「ミスタードリラー」シリーズや「テイルズオブレジェンディア」の楽曲を担当。本作の平尾隆之監督とは「ギョ」以来、5作品目のタッグとなります。企画立ち上げ部分から話を聞いた前編に続く中編では、音楽・音響面を中心とした話が出てきます。

GIGAZINE(以下、G):
音楽担当の椎名豪さんとは何作も続けてコンビを組んでらっしゃいますが、今回も椎名さんが音楽を担当したのは何か理由があったんでしょうか。

平尾隆之監督(以下、平):
椎名さんと初めて仕事をやらせてもらったのは「ギョ」の時で、「この音はきっと映画に向いているな」と感じたんです。それで今回、ヨヨネネという映画をやることになり、椎名さんの音楽はどちらかと言えばハード寄りで、ヨヨネネの雰囲気はこんな感じでしたけれど、「やってみたい」と言ってくれて。

G:
なるほど。

平:
椎名さんの音へのこだわりはすごいですよ。日本人は平面に音を貼り付けるように作っていくのに対して、欧米人は立体的に作るので奥行きを出すために奥の音は劣化させるんです。椎名さんは欧米人的な作り方をしていて、せっかく作った音の中で奥の方にあるものを劣化させようとするんですよ(笑)

G:
普通であれば、それで完成なのに。

平:
これを、椎名さんは農耕民族と狩猟民族の違いを例に出して、「狩猟民族は獲物との距離を常に頭のなかで立体的に捉える訓練をしていたからではないのか」と言っていました。きっと、椎名さんは狩猟民族なんですね(笑) でも、その部分に、僕はピンと来たのかもしれません。


G:
具体的に、どういう音楽を作って欲しいというオーダーを出したんですか?

平:
やっぱりこれはヨヨさんが主役の映画ですから、「ヨヨのテーマが『インディ・ジョーンズ』になって欲しい」って伝えました。耳に残る、高揚感のある音楽です。

『インディ・ジョーンズ 最後の聖戦』 予告編 - YouTube


G:
この音楽が流れたら、たとえピンチのシーンでも「よし大丈夫、いける!」と思わせる音楽ですね。

近藤光プロデューサー(以下、近):
ジョン・ウィリアムズは偉大だね、インディもだし、E・T、ジョーズ、スター・ウォーズ……

平:
ジョーズは、今でこそキャラクター化してますけれど、あのテーマ音楽のおかげでキャラクターになれたんだと思うんですよ。なので、そういう音楽を欲しいと。これを聞いた椎名さんは頭を抱えてましたが、結果的にああやって曲が出てきました。

G:
リテイク60回という、アレですね(笑) 椎名さんはダビング現場でも音作りをしていたとうかがいましたが、音楽担当の方は通常そこまでやるんですか?

平:
通常はダビング現場まで来るということはないですね。ダビング作業でいろいろと編集していく中で音楽を切り貼りすることがあるんです。尺に合わせて、曲の後ろの方をちょっと詰めたり、頭を少し動かしたり。椎名さんとしては「切ったり貼ったりするなら、俺が自分で」という気持ちがあって、ダビングに来て下さっていたのだと思います。

G:
なるほど……。

平:
でも、椎名さんが来てくれたおかげで助かった部分も多かったですね。「効果音がこれぐらいの大きさで出てきて、音楽のこの音と被るから、これは5.1chのこちらから出そう」と変更したり。日本のドラマだと、SE(効果音)がしっかり入っているせいでセリフが聞こえづらくなることがありますが、海外ドラマや映画だと音楽やSEがあってもセリフがちゃんと聞こえていますよね、ああなるようにする作業です。ギリギリまで編集と音楽のすり合わせは続けました。映像と音楽のマッチングにはこだわりがあって、少しでもズレているとダサいんですよ。

G:
確かに、映像は迫力があるのに音楽がついていけなくて、見ていてコケそうになるものがたまにあります。

平:
今回、効果音はアルカブースさんという、「クローズZERO」や「リング」のように実写映画の効果音をやっているところにお願いしました。今のラインナップでもわかるように、バイオレンスめなSEが得意で、迫力のある音を出してくれるんです。あと、代表の柴崎憲治さんの好みで、ウーファーを使わずに低音を出すんですよ。それもあって、“MAXで割れる”みたいな音を出してくれるんです。でも、椎名さんも自分の音楽を出したいし、SEも出したい。そこで、ダビング現場で音作りをしてもらったというわけなんです。椎名さんは16日の試写の時にも、新宿バルト9で音の具合をチェックしていましたね。

近:
空の境界は、音楽が立つというか、音楽によるグルーブに重きをおいています。時にはSEを沈ませても、音楽を立たせるようにしています。でも、平尾くんは全部を立てようとする。

平:
今回はSEも音楽もセリフも出すぞ、と。

近:
最終的にOKかどうかは、今回の音響監督の平尾くん判断になるので、ひたすら調整をして……ダビング自体6日もやっているのですが、最終日は朝の10時から翌朝5時まで、大変でした。


G:
半日どころか、ほぼ丸1日ですね……。

平:
僕だけではなく、椎名さんも気にしてましたから!(笑) 最後の作業は整音、「音を整える」と書く役割があるんですが、それをテレセン(東京テレビセンター)の住谷さんという方がやってくれました。

近:
テレセンのヌシみたいな人で、「これでどうだ」とバッチリ決めてくれました。

平:
効果音でいうと、最後に出てくる魔法がありますよね。あれは「森羅万象の自然の音を全部入れて下さい」とオーダーしました。魔法陣にも雨や雪といった自然のものが何でも入っていて、それに合うように自然の音も入れまくりです。

G:
森羅万象!

最後ではないものの、ヨヨさんの魔法には要注目。


平:
あと、魔法の音に人の声が加工されて入っていたりします。

G:
見るだけではなく、しっかり聞かないとダメですね。


~後編に続く~

スタッフみんなが作品を愛したことで生まれた「魔女っこ姉妹のヨヨとネネ」のビジュアル面の見所とは?


©物語環境開発/徳間書店・魔女っこ姉妹のヨヨとネネ製作委員会

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in インタビュー,   動画,   映画,   アニメ, Posted by logc_nt

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