スター・ウォーズの「聖地」モス・エスパは地質学の研究に大きく役立っている

世界で最も人気のあるSF映画の一つ「スター・ウォーズ」は1977年のシリーズ第1作公開以来、世界中の多くのファンを魅了してきましたが、その「聖地」としてファンの間で人気なのが、宇宙港都市Mos Espa(モス・エスパ)のロケ地です。ところが近年、モス・エスパは熱心なスター・ウォーズファンだけでなく、地質学者の間でも注目されています。その理由とは一体どういうものなのでしょうか？

Star Wars home of Anakin Skywalker threatened by dune
http://www.bbc.co.uk/news/science-environment-23375344

Dunes on planet Tatooine: Observation of barchan migration at the Star Wars film set in Tunisia
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0169555X13003486

映画「スター・ウォーズ エピソードＩ/ファントム・メナス」で登場したモス・エスパは、砂漠の中に存在する宇宙都市です。若き日のアナキン・スカイウォーカー(後のダース・ベイダー)がモス・エスパ大競技場で参加したポッドレースは、同作品の大きな見せ場として印象的でした。モス・エスパは、チュニジアのオアシス都市Tozeur(トズール)に1997年建設され、約1ヘクタールの敷地に20個の建物が並んでいます。

By RS...

ジョンズ・ホプキンズ大学のラルフ・ローレンツ、アイダホ大学のジェイソン・バーンズ、スース大学のナビール・ギャスミらの研究チームは、2009年にモス・エスパを訪れ、スター・ウォーズ エピソードＩで使われたセットを観察しました。彼らは、チュニジアのトズール地区で行われている砂丘やバルハンの移動速度を調べる研究をしており、その研究にはモス・エスパの建物が利用されています。

By SAGT

通常、砂丘に建物を建てることはありません。それは彼らの研究テーマそのものである砂の移動の速さが原因です。卓越風が巻き起こす砂が強すぎて建物を建て生活するには不向きな環境だからです。こういった理由から、砂丘の中に建てられたアナキンの生家は、砂丘やその中にあるバルハンの遷移を観察する上で基準にする固定物(マーカー)としてきわめて貴重であり、研究者たちはスター・ウォーズファンに負けないくらいモス・エスパの建物群に注目しているというわけです。

こちらがアナキン・スカイウォーカーの生家。

彼らは、2002年、2004年、2008年、2009年のモス・エスパの衛星写真から、バルハンの移動速度は1年あたり50フィート(15.24m)であることを突き止めました。遠くチュニジアのオアシス都市に行かずとも、Google Earthを調べるだけで、砂丘の移動速度が測定できてしまうというわけです。もちろん、研究者は衛星写真を見てるだけではなく、モス・エスパに2009年、2011年と足を運んでいます。

このように、地質学の研究に役立っているスター・ウォーズですが、役に立っているのはモス・エスパを撮影する衛星写真だけにとどまりません。研究グループは近年、「スター・ウォーズファンの聖地巡礼」をも研究に利用しているといいます。

By victor_nuno

熱狂的なスター・ウォーズファンは、日々、聖地モス・エスパを訪れています。彼らの多くは、聖地の様子を記録した写真をFacebookやブログにアップします。その写真にはモス・エスパの現在の様子がばっちり記録されています。つまり、多くのスター・ウォーズファンが「トズールの定点観測データ」をインターネットで公開してくれているというわけです。研究チームはこれらのデータを収集し分析に活用しています。

By deepwarren

つまり、スター・ウォーズファンの聖地モス・エスパは、その存在自体が研究に役立っているのに加えて、この地を巡礼するファンに研究に役立つデータを広く公開させているという点で、二重の意味で地質学者にとってありがたい存在のようです。