精神病の少女が見た圧倒的な世界とその破壊を描いた「Caldera」

夜光虫の美しい海で泳いだり、巨大な亀と友達になったりと、頭の中に幻想的な世界を持っている精神病の少女を描いたのが「Caldera」。薬を飲むと頭がぼんやりして全てが霞がかって見えてしまうため、ある日少女は薬を捨てるのですが、その後にはどんな世界が待ち受けているのでしょうか。少女の目を通した幻想的な世界が約11分という長さで描かれています。

Caldera (2012) on Vimeo


波音が響く暗闇の中で目を開けた少女。

立っているのは岬の上です。

足元からはきらきらと青い光が広がり、腕の中で流れ星が流れていきます。

しかし、そんな幻想的な様子とは裏腹に、遠く向こうではどんどんと崩壊していく世界。

じっとにらみます。

ぎゅっと目をつぶり……

再び目を開けた時、少女には怒りも喜びもなく、ゆううつそうな姿。

洗面台の鏡を前に肩を落とします。

手の平に出したのはいくつかの錠剤。

ゴクン。

「CALDERA（カルデラ）」とムービーのタイトル。

次に現れたのは、もやのかかった不透明な世界。

スーパーマーケットの中を少女は眠そうな眼で歩きます。

閑散とした店内。

ふと上を見上げると……

窓枠に切り取られた青い空。

店を出て、薬の効果でぼうっとした頭の少女ベンチに座ります。、

隣を見ると1人の男性。

じっと見つめますが、どんな顔をしているのかさえ明らかでありせん。

手の中には先ほどの薬。

空を見上げます。

電線の上には一匹の小鳥。

青い鳥はすぐに羽ばたいて遠くに行ってしまいました。

ぼんやりとしていた目を見開き、見送る少女。

薬を捨て、立ち去ります。

夕日が落ち、辺りには夕闇が広がっていきます。

フードを目深にかぶり、自転車をこぐ少女

巨大な工場の前を通りすぎ、街をあとにします。

そして向かったのは森の奥深く。

そこ広がっていたのは青く輝く入り江。

岩の上に立ち、飛び込みます。

ザブン、と飛び込んだ瞬間、夜光虫が体の周りで輝き始めました。

小さな魚が近寄ってきて、思わず笑顔に。

目の前から大きな影。

影の正体は巨大な亀でした。少女は後ろから亀を追いかけます。

岩に生えている藻を食む亀と、顔をあわせる少女。

近寄っても亀は逃げることなく、少女と思いを通じ合わせている様子です。

思わず笑顔になります。

しかし、突如、ゴゴゴ……と地上が騒がしくなってきました。

少女が後にした巨大な工場に変化が。

工場やビルなど、街のあらゆるパーツが分解されていきます。

森の向こうは赤く染まっています。

海面に顔を出し、じっと目の前を睨む少女。

森の向こう側ではどんどんと破壊が広がっているようです。

怪しげな2つの目が壊れている世界の中で光ります。

薬を捨て、不透明だった世界を後にした少女は、破壊されていく世界を前にどのような行動を起こすのか？美しい映像で精神病の少女の世界を描いていた物語は、このあと衝撃的なラストを迎えることとなるのでした。

このムービーはフィルムメーカーのEvan Vieraさんの父が統合失調感情障害を患っていたことにインスパイアされ作られたもの。Vieraさんの父親は土星の輪の上でダンスを踊り、天使たちと話し、悪魔から逃げていたそうです。彼はすばらしい世界とおそろしい世界の両方を生きていたにも関わらず、家族たちにはその一面しか見えなかったため、父親を誤解し投薬を勧めてしまったとこのと。CALDERAはそんなVieraさんの父親だけでなく、精神病の人々のすばらしい頭の中の世界を目指すために作られたのだと、Vieraさんは語っています。