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セルフドライビングカーが現状で抱えている問題点をMIT研究者が指摘

By loudtiger

2012年にGoogleが完全自動運転で運転手不要の自動車「セルフドライビングカー」に視覚障害がある男性を乗せて町を走るムービーを公開しましたが、マサチューセッツ工科大学が発行する「Technology Review」は、Googleのものを含めすべてのセルフドライビングカーには解決しなければいけない問題があると警告しています。

Despite Google's Self-Driving Cars, Vehicle Autonomy Remains a Distant Destination | MIT Technology Review
http://www.technologyreview.com/review/513531/proceed-with-caution-toward-the-self-driving-car/

フォード・フージョンの2013年セダンモデルには「アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)」と「レーンキーピング・システム」という2つの自動機能が搭載されています。アダプティブ・クルーズ・コントロールはレーダーを使用して前方の車との距離を計測し、安全な距離を保つためにアクセルとブレーキをコントロールする機能で、レーンキーピング・システムはバックミラーに搭載されたカメラを使用して、自動車が車線からはみ出ずに走行しているかどうかチェックし、ハンドルを振動させて運転手に知らせたり、車線からはみ出しそうな場合はゆっくりハンドルを戻すシステムです。

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この2つの機能には安全性を保つためや、ドライバーの意志を優先するため、限られた状況になると停止する機能が搭載されています。例えば、アダプティブ・クルーズ・コントロールは時速12マイル(約19.3km)未満のスピードで走行している場合や前方の自動車が最初に設定したスピードよりも速く走行し出した場合には動作を停止します。

また、レーンキーピング・システムは自動車が車線をはみ出てお知らせしてくれたとしても、思いっきりハンドルを切れば無視でき、車線が古く色がはげてしまっている場所を走行している時には自動的にスイッチが切れる仕様になっています。Technology Reviewによれば、このような制限があるにも関わらず、アダプティブ・クルーズ・コントロールやレーンキーピング・システムは素晴らしく賢明に作動し、使っても大丈夫というくらい頼れるそうです。

リンカーン・MKSには安全に駐車できるスペースを検知してドライバーはブレーキを調節するだけでほぼ完璧に縦列駐車などを行うアクティブ・パーク・アシストという機能が搭載されています。リンカーン・MKSを試乗したTechnology Reviewよると、車が自動的にバックしながら駐車を始めたときにタイヤがすごいスピードで回転するのを見て恐怖を感じたが、正確に駐車されたのを見てとても驚いたそうです。しかしながら、問題点もあったようで、正確にレーンに沿って駐車したところまではよかったのですが、隣に駐車している車に近すぎたため降りることが困難だったとのこと。

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これまでに挙げた3つの自動機能「アダプティブ・クルーズ・コントロール」「レーンキーピング・システム」「アクティブ・パーク・アシスト」は一見便利で安全性にも優れていそうな印象を受けますが一体何が問題なのでしょうか?

Technology Reviewによると、リンカーン・MKSを試乗しているときに発生した「隣に駐車している車との距離」という問題から、「人間の行動と機械の能力を有効的に合わせることができるか?」という疑問が浮上。確かに、リンカーン・MKSに搭載されているアクティブ・パーク・アシストは、正確に車線に沿って駐車できても、隣に駐車している車が車線からはみ出して駐車していることまで考慮して駐車することはできませんでした。

認知科学者であるドン・ノーマン氏は著書「未来のモノのデザイン」の中でセルフドライビングカーが抱える潜在的な問題を指摘。例えば、アダプティブ・クルーズ・コントロールについては、高速道路から一般道路に続く出口車道には信号がないためセルフドライビングカーが自動的に加速してしまったり、一定速度で走行中に車線を変更して他の車の後ろについた瞬間、急激に減速するといった問題があるようです。ドン・ノーマン氏は完全自動運転はより安全になるが、自動運転機能の移行期間中、全てではなくいくつかの機能だけが自動化されている場合に問題が発生するであろうと記しています。

また、昨年Googleが公開したセルフドライビングカーのムービーはあてにならないとTechnology Reviewは指摘します。ムービーで使用された自動車は撮影時に通ったのと全く同じルートを最低でも1回は走行しており、初めて通る道ではありませんでした。


いまだに予測不能な突発的な出来事に対して人間がどのように反応・行動するかを予期できるようなシステムは存在していません。自動運転に任せた状態で走行していて、不意にドライバーが運転しなければならない事態が起きたとき、それまで夢うつつでオートドライブを楽しんでいたドライバーが急にハンドルを切って危機を回避できるかというと疑問が残ります。

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また、MITエイジラボの研究員で、ドライバーの行動などを研究しているブライアン・ライマー氏によると、自動運転に頼りすぎるとドライバー自身の運転能力が落ちてしまう可能性があるとのことです。20kmのうち半分を自動運転に任せ、残り10kmになってから運転し始めるドライバーと、自動運転に任せずに20kmのうち10km地点まで運転してきたドライバーの能力は、同じ人物であっても同一ではないということです。

さらに、ライマー氏によると「どうやって人間の脳と自動運転テクノロジーをつなげるか?」という問題が忘れ去られているとのことです。ノーマン氏も著書の中で「自動運転はドライバーが運転中どのように感じているかという点とうまく合わすことを考えていかなければならない」と述べています。

ライマー氏は自身が所属するMITの研究所でダッシュボードに設置した心拍数・皮膚を流れる電流の抵抗が皮膚の湿気で低下するガルヴァニック皮膚反応目の動きをチェックするセンサーからドライバーの「精神的仕事量および注意力」を計測する研究を進めており、近い将来には、セルフドライビングカーに搭載されたマシンがもっとドライバーとコミュニケーションがとることができ、ドライバーがどのような肉体・精神状況であるか、より理解できるとのことです。

By tom.arthur

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