DARPAから5億7千万円の資金援助を受ける、従来の1000倍速く画像を処理可能となるコンピュータとは


ミシガン大学の研究者たちは、今日のコンピュータよりも1000倍速くかつ1000分の1のパワーで画像や動画を正確に処理可能なコンピュータの回路を作成する「Sparse Adaptive Local Learning for Sensing and Analytics」というプロジェクトを行っています。国防高等研究計画局(DARPA)から570万ドル(約5億7000万円)の資金援助を受けることが可能な程に評価されているこのプロジェクトの目指すコンピュータとは一体どのようなものなのでしょうか。

Wei Lu - Image processing 1,000 times faster
http://www.eecs.umich.edu/eecs/about/articles/2013/Lu-image-processing-1000-times-faster.html

「現代、大量の画像や動画が世の中にあふれかえっています。これらは私たちが携帯端末やパソコンなどで処理しきれないような量のデータです」と言うのはミシガン大学でコンピュータ・サイエンスの助教授を務めるWei Lu氏。彼の指揮するプロジェクトは、こういった大量のデータをより素早く処理可能になるようにニューラルネットワークを基にしたコンピュータチップを設計して作り上げる、というものです。


ニューラルネットワークを基にした電子回路上には、従来のトランジスタ(電気の流れをコントロールする部品)と、論理演算とメモリ機能の両方を持ったメモリスタと呼ばれる革新的な回路素子が配置されます。メモリスタは、過去に流れた電流を記憶しそれらを基に電流を制御することが可能な抵抗器で、これは論理演算装置と記憶素子の役割を同時に可能な回路素子なので、莫大な数の信号を処理したり、高度なマシン学習が可能なコンピューティング・プラットフォームを可能にするかもしれない、とのこと。


メモリスタを利用するシステムでは、従来のコンピュータよりも画像や動画の処理作業のようなタスクをより効率的に行えるようになります。そしてLuさんの率いるプロジェクトではより大きなサイズのデータを処理することを念頭に、メモリスタを使用してニューラルネットワークを基にした電子回路を設計。これは現代のコンピュータが行う画面上の1つ1つのピクセルに何を表示させるか丹念にレンダリングしていくような方法ではなく、システムがイメージ全体をみて「推論プロセス」を行い、その後画像の細部を表現していくような画像処理を行う回路になるとのこと。これにより「画像の全てを処理したり送信したりして貴重な帯域幅を浪費する代わりに、非常に少量のデータからキーとなる特徴部分を抽出しての、イメージ再現が可能となります」と言うのは研究者のLuさん。


そんな彼らのプロジェクトにおける最終的なゴールは、メモリスタを使用したコンピュータの回路網を構築することです。この回路網は従来の回路素子の間にメモリスタを配置することで、回路素子を神経細胞(人工ニューロン)、メモリスタを神経細胞間に形成される伝達構造シナプスのように動作させる、というもの。


Luさんたちの目指す新しい電子回路網の代替バージョンでは、マシン学習の効率を上げるためにも、回路素子をつなげる物としてメモリスタを使うのではなく、従来の電子回路のメモリノードとしてメモリスタを使用することを考えている、とのこと。システムが構築された後には、この電子回路が共通の画像特徴を認識できるように訓練する予定とのことで、例えば混雑した通りにある車や空想的な画像、手書きのキャラクターなどなどの何千もの画像を回路にロード。それにより、それぞれの回路素子が画像の詳細な特徴や形を識別できるようになり、似たような画像が新しく送られてきた際には、割り当てられたパターンや形を発見した回路素子だけが、起動して情報を発信するようになるとのことです。


このプロジェクトについては以下のムービーを見るとおおまかなイメージがつかめます。

Computers that mimic the brain | MconneX | MichEpedia - YouTube


人の脳機能に見られるいくつかの特性を活かそう、というニューラルネットワークですが、これが発展を続けるコンピュータに新しい大きな進化をもたらすこととなるのでしょうか。

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in ハードウェア,  サイエンス,  動画, Posted by logu_ii