取材

「中米のシンガポール」も夢ではない経済発展で確実に変わりつつあるパナマについて


太平洋と大西洋を結ぶ交通の要衝パナマ運河。その管理権はアメリカに帰属していましたが、1977年に結ばれた条約により、1999年12月31日にようやくパナマに返還されました。これによって通行料収入が直接パナマに入ることになりました。2005年に約10億ドル(約1000億円)と過去最高を記録した通行料収入は、2012年には約18.5億ドルと(約1850億円)と拡大を続けています。現在、進められている拡張工事が完成したら、通行料収入は一段と増えることでしょう。

こんにちは、自転車世界一周の周藤卓也@チャリダーマンです。パナマについてあまり興味は無かったのですが、旅をしてみるといろいろと気になる点が出てきたので調べてみました。安定した収入を確保できたことによって、パナマという国は変わりだしています。

◆パナマ運河


1914年に開通したパナマ運河は全長80kmの「海洋の近道」として太平洋と大西洋をつないでいます。水のエレベーターである閘門を利用して、船が海抜26mのガトゥン湖まで登り、大陸をまたぐわけです。今回はパナマシティから自転車で一時間のところにあるミラ・フローレス閘門を見学してきました。

辺りはこのようなジャングル


ミラフローレス閘門のビジターセンター


別角度から。


観光バスもやってきて、観光客でいっぱいでした。


ビジターセンター内の展望台からは、こんな感じで運河を一望できます。


到着したときは、ちょうど二隻の船が通過していました。


リベリア船籍の「VENUS SPIRI」は4万5959トンの大型船


こちらは「Nissan」の車両運搬船でした


背後にくっつく二隻のタグボート


この程度だった水位が……


ぐんぐんと上昇


水位の調整を済ませて、太平洋へと抜けていきました。


新しい船がやって来ると……


ワイヤーで牽引する電気機関車が現場へと向かいます。パナマックスサイズの船になると、船幅がギリギリなので自力では航行できません。


急勾配区間にはラック式の線路が使われているとのこと。


ゆっくりと船が近づいてきます。


針に糸を通すように進んで……


ぴったりと収まりました。


門が閉まると注水が始まります。


真っ白な船体しか見えませんでしたが、


水位の上昇と共に、藍色の船底が姿を現しました。


このように浮き上がってきます。


次の区間へ移動中。


同じ行程をもう一度繰り返して、こちらも太平洋に抜けていました。


すぐに、もう一隻。


交通の要衝として、たくさんの船が通過していきます。


遠くに見えるのはアメリカ橋。アメリカ橋の向こうが太平洋です。


運河だけではなく、併設されている資料館も見学しました。


驚きの3Dシアター。


パナマ運河を紹介するビデオを観賞しました。


運河の管制室のジオラマ。


パナマ運河を通過するシミュレーションも体験できます。


大画面に映像が流れていって、大型タンカーに乗船しているようでした。


このパナマ運河は現在拡張工事をしています。現在は全長294.1メートル、全幅32.3メートル、喫水12メートルという船舶の制限があるのですが、拡張工事完成後は全長366メートル、全幅49メートル、喫水15メートルまでの船舶が通過できるようになるようです。

パンフレットにあった新旧最大船舶の比較。


新しい門はスライド式に。


◆パナマシティ

新市街はシンガポールのように高層ビルが立ち並んでいて、そのスケールには圧倒されました。旧市街は少し頼りないものの、観光スポットとして整備が進んでいる場所もあるので、数年したら景色は一変しそうです。

旧市街から見た新市街。


海岸沿いの幹線道路。


サイクリングロードから眺めた高層ビル。


高層ビルの谷間。


一方で、旧市街の生活は厳しそうです。


少し雰囲気の暗い場所。


ただ、旧市街は整備が進められていました。


整えられた海岸沿い。ここから新市街までは遊歩道やサイクリングロードで繋がっています。


宿の前にある道はレンガが敷き詰められて綺麗になっていました。


次は、こちらのよう。


パナマでは安いものが何でも揃っていたので快適でした。郊外の複合商業施設は巨大すぎて歩き疲れるほど。中心部の繁華街は、衣服を中心としたお店で賑わっていました。このお店も一つ一つが馬鹿でかい。スーパーマーケットも食料品から文房具、工具と品揃えは中米一番でした。

パナマシティの「albrookmall」を散策。


キリンのオブジェが並ぶ広場。


とても広いモールです。


空いてるテーブルを探すのも難しいフードコート。


こちらは、パナマシティ旧市街の繁華街。


食料品からスポーツ用品、衣服、文房具、工具、電化製品と何から何まで揃っていたデパート。


海外では貴重なビニールケースが安かったので買ってしまいました。半透明のケースが0.45ドル(約45円)、透明のケースが0.3ドル(約30円)。半透明のビニールケースもサイズが大きくなると1.5ドル(約150円)となって、日本の100円ショップより高くなってしまうのですが。


マクドナルド。


商品が積まれた店先。


ショッピングを楽しむ人たち。パナマは物で溢れています。


日本と同じで24時間営業のスーパーもありました。


スーパーがない場所には中国系パナマ人がミニスーパーを開いています。日本のコンビニのような品揃えで、走行途中にもよく立ち寄ってました。彼らはよく働いてます。中国系パナマ人は自営業者として、普通のパナマ人よりは裕福そうでした。

日本のコンビニに位置するのが、中国系パナマ人のミニスーパー。


椰子の実ジュースまで提供してしまう中国系の商才。


中国系パナマ人が経営する食堂も多かったです。


こういった肉と豆とご飯で3ドル(約300円)くらいが目安でした。


店先に中国語があったり。


可愛いパンダのイラストも。


◆要所を押さえた発展

アフリカのシエラレオネやルワンダで感じた変化が最貧国からの脱却だとしたら、パナマが目指しているものは先進国に向けての挑戦ではないでしょうか。整備が進んでいた旧市街は観光、そして治安、交通、教育と目に留まった変化は要所を押さえていました。

中米諸国と共通した治安の問題をパナマも抱えています。


パナマシティ旧市街の治安は不安でしたが、多数の警官が警備にあたっているので普通に歩けました。パナマでは2010年に治安省が創設されて、治安対策に本腰を入れてました。


監視カメラも目を光らせて。


ノンステップの市内バス。


パナマシティの市内バスではリチャージ式の電子カードを使っていました。


地方のバスですら、お釣りはこのようにして完備。


携帯電話も4Gがスタートしています。


街中では携帯リチャージの機械も設置されていました。人のやることを機械がやれば、社会の生産性は上がります。


パナマは何と水道水が飲めます。メキシコの重たいタンクを抱えていた非効率さからすると、蛇口を捻った水が飲めるのは素晴らしいことです。


パナマシティでは地下鉄の建設が進んでいました。


パナマ出国のためにトクメン国際空港に向けて走っていると、学生が同じようやパソコンを持っているのが気になりました。バス停でも学生と同じパソコンをみつけたので突撃。14歳くらいの子たちで同じパソコンをみんな持っているみたいでした。

CPUはインテルのATOM、OSはWindows7といった構成。こちらはインテルが投入しているクラスメイトPCのようです。


こんな感じでパソコンを使っていました。


このクラスメイトPCを検索する「Intel y Meduca continuan con exito Programa Balboa」「Intel ha entregado 100,000 computadoras Balboa」といった記事が見つかりました。

バスを待つ学生たち。


「パナマはいい国なんだから」と伝えたけど分かってくれたかな。これからのパナマを背負っていくのは君たちなんだから。


政府が無料Wi-Fiスポットも作っていました。


「Internet Para Todos」は32の市町村に1104のアクセスポイントを提供し、2012年の登録ユーザー数は60万人を越えています。自分もホステルの電波が悪いときに利用しました。


スエズ運河を擁するエジプトの人口が8253万人なのに対しパナマの人口は357万人。人口が少ないからこそ経済発展も速やかに進みそうです。パナマの現職大統領であるリカルド・マルティネリ大統領は「We copy a lot from Singapore and we need to copy more」とシンガポールを模範にパナマの発展を説きました。外務省の基礎データによると2012年の経済成長率は10.2%、失業率4.0%と、パナマは力強い経済成長を続けています。

(文・写真:周藤卓也@チャリダーマン
自転車世界一周取材中 http://shuutak.com
)

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in 取材,   乗り物, Posted by logc_nt

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