サイエンス

光ファイバーのない地域でもワイヤレスで100Gbpsの通信速度が可能な技術を国防総省が開発へ

By The California National Guard

商用の無線ネットワークもかなり進歩してきたとはいえ、有線接続とは速度や信頼性の面で埋められない差がついています。世界各地に軍隊を派遣する機会のあるアメリカ軍としてこれは見過ごせない問題となっており、アメリカ国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)が、光ファイバーのバックボーンがない地域でも100Gbpsの速度が出せるような技術の開発計画をスタートさせました。

PROPOSERS’ DAY CONFERENCE FOR 100 Gb/s RF BACKBONE (100G) PROGRAM - Federal Business Opportunities: Opportunities
https://www.fbo.gov/index?s=opportunity&mode=form&id=e21984e31d49c3780966a53983daa4f6&tab=core&_cview=0



2012/12/14 Deployable Radio Frequency Data Backbone To Match Fiber Optic Capacity
http://www.darpa.mil/NewsEvents/Releases/2012/12/14.aspx



DARPA looks to create wireless Skynet with fiber-like, 100Gb bandwidth | Ars Technica
http://arstechnica.com/information-technology/2012/12/darpa-looks-to-create-wireless-skynet-with-fiber-like-100gb-bandwidth/



DARPAによると、光ファイバーは高速インターネットの中核バックボーンを形成しているおかげで、軍事・民間問わず、長距離でも問題なくネットが楽しめたり、電話ができたり、映像やデータの転送が行えたりしています。しかし、光ファイバーが敷設されていない地域になると、ほかのネットワークを使用することになるので、データ転送速度が低下するという結果を招いています。

そこでDARPAは光ファイバーと同じ速度で通信可能、かつ全世界展開可能な「100Gbps無線バックボーン」計画に着手するとのこと。計画は、地上と高度200km超との間で100Gbps通信を達成することを目標としています。このためには、現在用いられている国防省のコモンデータリンク(CDL)標準プロトコルの限界を超える必要があります。

アメリカ軍などでは早期警戒管制機(AWACS)が運用されていますが、集めたデータは膨大なもので、そのまま地上に展開している部隊に送ることはとても不可能です。そのため、たとえば現在運用されているE-3ではタイプによって13名か17名の操作員が搭乗し、部隊に送るデータを最小限にまとめています。しかも、AWACSは非常に高価。前述のE-3の場合、アメリカ軍は1機約90億円、イギリス軍は1機約150億円で調達していますが、できれば安価にしたいところ。

By emperley3

また、戦場に投入されている多数の無人偵察機も膨大なデータを集めていますが、これをできるだけ高品質な状態でAWACSや別の航空機、あるいは司令部へと転送したいという要望もあります。Ars Technicaは、DARPAの目指しているものはターミネーターに出てくる「スカイネット」だと例えています。

計画を進める上で有望だと考えられているのが、今現在、データをたくさん集めるために使用している技術である合成開口レーダーを応用するルートです。

戦闘機などに搭載されているAESAレーダーはレーダー機能とデータリンク機能の2つを兼ね備えています。DARPAでは以前、AESAレーダーにデータモデムを接続することで、空中モバイルアドホックネットワークが生成可能であることを実証済み。このときのネットワーク速度は4.5Gbpsでしたが、DARPAはミリ波(EHF)通信技術を改良することで、速度のジャンプアップを狙っています。

AESAレーダー(フェーズド・アレイ・レーダー)は、平面上に多数の小さなアンテナが取り付けられているので、レーダー自体を首振りさせる必要がないという代物。

By expertinfantry

AESAレーダーを搭載しているF/A-18F スーパーホーネット

By mashleymorgan

ミリ波は一般的に、可視範囲ぐらいの短距離での通信に用いられています。しかし、DARPAは直交振幅変調(QAM)を含む信号調整により、雲を抜けて長距離で使用できるようになり、かつ、高い処理能力を発揮するのではないかと考えています。

DARPAはこの技術を純粋に軍事的な観点から見ていますが、この技術が民生用になったときには、携帯電話事業者や無線通信事業者などには大きな波及効果が出てきそうです。

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in サイエンス, Posted by logc_nt

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