サイエンス

IQテストでは決断力や意志決定に影響する合理的思考力は測れないことが判明

By Emilio Garcia

標準的なIQテストは問題を多く含んでおり、思考能力の高さを評価するテストとしては不十分であると主張するトロント大学の人間発達学および応用心理学のキース・スタノビッチ教授が、科学的な研究や開発を支援するThe John Templeton Foundationから資金援助を受けて世界初となるRQテストの開発を3年前に始めています。

Rationality
http://io9.com/a-test-to-measure-how-rational-you-really-are-609412488

スタノビッチ教授は、「認知科学者によって定義されたIQテストは合理的な考え方を直接評価する手段ではありません。だからこそ合理的思考力を測るRQテストが必要なのです」、と主張します。スタノビッチ教授の研究は、2002年にノーベル経済学賞を受賞した心理学者であり行動経済学者のダニエル・カーネマン氏が唱えている理論に基づいているとのこと。

By World Economic Forum

「人間の判断は多数の可能性の中からどうやってヒューリスティックな近道を選択してくるのか」という議題のカーネマン氏の研究は多岐に渡る分野に影響を与えており、中でも人間の合理的思考力に関する「人間の認知力の基本的な構造が、人間に判断力や意志決定においてミスを誘発させている傾向がある」という理論が注目されました。

カーネマン氏の研究チームは、個人の間には判断力や意志決定のミスにおいて違いがあることを発見。どういうことかというと、合理的思考能力に関係する認知力の特徴には、人それぞれバリエーションがあるということです。

By Mary Crandall

一般的にIQテストは人間の思考力を測ることができると思われがちで、また、科学者や一般人は、思考力には判断力や意志決定力が含まれていると信じている傾向があります。カーネマン氏が定義する思考力はノーベル賞で称賛を浴びましたが、カーネマン氏が意味する思考力を測る要素はIQテストに含まれていないとのこと。IQで測れる知能が高いからといって合理性に富んだ思考や行動ができるというわけではないようです。

また、世の中には高い知能を持っているにも関わらず合理的に考え行動することができないことがあり、スタノビッチ教授はこれを「dysrationalic」と名付けました。スタノビッチ教授によれば、第43代アメリカ合衆国大統領のジョージ・W・ブッシュ氏はdysrationalicの傾向が強かったそうです。

By InSapphoWeTrust

では非合理的な思考や行動がもたらす結果は一体どのようなことなのか。スタノビッチ教授は、合理的な思考や行動ができないと、以下のようなデメリットがあると主張します。

・内科医は効果の低い治療を施す
・人は危険を過小評価する
・訴訟手続きで情報が誤用される
・政府や民間産業が大量の資金を必要のないプロジェクトにつぎ込む
・子どもに予防接種を受けさせない親
・不必要な手術
・絶滅に向かって殺されていく動物たち

このような問題を避けるためにも、適切な判断を下す合理的思考力が必要になるのでIQテストではなくRQテストを並行して行うべきだ、とスタノビッチ教授は語っています。教授によれば、合理的な思考能力は生まれつき与えられた能力ではなく、知能と同じように鍛えることができるとのことです。

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in メモ,   サイエンス, Posted by darkhorse_log

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