ヱヴァQ冒頭6分38秒の宇宙での「強奪作戦」シーンは宇宙工学立場から見てガチだったことを首都大学東京の宇宙システム研究室が解説したページがスゴイ


11月16日(金)の金曜ロードSHOW!ラストでも公開されていた「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」の冒頭6分38秒のあのとんでもない宇宙空間での強奪作戦シーンについて、首都大学東京システムデザイン学部航空宇宙システム工学コース・宇宙システム研究室がマジで宇宙考証の解説を行っており、あのシーンがかなりガチなものであることが判明、改めて「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q」のすごさがわかるようになっており、「本サイトの内容がみなさまの軌道力学へのご興味の一端に触れることが出来,そして再度エヴァQを見直されましたときにみなさまに新たな発見をご提供することが出来ましたら至極幸いに存じます」という感じの内容になっています。

首都大学東京システムデザイン学部航空宇宙システム工学コース・宇宙システム研究室 ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q_冒頭6分38秒_宇宙考証の解説
http://www.sd.tmu.ac.jp/ssl/discussion_q.html


【HD】エヴァンゲリヲン新劇場版Q 冒頭6分38秒 - YouTube


まずは「用語解説」ということで、あのシーンのバックに流れていたエヴァ独特のバックで流れる各種指示や命令内容などの「?」だったフレーズの意味が分かるようになっています。

例えば以下のような感じです。

・追跡班

ロケットの打上に際しては,ロケットがきちんと予定された経路を飛行し,正常に作動していることを随時確認するためにロケットの追跡が行われます.その追跡には望遠鏡やカメラの望遠レンズによる「光学追跡(光学管制)」と,地上から電波を発射してロケットがそれを受けて返信するトランスポンダ(トラポン)を用いた「テレメータ追跡」,レーダーによる位置と速度の取得を行う「レーダー追跡」などがあります.

又,現在ではまだ研究開発途中ですが,ある物体をカメラで撮影しながら,画像処理技術を用いて撮影されている物体を抽出し,それが画面の中央に位置するようにカメラを追跡させる,と言うことも試みられています.

通常,これら追跡班は地上で作業を行います.又,追跡は人が手動で行うこともあれば,機械が自動的に行うこともあります.特にトラポンでの追跡が一旦確立すれば,その後は自動的にパラボラアンテナやカメラがロケットを追跡することは現在でも行われています.

冒頭シーンでは当初,カメラ撮影を行っている光学管制班が改2号機を画面中央に捉えようと,明らかに手動でカメラの向きを調整しているように見えます.
しかし一旦画面中央に収まった後は非常に安定して撮影されているため,トラポン若しくは画像処理技術による自動追跡に移行したのだと考えることが出来ます.


・アール・シー・エス(RCS):リアクション・コントロール・システム(Reaction Control System)

RCSは,外乱による姿勢の乱れを修正したり,特定の対象に対する通信や観測を行うべく宇宙機に固定されたアンテナやカメラを向けるために宇宙機の姿勢を調整したり,或いは大きなロケットエンジンを噴射する際に生じる飛行経路の乱れを修正したりする場合に用いられます.

その修正は瞬時,若しくは短時間で完了しなければならない場合が多いため,RCSに用いられるスラスタは短時間噴射が可能で,その噴射の立上りや立下りが瞬間的に行える(キレが良い)ように作られています.推進剤としてはヒドラジンが用いられることが多く,一液式推進系の場合,ヒドラジンを触媒で分解したものがスラスタで噴射され,それぞれの運動の源となる推力を発生します.

劇中では,RCSの噴射は青白く見えていましたが,これは光の加減と言うことも踏まえて,一つの候補としてはヒドラジン系の超大型の一液式推進系を搭載していたのではないかと思われます.


・ジェットソン(jettison)

宇宙工学分野では,不要になったロケット下段やブースタなどの「投棄」を表します.「ガスジェットや残存推力を利用する場合に『ジェットソン』と呼ぶ」,などと言う明確な定義はありませんが,読んで字の如く,分離したモノを「投」げ「棄」てるような場合に「ジェットソン」と呼びます.

ヱヴァQでは,ブースタ・ユニットは分離後,主推進系とは別系統の離脱用推進系を作動させることによって本体から離れるようになっており,ブースタ・ユニットを切り離すこと自体は単なる分離(セパレーション)ですが,その後の離脱用推進系の作動によって本体から離れると言う点で,ジェットソンの一種と言えます.

尚,分離後のブースタ・ユニットの動き(本体に対して後上方へ去って行く)は,近接域における軌道運動を記述する「ヒルの方程式」(後述)に従った動きとなっています.


さらにすさまじいのが「軌道力学」の解説。「冒頭部分の,とりわけ当初から1分30秒あたりまでは,軌道力学が忠実に再現されています.製作スタッフの知識とそれを表現する力量には完全に脱帽です」としており、さらに考証の本領発揮なのが「ヒルの方程式(Hill’s equation)」の部分で、「冒頭部分でブースタ・ユニットを分離し,それが噴射を行って本体から離れるマヌーバ(一連の手続き)を行っていますが,その噴射の向きや,噴射中の動きについて,あれ?と思われた方もいらっしゃるかも知れません」として、以下のように解説しています。

以上を踏まえて,エヴァQの場合について見てみます.

第1段ブースタ・ユニットの分離後の動きは下図のようになっていました.
ブースタ・ユニットは分離直後には本体からまっすぐ離れて行きますが,その後,推進系を作動させ,本体と同じ方向に加速する向きに噴射を行っています.するとブースタ・ユニットは軌道高度を上げ,そして軌道速度が低下するため,本体の後上方へと運動の方向を変えながら本体から更に離れて行きます.この噴射は継続的に行われているため,ブースタ・ユニットの後上方への動きはどんどん加速して行きます.

ところで,ブースタ・ユニットは本体から分離されてから暫く後に推進系を作動させました.このタイムラグは,ブースタ・ユニットがある程度本体から離れてから噴射を行わないと,この後上方への動きによってブースタ・ユニットが本体へ衝突する可能性があるためです.そこまで見越して,映画では表現されているんですね.


上記の部分だけでも驚愕なのですが、さらにあの一見するよくわからない動きもちゃんとしていたことが以下の解説で分かります。

この動きについて,もう少し詳しく見てみます.モノがややこしいため,下図では簡略化して二つの箱で描きます.
ブースタ・ユニットは本体からの分離後,本体の進む向きに加速するように噴射しています.これを客観的に見ると下図のようになります.


この両者の動きについて,本体を固定させ,本体に対する相対運動としてブースタ・ユニットの時々刻々の位置を描くと以下のようになります


又,第1段ブースタ・ユニットを分離した後,第2段が噴射を開始したとき,下図のように周囲に散開していた部品などの浮遊物が一斉に後上方へ動き始めます.


そしておそろしいことに、これらの動きを一番最初に出てきた用語解説の「追跡班」視点で見るとこうなるというのをあのシーンは表していることまでも突き止めています。

これは先程までの,ブースタ・ユニットが増速の向きに噴射する場合とは逆で,本体の方が減速の向きに噴射を行うこととなるため,下図のように,浮遊物に対して,本体が前下方へと運動することになります.
映像を見ると本体は常に画面の中央に写っているため,これを撮影するカメラもまた,本体に追随した下図のように動いていることになります.いい仕事をする追跡班です.従って,浮遊物は後上方へと移動しているように見えることになります.


ここまで見て来ただけでも戦慄すべきレベルなのですが、真にすごさを実感できるのは一番「ありえないだろ、このシーンは……」と思っていたあの棺を強奪するシーン。「US作戦の検証」ということで、なんと「劇中のUS作戦について,宇宙工学として成立することを見て行きます」と書かれており、「ブースタ・ユニットの質量と推力」「エヴァと棺の質量」「インパルス近似」などを考察、どのような位置関係にあったかを以下の図で明らかにしています。


これだけにとどまらず、「前項の軌道を元に,アスカが初号機の棺を発見したときの距離を求め,両者の位置関係を求めてみます.劇中では二号機改が棺を発見するのは,噴射から67秒後です.すると,下図のような位置関係になっていることが分かります」ということで、図示化しています。


そして最終的に「以上より,軌道離脱フェーズの映像は実現性に矛盾の無いものであると言うことが出来ます」ということで、さらに映像表現に磨きをかけるならどのような「今後の課題」があるかまでをも浮き彫りにしており、非常に秀逸な内容なので、一読の価値ありです。むしろこれからさらにヱヴァQを2回目・3回目と鑑賞しに行く場合、上記のようなことを頭に入れてから見に行くと、また違った感動が得られるはずです。

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in サイエンス,  動画,  映画,  アニメ, Posted by darkhorse