インタビュー

「ウルヴァリン:SAMURAI」への熱い思いを小津作品好きのマンゴールド監督に聞いてきた


マーベル・コミックのヒーローであるウルヴァリンを主役にした映画の最新作「ウルヴァリン:SAMURAI」が9月13日(金)に公開となります。この作品を監督したのは、トム・クルーズとキャメロン・ディアスが共演したスパイアクション映画「ナイト&デイ」や、アンジェリーナ・ジョリーがアカデミー助演女優賞とゴールデングローブ賞助演女優賞を受賞した「17歳のカルテ」などを手がけたジェームズ・マンゴールド監督。今回、マンゴールド監督にインタビューする機会が得られたので、作品の見所や制作においてのこだわり、日本映画への傾倒などについて話を聞いてきました。

映画『ウルヴァリン:SAMURAI』オフィシャルサイト
http://www.foxmovies.jp/wolverine-samurai/

今回インタビューできたジェームズ・マンゴールド監督。


GIGAZINE(以下、G):
マンゴールド監督がこれまでに撮られてきた映画というのは、ラブロマンスやサスペンス、西部劇などのジャンルのものであり、今回の「ウルヴァリン:SAMURAI」のようなアクションヒーロー作品は今までにないジャンルになると感じています。この作品に携わることになったのは、どういった理由によるものなのでしょうか?

ジェームズ・マンゴールド監督(以下、監督):
皆さんにとっては、私の今までの作品との違いを感じるものになっていると思うのですが、私自身は逆に、これまでの共通点の延長線上にある作品だと考えています。この作品で私が撮りたかったものは、「西部劇」あるいは「サムライ映画」に通ずるものであり、今回はたまたまそのキャラクター自体がアメコミをもとにするものだった、ということなんです。今回の制作にあたり、いわゆる「コミックを原作とする映画」や「夏のアクションヒーロー大作」という映画を撮るつもりはありませんでした。コミックを原作とする映画というものは、すでに使い古されたフォーマットだとも思えますしね。ですので、私にとってこの作品には、過去との違いという部分よりも、いままでのポリスもの、西部劇、アクション作品との類似点があると思っています。

G:
共通点と言うことに関してお聞きします。いままで監督が撮られてきた作品では「キャラクターの心理描写を行う、えぐりだす」という部分に重きが置かれており、それは今回の「ウルヴァリン:SAMURAI」でも表現されていると思います。今回の作品の中で力を込められた部分というのはありますか?

監督:
私としては不死身であることの苦しみを描きたいと思っていました。人間は「死」というものに対して恐怖を感じていますが、逆に不死身になった場合の苦しさというものは想像がつきません。それに対して、不死身であるウルヴァリンには自分の愛する人たちと別れなくてはならないという苦しみがあります。また、その別れ方にも、敵となる相手によって殺されてしまったり、またウルヴァリン自身が長生きだから先立たれてしまうということがあります。今回は、クリス・クレアモントとフランク・ミラーによる原作とは物語の時代を少し変え、一連のX-MENシリーズの後に時代設定することにより、ウルヴァリンの「喪失感」を作り出しました。「プロフェッサーX」も、恋人の「ジーン・グレイ」も「X-MEN」のメンバーも、すべてウルヴァリンは失ってしまっているので、孤独で孤立している状況になっています。自分の「不死身」という力を呪い、それを「神からの天罰」のように感じ、常に痛みを感じながら生きています。そういうところから物語を始めるということが非常におもしろいと考えました。アメコミのポップアイコンであるキャラクターではありますが、そういうポイントから物語を展開することによって、観客の皆さんには楽しんでもらえるのではないかと考えています。そういう通常とは違う形のもの、よりダークなものをお見せしておもしろい内容になるのではないかと考えています。


G:
今回は日本での大規模ロケが行われており、従来のハリウッド映画とは違った「画」になっていると感じました。日本での撮影の中で、特に印象に残っている部分はありますか?

監督:
私はもともと小津安二郎監督の映画が好きで、「東京物語」や「浮草」などをはじめ、ほとんどすべての作品を観てきました。実際に私の最初の作品である「君に逢いたくて(原題:Heavy)」という作品にもその影響は現れています。今回、広島県福山市の鞆の浦(とものうら)や愛媛県今治市の大三島町(おおみしまちょう)などでロケを実施し、まさに1950年代の小津作品に出てくるような風景を見られたことで大変感動しました。もちろん東京での撮影も素晴らしく、エキサイティングなものではあったのですが、私にとって非常に心に残っているのは、まさに「田舎の日本」を訪れたことです。小さな町でしたので、立派なお寺もなければ豪華なホテルや温泉もありませんが、漁を営み、農業で暮らしているという日本の風景に触れられたことがとても印象に残っています。日本好きな私でも、映画の撮影がなければ訪れる機会はなかったと思いますし、日本人であるあなたたちでもなかなか訪れることは少ないと思うのですが、そういう意味でとてもスピリチュアルな経験をすることができたと思っています。

G:
作品の中では、「日本的な部分」の特徴をうまくとらえていると思いました。たとえば、ある施設のシーンでカウンター係として出演しているおばあさんがいましたが、その対応の雰囲気がとても日本人的の特徴をつかんでおられると感じました。そのような細かい、日本人ならではの特徴や表現というのは、どのようにして再現することができたのでしょうか?

監督:
実はあのシーンは日本ではなくオーストラリアのシドニーで撮影したのですが、女優さんをわざわざ日本から呼び寄せて演じてもらいました。あれ以外にもシドニーで撮影したシーンは多いのですが、たとえどんな小さな役であっても、可能な限り日本人の役者に演じてもらうようにしました。これは簡単なことではなかったのですが、私は「シーン」の設定と言うよりも、実際の「人間」のほうが大切だと考えたのです。オーストラリアでも日本人の顔をした役者を見つけることはできるのですが、やはり「日本に住む人」に演じてもらうことが重要だと考えたのです。

G:
なるほど。

監督:
普段から日本語を使っている日本人の方には理解しにくいかもしれないですが、西洋圏で作られる日本をテーマにした作品で不自然に感じるのは、日本人同士であるにもかかわらず、英語で会話してしまうシーンがあることなんです。今回の映画の中で日本人同士が会話するシーンがある場合、基本的には日本語で会話してもらい、英語圏向けに英語で字幕を入れるようにしています。今回の「ウルヴァリン:SAMURAI」は、アメリカ映画であり、なおかつハリウッドの夏の「テントポール作品(超大作)」であるにもかかわらず、英語の字幕が出てくるという非常にまれな作品になりました。ましてや、マーベル作品でありながら字幕が出るという非常に珍しいものになっています。はたしてその方法が配給元の「20世紀フォックス」に受け入れられるかどうか心配だったので、撮影の時には日本語と英語の両方で演じてもらっておき、ラッシュ(編集前の素材)をフォックスに送る際には英語の映像を送り、完成版の時点で日本語の映像に差し替えるというトリックを使いました。結果的にそれでOKが出たのでよかったのですが、私はその方がより自然な作品になると思いますし、演じる側にとっても自然な演技ができると思っています。


G:
そういったこだわりがあったから、日本とハリウッド映画の融合が自然な仕上がりになっているのですね。

監督:
その点にはとても注意を払いました。実は本編の中では1箇所だけ、シンゲン役の真田広之さんとハラダ役のウィル・ユン・リーさんが英語で話すシーンがあるのですが、それはそのシーンに出てくる他の登場人物が日本語を理解しないという場面設定だったためです。その点も含め、言葉の部分にはとても気を遣いました。今回の映画は、日本人が英語で演じていながら作品としてきちんと成り立っているのですが、やはり母国語である日本語で演技をすることによってよりよい演技、より正確な演技ができるようになり、結果として「リアルさ」を出すことができたと思っています。外国語で演じることで失われがちな「スピード感」や「音楽的」な部分を残して自然なものにすることができたと思っています。

G:
なるほど、そこまでのこだわりを持って制作されていたのですね。

監督:
もう一つだけ。(長く考えて)この映画を撮りはじめたとき……、どのようにして、私がわからない言葉を話している人をディレクションしたらいいのか、悩みました。けれども撮影が進むにつれ、次第にそれは難しいことではないと感じるようになってきました。たとえ話している内容がわからないとしても、それが不自然でその場にふさわしくないものだった場合には、なぜか「おかしい」と分かるのです。たとえば、真田さんとマリコ役のTAOさんとのセリフ回しに不自然さが残っていると感じたときに指摘すると「なぜ日本語を話せないのに分かったんですか?」と言われたことがありました。話している、演じている際の心地よさや役柄に没頭している感じというのは、言葉が分からなくても伝わってくるものだったんです。


G:
母国語を使う環境を整えたことで、自然に演じることができるようになったということなんですね。

監督:
そうですね。もちろん俳優の皆さんがとても優秀な方ばかりだったこともあります。(考えて)……これは私の信念であり、日本映画などから学んだことなんですが、役者には言葉だけでなく「間」の使い方を大切にしてもらうことが重要です。「演技」には、口で話す言葉だけではなく、見つめ合い方、視線の動き、立ち振る舞い方というのが大事です。目の動かし方、視線を「ダンス」させるやり方ひとつで、演技として伝えられるものがあると思っています。特に西洋の映画の中では、このように(こちらにじっと目線を合わせながら)目を合わせたまま演技をすることが多いのですが、実際の暮らしの中でそのような目の合わせ方というのはあまりありませんよね。なので、私は役者に対して「従来の方法論から解放されるように」ということを常に言い続けています。常に見つめ合うだけでなく自然に演技することで、次に本当に目を合わせたときの「伝わり方」のリアルさに違いが出てくると思うのです。

G:
監督のこだわりが詰め込まれた映画になっているということですね。今日はありがとうございました。

ここで残念ながら時間が来てしまい、インタビューは終了。こちらからの質問に対して深いところまで丁寧に説明してくれる監督の姿に、この作品にかけた意気込みを感じるようでした。

◆主要キャストと監督の記者会見

記者会見会場となったのは、東京都目黒にある目黒雅叙園


通路では、さっそくウルヴァリンのお出迎えです。


建物の中には不思議な空気がただよい、まさに「昭和の竜宮城」と呼ばれる空間。


関係者待合室もこんな雰囲気でした。


会見場はこのような舞台が用意されていました。これでも室内です。


開始を待つ報道陣。畳の上に陣取り、能舞台が始まるのを待っているようでした。


舞台袖では、黒子がスタンバイ。


会見が始まりました。向かって左から福島リラ、真田広之、主役のヒュー・ジャックマン、ジェームズ・ゴールドマン監督、TAOの5人が勢揃い。


立ち姿での撮影。


会見終了間際にヒュー・ジャックマンが「ちょっと一言いいですか?」とマイクをリクエスト。


「いろんな記者会見を行ってきたけど、マスコミの皆さんが靴下で参加している会見は初めてだよ!」とジョークを飛ばすと、一同が大爆笑に包まれました。


作品のトレイラーがこちら

「ウルヴァリン:SAMURAI」予告編 - YouTube


こちらは真田広之演じる「シンゲン」との殺陣(たて)シーンがフィーチャーされたトレイラー

「ウルヴァリン:SAMURAI」殺陣シーン - YouTube


東京の街中で撮影された、ウルヴァリンと悪役が街中でバトルを繰り広げるシーン。

「ウルヴァリン:SAMURAI」街中アクションシーン - YouTube


新幹線とおぼしき列車の上で迫力のアクションシーンをとらえた手に汗握る予告編

「ウルヴァリン:SAMURAI」列車シーン - YouTube


ヒュー・ジャックマン主演、ジェームズ・マンゴールド監督制作の「ウルヴァリン:SAMURAI」は9月13日(金)から全国で公開されます。

◆「ウルヴァリン:SAMURAI」
9月13日(金) TOHOシネマズ日劇他にて全国ロードショー
3D/2D 字幕版/日本語吹き替え版(一部地域を除く)同時公開
公式サイト:http://wolverine-samurai.jp
facebook:https://www.facebook.com/WolverineJP
twitter:@Wolverine_JPN
配給:20世紀フォックス映画
©2013 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved

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