ハードウェア

iOS 7の隠れキラーコンテンツとなる近距離無線通信「iBeacon」とは?


6月のWWDCのプレゼンテーションでひっそりとその存在について知らされていたものの、詳細については一切語られることのなかった「iBeacon」ですが、無線通信を利用したデータ送受信機能であることが明らかになりました。一部でiOS 7のキラーコンテンツになると評されるiBeaconとはどういうものなのでしょうか?

With iBeacon, Apple is going to dump on NFC and embrace the internet of things — Tech News and Analysis
http://gigaom.com/2013/09/10/with-ibeacon-apple-is-going-to-dump-on-nfc-and-embrace-the-internet-of-things/

ソフトウェアエンジニアリング担当上級副社長であるクレイグ・フェデリギは6月のWWDCの基調講演で1枚のスライドを紹介しましたが、そこに表示された「iBeacon」という表記については何も言及しませんでした。そして、それは先日のiPhone 5s、5cの発表会でも同じでした。しかし、このiBeaconは非常に魅力的な無線通信技術であることが判明しつつあります。

こちらがそのスライド。iOS 7で追加された機能「AirDrop」の説明の中に「iBeacons」の表記。


◆Beacon
iBeaconは、新興企業Estimote社が開発したBeaconという名のセンサーを利用した近距離無線通信技術です。iBeaconとiPhoneがコラボレートするとどのような世界が実現できるのかがよく分かるムービーがこちらです。

Estimote Bluetooth Smart Beacon - iBeacon-compatible - YouTube


この緑の端末がBeaconです。Bluetooth SMART(Bluetooth Low Energy)に対応します。


Beaconは電池で駆動するため壁にくっつけるだけで設置完了。


これはとある雑貨店の店内の様子。


商品を陳列するテーブルの上にBeaconが設置されており、データを送信しています。


Beaconから商品の情報がiPhoneに自動で転送されてきます。


商品に関する写真、ムービー、評価、価格、SNSの情報を見ることができます。


商品の割引クーポンが送られてきました。


Beaconは客に情報を送信するだけでなく、客の行動を店にフィードバック、ビジネスに活用することができます。


Beaconセンサー端末は、ARMプロセッサーを搭載、標準で加速度センサーも搭載、さらに多くのセンサー機能を追加でき、ボタン電池で2年間連続で稼働することが可能です。データの送受信にはBluetooth Low Energy(BLE)が使用されます。Beaconは個々のモバイル端末をそれぞれ認識して、それに合わせた情報を送信することができるため、例えば上顧客だけに特別なサービスの案内を送ることも可能です。さらにBeaconは、NFCと同様に決済機能を持っています。

◆NFCよりも優れるBeacon
近距離無線通信技術としてNFCと競合するBeaconですが、様々な点でBeaconが優れています。

Beaconは、NFCよりもデータ転送可能な範囲が広いという利点があります。NFCは近接のみ使用可能で、理論値は20cm以内で使用可能ですが現実には使用可能な範囲は4cm未満です。これに対してBeaconは理論値で50m、推奨値で10mと広範囲にデータの転送が可能です。


さらに、NFCを利用するにはモバイル端末にそれぞれNFCチップが搭載されている必要がありますが、BeaconセンサーはBluetoothを利用してデータの送受信を行うため、モバイル端末にBluetooth機能(正確にはBLE)が搭載されていればBeaconに対応OKというハードルの低さも優位なところです。

また、Beaconセンサーは複数台設置することで、ユーザーの持つモバイル端末の位置を正確に特定することも可能です。このため、例えば特定の場所へユーザーを誘導するようなインドアマッピング(インドアナビゲーション)も実現できます。これまでにGoogleマップがインドアマッピングを取り入れてきたものの、室内ではGPSデータを受信できないため完全な屋内地図としては機能していませんでした。しかし、Beaconであれば完全なインドアマッピングが実現可能です。またBeaconは客の"入店"と"出店"を区別することができるため、それに応じた情報の配信が可能となっており、NFCでは実現不可能なサービスもできてしまいます。


現在Estimote社はBeacon端末を3つ99ドル(約9900円)で予約受付しています。


この価格は一見NFCチップに比べて高価にも思えます。しかし、1つのBeacon端末がカバーする範囲は100平方メートルであることから、大型店舗であってもBeacon端末設置にかかる費用は5000ドル(約50万円)程度であり、100万点の商品それぞれにNFCチップ搭載タグをつける費用に比べたら極めて小さなコストです。当然、ランニングコストはほぼゼロであり、商品が入れ替わる度にコストのかかるNFCとは比較になりません。

Appleが無線通信技術にBeaconを選んだのとは対照的に、Googleは今のところNFCに注力しており、BeaconとNFCの対決は、iOSとAndroidの代理戦争の様相を呈しています。次世代の無線通信技術としていずれの陣営が勝利を収めるのか、今後の展開に注目です。

・つづき
iOS 7の近距離通信iBeaconを使った新しいターゲットマーケティング手法が続々と登場 - GIGAZINE

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in モバイル,   ハードウェア,   動画, Posted by darkhorse_log

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