取材

マチュピチュを十分に楽しむにはお金と時間が必要ということを実感


ペルー最大の観光スポットとして、多くの旅行者が訪れるマチュピチュは、日本人にも人気となっています。ただし、いろいろと注意が必要なのが判明しました。節約を心がけるバックパッカーには出費が厳しい。お金があっても時間が足りないと、天気が崩れた際には何も観れなくなりそうでした。

こんにちは、お金も時間も節約してマチュピチュに行ってきた自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンです。最低ではないものの、なかなか厳しい行程となりました。

◆インカ帝国の首都クスコ
地上絵を見学した海岸部のナスカからアンデスの山中にあるクスコまでは激しい峠越えの連続でした。ナスカからは98kmを上って約4150mの峠を越えてプーキオまで。そこからもう一度4000mへ上ると高原地帯が続きます。4000mを越えると坂を上るのもしんどくて、息が切れると足をついては休んでいました。高原でも元気なアルパカが羨ましい。雪にも雨にも降られて大変だったのですが、夜中にひしめきあっていた神秘的な星空は忘れられません。途中のアバンカイで休息を入れて、大きな峠を二つ越えてクスコに到着。

16世紀初めにスペイン人の侵入があるまで、クスコはインカ帝国の首都として栄えていました。石畳と古い教会の残る街並みは、歴史情緒に溢れていて、日本の城下町に近い雰囲気。クスコは京都、メキシコシティ、サマルカンド(ウズベキスタン)、西安と、世界の盆地にある名だたる古都と姉妹都市になっています。

盆地の中にあるクスコ市街


クスコの中心となるアルマス広場


歴史を感じる美しい街並み


インカ帝国時代からの石垣


統一された茶色の瓦屋根が素敵な景色を作り出しています


◆マチュピチュ村に行くまで
マチュピチュはここ

大きな地図で見る

自力でクスコから遺跡観光の拠点となるマチュピチュ村に行くには
1:電車
2:バス
3:自転車
と3つの選択肢がありました。電車は往復で約100ドルを越えるので除外。バスを考えていたのですが、1人で行っても盛り上がりに欠けそうだったので、自転車で行くことに決めました。とはいっても、バスと自転車のルートは一緒で、谷を大きく迂回して、電車とは反対側からマチュピチュ村へと向かいます。宿にテントや寝袋といった不要な荷物を預けて軽くなった自転車で挑みました。バスのルートはGIGAZINEの「マチュピチュに出来るだけお金をかけずに行ったらちょっとした冒険になった」という記事に掲載されています。

すり鉢状になっているクスコの市街地を脱出


高原地帯は畑が広がっていました


雪を被った高峰


聖なる谷(Sacred Valley)と呼ばれるエリアのウルバンバ(Urubamba)という大きな町


1日目はオリャンタイタンボ(Ollantaytambo)に宿泊


ここにもインカ帝国時代の遺跡が残っていて、たくさんの観光客で賑わっていました。


オリャンタイタンボの段々畑


オリャンタイタンボから少しすると約4300mの峠への上りが始まります。約2800mから1500mも標高を上げないといけません。荷物が少ない軽い自転車なので、力強く上ることができたのですが、頂上付近で捕まった雨には参りました。頂上に到達すると、約1200mのサンタマリア(Santa Maria)まで一気にダウンヒル。

標高を上げていく九十九折


U字に刻まれた谷を少しずつ登っていきます


ぎっしり詰め込まれた道


谷を抜け出して標高4000mあたり。峠のてっぺんまではもう少し。


2泊目になったウイロ(Huyro)の宿


ウイロからサンタマリア(Santa Maria)までは舗装路の下り坂で進みますが、サンタテレサ(Santa Teresa)までの約22.5kmは未舗装路で、川沿いだというのに峠もあるという厳しい道でした。標高1500mのサンタテレサから水力発電所までの約10kmは、川に近かったので走りやすかったです。

サンタマリアを出ると、すぐにこの橋を渡ります。


断崖絶壁の道


未舗装でここまで上ると大変


何ヶ所か川渡りがありました


意外と大きかったサンタテレサの町


サンタテレサからは水力発電所までの道


大きな音を轟かせていた迫力のある滝


易しい道でしたが、基本は上り坂です。


水力発電所からマチュピチュ村までの線路沿の道は、平坦なので楽に進めるはずでした。だけど入口で「ここから先は自転車ダメダメ」と言われて頭が真っ白に。幸いにも自転車は倉庫で預かってくれるということなので「3日後に帰ってくるのでよろしく」と頼んで歩き出しました。歩くのであればクスコからバスを使うのと変わらず、しかも連日の走行による疲れもあって、本当にしんどい道のりでした。

ウォーキングルートのスタート


一人スタンドバイミーは盛り上がりません


19時を過ぎてマチュピチュ村に到着。遅くなったので心配しましたが、翌日のマチュピチュ遺跡のチケットを入手。バス停でマチュピチュ村と遺跡を結ぶシャトルバスの乗車券も手に入れて、明日の準備は先に済ませました。バス停には客引きがいて、そこそこの宿を確保。マチュピチュ村は観光地ですが、安宿と安食堂もあったので助かりました。

谷間に沈むマチュピチュ村はアグアカリエンテス(熱い湯)という名前でも呼ばれていて温泉もあります。雰囲気もまさに日本の温泉街。


中心のアルマス広場。この近くの建物でマチュピチュ遺跡のチケットを購入できました。


トイレシャワー付きの個室で25ソル(約925円)。電気ではなくてガス式の給湯だったので熱々のシャワーでした。Wi-Fiでの通信速度もクスコと変わりません。


◆マチュピチュ観光
「バスは朝5時30分から出ているよ」と言われたのですが、疲れた体で早起きできずに、6時過ぎにのんびりと出発。マチュピチュ遺跡のある山の尾根まで九十九折りの道をバスが運んでくれました。

九十九折の未舗装路


村とマチュピチュ遺跡を結ぶバス


起きたときから広がっていた曇り空。きっと晴れてくれると言った願いは虚しく、霧は広がり雨まで降り出すではないですか。仕方ないので岩陰や茂みに隠れて雨宿り。午前中はインティプンク(太陽の門)とマチュピチュ山で時間を潰していました。

天気の悪かった朝方の遺跡


何があるか分かりませんでしたが、立看板の矢印に従うと結構歩かされることに。


途中の建物跡


インティプンク(太陽の門)という場所に到達。クスコから歩いてきた当時の人は、ここでようやく姿を見せるマチュピチュ市街に安堵していたことでしょう。


続いてマチュピチュ山に登ります。ここはチケットが必要なので事前に手に入れないといけません。旅行者に人気というワイナピチュと違って、マチュピチュ山は遺跡の入場券と一緒に前日でも大丈夫でした。「当日の午前7時から11時までの間に上り始めないといけない」という時間制限があります。

マチュピチュ山への登山道


濃霧と小雨で何も見えません


標高3082mの山頂に到達


あの山の手前にマチュピチュの遺跡が広がっているはずですが……


ちらりと見えた


雲が次々と流れていくので、少しのチャンスだけでしたが、こういう風にマチュピチュの遺跡が見えました。


歩いてきた水力発電所


山頂には13時までしか滞在することができず、係員に促されて下山。降りていく途中に天気は回復してくれて、午後からの市街観光は何とか様になってくれました。青空の下でのマチュピチュ観光を夢見ていたのですが贅沢は言ってられません。

天気が回復してくれた午後のマチュピチュ


遺跡からは3000m、4000m級の山々が連なっていて壮観。


先ほど登ったマチュピチュ山


写真を撮る観光客をよそに、悠々と佇んでいたリャマ。


そして、本やインターネットで見ていたマチュピチュの景色が目の前に。


少し角度をずらして。


後方にそびえ立つワイナピチュと市街地の一体感が素晴らしい


記念撮影


雨が上がった後なので、空気も澄んでいる気がしました。


ワイナピチュの存在感がたまりません


高いところでは一体感のあったマチュピチュも、市街の中に入るとバラバラなってしまうのがまた不思議。


市街地入口の正門


ミニチュア模型のようなマチュピチュ市街


市街地はいろんな道が入り組んでいて迷路のようでした


大きな石が積み重なっています


こんな所でウサギを発見


入口の天井が一枚岩となっていてすごい


パズルを組み合わせたような石組み


市街地には水路が張り巡らされて、新鮮な水を供給していました。


幾つにも重ねられた段々畑


帰路はシャトルバス代を節約したくて、マチュピチュ村まで歩きました。


◆帰路
徒歩で水力発電所、自転車でサンタテレサ、自転車でサンタマリアまで走ってバスをゲット。前日は歩き回ったので少しの段差でも辛いぐらい筋肉痛だったにも拘らず、使う筋肉が違うのか、自転車はちゃんと漕げました。サンタマリアからクスコまでの乗り合いバスは自転車がたくさん積まれていて、自分の自転車もそこへ。ツアー関係だと思うのですが、不思議なことに旅行者の姿はありませんでした。21時半過ぎにクスコに到着して、4泊5日のショートトリップは終了。

再び線路沿いを歩いて水力発電所まで


一つに集まっていた蝶々


自転車に乗り換えて、来た道を戻ります。


帰りにサンタマリアで捕まえたバスは、クスコまで30ソル(約1100円)でした。


全行程を終えて、普通にマチュピチュ観光を楽しみたいならお金が必要だと実感しました。一番簡単なのが電車を使う方法なのですが、一番安くても往復100ドル(約1万円)以上かかるなんて、ペルーの物価からすると考えられません。バスであれば往復80ソル(約2900円)で行けるという事でした。マチュピチュの入場料だけで128ソル(約4700円)というのもかなり高額で、自分はマチュピチュ山登山も含めて142ソル(約5200円)を支払いました。マチュピチュ村と遺跡を結ぶシャトルバスも片道26ソル(約945円)かかります。マチュピチュの入場料とシャトルバスは外国人料金で、短期旅行ならまだしも長期旅行なら、それなりに覚悟が必要でした。これも友人をみつけて、一緒に旅ができたら楽しそうですが、一人だとあまり盛り上がりません。

そして天気が崩れてしまうと、せっかくの観光も台無しです。今回は時間があったので、晴れ間を待つ余裕もあったのですが、日本で組まれたツアー旅行の短い日程だと、どうなってしまうのでしょうか。入場券も融通が利かなそうなので、マチュピチュの天気は怖いところです。カンボジアのアンコールワットやオーストラリアのエアーズロックのように、マチュピチュにも複数日有効の入場券があってもいいのにと思います。そして時間が足りないペルー旅行には、ストライキの危険も考えておいた方がいいでしょう。ちなみに、9月26日にはクスコで大規模なストライキが行われて、安全確保のためにマチュピチュへの列車は運休になったようです。

何とか形にはなりましたが、どこか心残りがあるマチュピチュ観光でした。また機会があるならば、澄み切った青空の下で訪れてみたいです。その時は一人じゃなくて、そして決して自転車に乗ることもなく。

(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
Twitter @shuutak
)

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in 取材,   乗り物, Posted by logc_nt

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