ハードウェア

スマホでクレカ決済を可能にするSquareリーダーの新デザインに学ぶ製品改良のコツ


ハードウェアは機能も大事ですが、色・形状・素材・質感など、見た目も気になるもの。iPhoneやiPadでのクレジットカード決済を可能にする「Squareリーダー」が2013年6月にリリースされ、個人で商品を販売する際の選択の幅が広がりましたが、デザインが刷新され、コロンと分厚いフォルムだったSquareリーダーがほぼ半分の薄さになることが分かりました。デザイン面で大きく変わったSquareリーダーですが、実際に行われたのは外面的なデザインではなくデバイスの本質に対して行われたアプローチであり、その改良の過程は「たった1つのコンポーネントに対するアプローチが結果として多くの利益を生み出す」ということを示す例となっています。

How Apple's Lightning-Plug Guru Reinvented Square's Card Reader | Wired Design | Wired.com
http://www.wired.com/design/2013/12/the-new-square-reader-a-look-at-how-gadget-guts-are-designed/?cid=co15491064

Squareリーダーの開発を行ったのはJesse Doroguskerさんが率いるチーム。DoroguskerさんはSquareリーダー開発を行う前、Appleのアクセサリー部門に8年間所属し、Lightningコネクター開発を行っていました。


Squareリーダーの仕事は1つ、クレジットカードを読み取ることです。「多くの人々はカードの読み取りぐらいできて当然」と思うかもしれませんが、全てを正しく機能させるには恐ろしいほどの配慮が必要となります。ユーザーは毎回、1回で、正確に決済の準備をしなければならず、そのために満足のいく読み取りが必要とされるのです。Doroguskerさんが行うことは、このたった1つのシンプルな機能を改良するということでした。

これが以前のSquareリーダー


そしてこれが新しいSquareリーダー


新しいSquareリーダーは前バージョンよりも45%薄く、底面積は少し大きくなっています。また前バージョンは前と後ろ2つのピースから構成されていたのですが、新しいバージョンは継ぎ目はあるものの1つの固まりで、より壊れにくい仕組み。


いずれの側からでもカードをスロットに入れやすいように、リーダーの左右には角が少し細くなるという工夫が施され、スロット自体は本体のほぼ中心にあるので直感的に使用することが可能です。


読み取り機能を改良するということは、これまでカードを読み込むために利用してきた多くのコンポーネントを捨てることを意味しました。ここで最も重要なのはクレジットカードの磁気ストライプ(カード裏側の黒い帯)からデータを読み込みむための、全く新しい読み取りヘッドの開発です。

前バージョンのSquareリーダーは多くのクレジットカードリーダーやテープデッキで使われている、一般的な読み取りヘッドを使用していました。これらは問題なく作用するものの、最高とは言えません。なぜなら磁気ストライプは通常2つのバンドで情報を蓄えているのですが、既存の読み取りヘッドを使った場合はこのうち1つのバンドからしか情報を得ておらず、全ての読み取りを確実に成功させるとまでは言えないからです。一方、新しく独自開発された読み取りヘッドは両方のバンドからデータを掴むことで全ての読み取りをより正確にし、1度の読み取りで処理を成功させることが可能となっています。

この再設計によって、DoroguskerさんやAppleはSquareリーダーの読み取り感それ自体を調整することとなりました。カードをリーダーに通した時の感触は「Squareリーダーがその小ささに反して信頼できるものである」とユーザーが感じられる重要なポイントです。この点について、開発チームは読み取りヘッドに取り付けられているバネの設計を微調整することでユーザーがクレジットカードを読み取る時に摩擦を感じられるように変えました。


また開発中に、彼らはカードからデータを正しく転送する際の接触レベルがゆるみすぎていることに気づきました。接触がゆるいと、ユーザーはリーダーが正しく動作していると感じず、もう一度読み取りを行ってしまうのです。よって、開発チームはカード読み取り時の摩擦を増加させました。この調整は技術的な観点から見るとやりすぎでしたが、実際にカードをリーダーに通す手にとっては完璧な感触です。

部品の変更によって開発チームはデバイスの組み立てについても再考を行い、回路基板をヘッド部分とはんだ付けさせるために手ではなくオーブンを利用することで、基板の配置を均一かつ正確にし、より合理的な製造プロセスを実現しました。


さまざまな改良が行われた新Squareリーダーですが、この中心となっているのが、最初から最後まで構築されたカスタム・チップの開発でした。


チップの大きさはこのくらい。


チップをゼロから作り上げるためには少し費用がかかったとのことですが、もたらす利益は巨大である、としています。結局この小さなカケラが操作の核なのです。Squareリーダーはオリジナルのチップを得ることで、1回の読み取りにおけるサイズやパフォーマンス、全体の信頼性といったいくつかの側面を改良することができたのです。カスタム・チップの開発でSquareリーダーは、磁気ストライプのシグナルを解読し、スマートフォンに送るための電気信号をエンコード、そしてそれらを全て暗号化するという全てのプロセスを包括するコントロールを可能にしました。

さらにカスタム・チップはリーダーにバッテリーが不要となるという利益ももたらしました。以前のバージョンはボタン型電池を使用し、デバイスを2ミリメートルほど厚くしていたのですが、カスタム・チップを使うことでSquareリーダーはイヤホンジャック経由でスマートフォンから直接充電することが可能に。「チーム内のナードたちにとって、これは素晴らしいことです」とDoroguskerさんは語ります。


バッテリーが内蔵してあるデバイスの場合、デバイスを開けて回路基板を取り出し、2本のワイヤと格闘し、バッテリーと接続させてはんだ付けした後に回路基板を再び戻す、という処理が必要であり、これは結構な労力です。バッテリーを不要にすることで、新しいSquareリーダーはDoroguskerさんがプロジェクト開始時から願っていた「シンプルさ」を達成しました。


Squareリーダーの再設計は製品の本質的な再開発であり、「たった1つのコンポーネントに対するアプローチが多くの利益を生み出す」ということを示しています。独自の電子装置をデザインすることが、パフォーマンスを上げ、バッテリーを除去し、最も大きな問題を解決したのです。

45%も薄くなった本体や、大きくなったフットプリント、1つの固まりで構成された読み取りヘッド、スロットの位置など、1つ1つの変化は微々たるものです。しかし、これらの変化が集まることでデバイスをより本質的で熟考された、高品質の製品に見せています。なお、これらの改良にも関わらずDoroguskerさんは「次は新リーダーにある継ぎ目を消したい」と語っており、製品のさらなる改良を視野にいれています。

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in ハードウェア, Posted by darkhorse_log

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