サイエンス

皮膚ガンを治療するためのワクチンが第I相臨床試験をスタート、他のガンへの応用の可能性も


厚生労働省の出す死因別にみた死亡数・死亡率の年次推移によると、1981年から2009年までに日本で最も多い死因は悪性新生物(ガン)であり、さらに人口動態調査によると2012年の死因の30%以上がガンであることも判明しています。そんなやっかいなガンを完治させるべくアメリカで新たなガンワクチンが第I相臨床試験(ヒトを対象にワクチンの安全性を検討する試験)の段階に入りました。

Cancer vaccine begins Phase I clinical trials | Harvard School of Engineering and Applied Sciences
https://www.seas.harvard.edu/news/2013/09/cancer-vaccine-begins-phase-i-clinical-trials


新しいガンワクチンの研究プロジェクトは、Harvard School of Engineering and Applied Sciencesにて教授を務め、Wyss Instituteの中枢メンバーでもあるDavid J. Mooney氏と、ダナ・ファーバーガン研究所のガンワクチンセンターの指導者で、Harvard Medical Schoolの教授かつWyss InstituteのメンバーでもあるGlenn Dranoff氏らの研究チームにより進められています。

これまでのガン治療に有効なワクチンは、まず患者の身体から免疫細胞を取り出し、次にそれらの細胞をリプログラミングして患者の身体に戻すというものでした。このプロジェクトでは従前の方法の代わりに、FDAにより認可されたポリマーで作られた指の爪サイズのディスク(円盤)のような形をしたスポンジを使います。


このスポンジは皮膚の下に注入されますが、患者の免疫細胞を体内で増強・リプログラミングして免疫細胞が身体中を巡ってガン細胞を攻撃するように設計されています。これにより身体から免疫細胞を取り出す必要はなくなります。

なお、サイエンス誌Science Translational Medicineに掲載されていた臨床前の段階では、50%のハツカネズミが2回分のワクチン投与で完璧に治療され、もう半分のハツカネズミたちは25日以内にメラノーマにて死亡した、とされています。また、この技術は皮膚ガンの一種であるメラノーマのワクチンとして設計されていましたが、他のガンへの応用の可能性もアリとのこと。

By Novartis AG

「私たちのワクチンは広範囲のバイオ医学の専門知識を組み合わせることで作成可能になりました」とチームリーダーの1人であるMooney氏は言います。また、「これはWyss Instituteの共同研究モデルの中で橋渡し研究によってヒトの臨床試験にまでこぎ着けた、最初の治療法となるでしょう。また、この橋渡し研究的アプローチ方法は、従来の学術的な環境よりもはるかに早く技術工学を臨床の段階にまで進めるのに有効です」とWyss Instituteの創立者であるDon Ingber氏は語ります。

なお、このガンワクチンの第I相臨床試験は2015年に終了する見込みで、ここで人体に投入しても安全なワクチンかどうかの評価が行われるようです。プロジェクトリーダーの1人であるDranoff氏が「新しい技術がヒトの臨床試験までこれほど早く到達するのは非常にまれなことです」と言うように、単なる皮膚ガンのワクチンとしてのみならず、広い専門知識を組み合わせ、素早く新しい治療法を開発していける研究プロジェクトのスタイルとしても注目を浴びることになるかもしれません。

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in サイエンス, Posted by logu_ii

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